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    2007

12.15

「カレンダーボーイ」小路幸也

カレンダーボーイカレンダーボーイ
(2007/11)
小路 幸也

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二〇〇六年に四十八歳になった大学教授の三都充(あだ名はイッチ)と、同じ職場で働く事務局長の安斎武史(タケちゃん)は、小学校のクラスメイトで仲良しだった。そんな二人はある日、寝て起きると、そこは一九六八年の小学五年生の世界。そしてまた寝て起きると現在。二人は寝て起きることで、過去と現代を何故か一日ごとにタイムスリップするようになってしまった。

そして、彼らは過去の行動が果たして現在に影響を与えるのかを確かめるために、記憶していた佐藤先生の家が不審火で家事になった事件を、小学五年生の自分たちで防ごうとする。その結果、過去の世界でやったことが現実に反映され、あの世界と、この世界は、地続きの世界だということを知る。

そこで、一九六八年十二月に起こった三億円強奪事件をきっかけに、一家心中て死んでしまった里美ちゃんを救うと共に、犯人に奪われたままのあの三億円をふんだくってやることが、過去の世界で過ごす、彼らの目的になった。

最近の小路さんの作風ではなく、デビュー当時によく用いられた、なぜかわからないが不思議な出来事が起こっちゃいました、という系統の作品だ。今回はそれがタイムスリップという形になっている。眠ると時代を飛んでしまうという設定なので、過去はイッチ、現代は安斎、とストーリーは二人の目線で交互に綴られる。

あの時に里美ちゃんが救えなかったと悔やむ一九六八年のイッチの目線。大学の金を私物化した理事長の悪行を、三億円を手に入れてうやむやにしようとする二〇〇六年の安斎の目線。里美ちゃんを救うことはイッチの理由。三億円を奪うことは安斎の理由。二人の目的に対する比重や、自分の置かれた環境も違うが、救うことと奪うことはセットになっているので、二人は友達だからという枠を超えて繋がってゆく。どちらかと言えば、善の動機を持つイッチと、悪の動機を持つ安斎だが、どちらかに肩入れして読むようなことはなかった。

それにイッチの姉や謎の人物のガンガンといった脇役たちが、すごく魅力的でいい人たちなのだ。彼らが少年時代の二人を無条件に信用して、そして協力していく姿には、人の優しさだけでなく、一九六八年という年代には溢れていただろう過分なお節介を思いだした。他所の子を躾ける大人や叱る大人がいた時代。ちょっと前まで当たり前だったこんな風景が、今じゃ何事にも無関心になってしまった。そんなところにノスタルジーを感じてしまうなんて、自分も年をとったとつくづく思う。何故か昭和に魅力を感じる今日この頃って、オッサンの仲間入りだろうか。

タイムスリップものだから、歴史を変えるということは歪みを生じさせるのは当たり前の出来事。本書もこの決まりごとを継続しており、彼らはさまざまな歪みを体感していく。そこでの安斎の身に起こる歪みは、自業自得だが滑稽でもあった。それらに揺さぶられながらも、彼らは目的だけは絶対に変えてみせようと奮闘する。

そして迎えるラストは淡々とした描写ながらも、何かを得れば何かを失うという切なさがあり、世界を歪めてしまったという結果の潔さもある。だけど、人の命が対象だからと言えども、二人にとっては失ったものが大きすぎると思うのは、自分だけではないと思う。もう少し救いがあって、爽やかな余韻が欲しかった。あくまで個人的な思いだが、ね。


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小路幸也
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comments

雰囲気的には好きな部類の小説だったんですが、かなり物足りなく感じました。
せめて里美ちゃんのその後が書かれていれば、この小説をもう少し好きになったかもしれません。

リベ:2007/12/15(土) 21:38 | URL | [編集]

私としてはこの物語のラストの切なさがよかったです。
無くしてしまったからこそ判る大切なものだったと思うので。それより魅力ある傍役故に語られなかった部分が
多くある所が残念でしたね。
それでもこのラスト故に高く評価したいです。

むつぞー:2007/12/15(土) 22:13 | URL | [編集]

りべさんの感想も読みました。
連載だったからか、一冊としてはまとまりが悪かったと思います。
それにあっけない目標達成はたしかに物足りなかったです。
だけど、最後の切なさはありかなあ、と思いました。

しんちゃん:2007/12/15(土) 23:17 | URL | [編集]

むつぞーさん
同じくラストの切なさは好きでした。
だけど、二人で頑張った結果を忘れてしまうのに、寂しさを感じました。
たぶん、感情移入してるのでしょうね。

しんちゃん:2007/12/15(土) 23:23 | URL | [編集]

いっぱいのTB、ありがとうございました。
お引っ越し、大変でしたでしょう。お疲れ様でした。

ラスト、切なかったですね。ちょっと割り切れない気がしたのは、
小路さんの今までの作風と違って、救いがなかったからかも、です。

藍色:2007/12/16(日) 02:23 | URL | [編集]

藍色さん、たくさんで申し訳なかったです。
そしてありだとう。

最後はめずらしく突き放してましたね。
潔がいいんだけど、もう少し何かが欲しかったです。
切なさは好きだったのですが。

しんちゃん:2007/12/16(日) 18:53 | URL | [編集]

しんちゃん、お久しぶりです。
引越しお疲れさまでした~♪

>なぜかわからないが不思議な出来事が起こっちゃいました
という小路さんの小説、これが初でした!
不思議なことを不思議なままで受け入れて、その上で何をするのかというところが良かったですね。
最後は、切なかったけれど。
他の作品ももっと読んでみようと思います。

エビノート:2007/12/16(日) 19:18 | URL | [編集]

エビノートさん 、お久です。
ねぎらいありがとう(笑)

エビノートさんは、小路さんの不思議系が初めてだったんだ。
終始一貫このスタイルの小路さんが、すごく好きです。
今後機会があれば、初期作品がこういった作品なのでお薦めしちゃいます。

しんちゃん:2007/12/16(日) 23:13 | URL | [編集]

こんにちは。
私は引っ越しもしてないのに(笑)、なぜか忙しくて…。

この本は、なぜタイムスリップするのか理由がわからず読んでいたのですが…。
話としては、なぜか不思議なことが起きちゃいました、という感じなんですね。
それにしても、安斎たち二人が失ったものがあまりに大きくて、えっ?という感じでした。
私も、もう少し救いがあってもいいような気がしました。


mint:2007/12/25(火) 10:37 | URL | [編集]

mintさん
そう、なぜか不思議なことが起きちゃいましたというパターンです。
小路さんの初期作品は、みんなこんな感じでした。
最後はもう少し救いが欲しかったですよね。

しんちゃん:2007/12/25(火) 12:36 | URL | [編集]

長いことかけて「その日」の為にがんばったのに
「その日」の辺りがあっけなかったなって思いました。
で、やっぱりタイムスリップ物は難しいです。
お姉さんの担当編集者さんはそのままなのかしらね???

なな:2008/01/05(土) 21:25 | URL | [編集]

ななさん
「その日」がやたらと呆気なかったですね。
もっと、わくわくがあると期待してました。

マンガの編集者さんでしたよね。たしか。
うーん、ごめん。すっぽり記憶が抜けています。

しんちゃん:2008/01/05(土) 22:26 | URL | [編集]

当日の描写があまりにアレでしたよね。なんであんなふうにしたんだろう……
最後の展開がよめなかったので、読み終わった後しんみりしました。ほんとしんちゃんの言うとおり「失ったものが大きすぎる」と思いました。

まみみ:2008/01/20(日) 18:45 | URL | [編集]

まみみさん
ほんとあまりにアレでしたね。ちーと勿体無い。
それに代償が大きいよね。その分余韻に残りましたが。

しんちゃん:2008/01/20(日) 19:06 | URL | [編集]

おもしろかったんですが、どうにもあっけないというか、物足りない気持が残ってしまいました。
私はラストはもっと悲惨なんじゃないかって思ってしまってたんで、逆にこのほろ苦さにほっとしたりしました。

june:2008/03/09(日) 23:07 | URL | [編集]

juneさん
あっけないというか、あっさりというか。
もう少し書き込んで欲しかったと思いました。
ほうほう。juneさんはラストをもっと悲観していたのか。
おいらは逆にハッピーエンドかと想像していたので…。

しんちゃん:2008/03/10(月) 12:03 | URL | [編集]

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