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    2007

12.25

「秋の牢獄」恒川光太郎

秋の牢獄秋の牢獄
(2007/11)
恒川 光太郎

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「秋の牢獄」「神家没落」「幻は夜に成長する」の三編を収録。

「秋の牢獄」
学食のテーブルで由利江が日曜部に釣りに行った話しをはじめた。話を四分の一ほど聞いたところで、私は口を挟んだ。「ちょっと、それ、もう聞いた」 考えてみれば朝から妙な既視感がずっとあった。私は何故か、同じ十一月十七日の水曜日を繰り返していたのだ。そして同じ毎日を繰り返していたある日、自分と同じように同じ一日を過ごしている隆一と出会い、他にもたくさんの仲間がいたことを知る。

「神家没落」
この道こんなふうだっけ? 少し進むと開けた場所で、月光が一軒の民家を照らしていた。藁葺き屋根で縁側のある、この近辺では妙に場違いな建物だった。するとその民家から、翁の面をつけた男が現れ、「どうぞこちらへ、あなたが来るのを待っていたんですよ」と、ぼくに声をかけてきた。そして気付くと、ぼくは男の身代わりになって、世界の影に佇むこの家に縛りつけられていた。

「幻は夜に成長する」
外出は不可能。運ばれる食事は一日に二度。人に会うときは紫の法衣を着て、欲しいものは紙に書いて世話役に渡す。昼には客が来る。客は私に地獄を語り、私はその地獄を受け取って、我が怪物の餌とする。私を幽閉しているものたちは知らないが、私の心の中の小箱には大切な思い出をしまっている。そしてついに時は来た。幻術の使い手で霊狐のお力を持つリオの物語。

一番好きだったのは、ダントツで「幻は夜に成長する」だった。こういうラストにゾクッとくるホラーは好きだ。大きくわけるとホラーとは、血がドバッとでるスプラッター物(苦手)と、血は出ないが精神的に背筋をゾクゾクさせる物の、二種類に分類されると思う。恒川さんは後者タイプのホラーを描く作家だが、これまで上手いとは思っても、怖いとは感じたことがなかった。それがこの作品ではついにやってくれた。こういうのを期待していただけに嬉しく思う。

ただ、同じ日を繰り返してしまう「秋の牢獄」や、一種の神隠し的な「神家没落」は、読み物としては悪くないが、これをホラーと言えるのかは疑問に思う。表題作では異世界をわりと明るく楽しんで、その後、諦めというかすべてを委ねてしまう。次の作品では緊迫感のない男が流れに任せ、やがて自分なりの正義を示す。ホラーというよりも、幻想的な異世界に紛れ込んでしまった、人間の心の動きがメインに描かれている。

しかし、二作ともホラーっぽくはないが、面白くないわけではない。「秋の牢獄」は、自分なら何をしようか、というワクワクがあったし、「神家没落」は、目に浮かぶような情景描写がすごく素晴らしかった。ホラー作家という先入観がなければ、もっと楽しめたと思う。一作目、二作目も異世界の作品だったので、異世界作家という括りで読むと、一番楽しめるのかも。次回作はそういう心積もりで読んでみたいと思う。

ああ、次の作品で異世界から離れたらどうしょう。でもそれはないか。

TBさせて貰いました。「今日は何読んだ?どうだった??」

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恒川光太郎
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comments

「幻は夜に成長する」は、ゾクッと怖さを感じる作品でしたね。
本当に怖いのは異界ではなくて、人の心だよなぁということを強く意識させられた作品でした。
恒川さんの描く異界には怖さ以上に、そこに行ってみたいと惹き付けられてしまいます。
次はどんなところに連れて行ってくれるのか、楽しみです。

エビノート:2007/12/25(火) 21:33 | URL | [編集]

しんちゃんが「幻は夜に成長する」が一番好きだったって言うの、なんとなくわかるような気がします。
私は「秋の牢獄」かな。

なな:2007/12/25(火) 21:36 | URL | [編集]

こんばんは!
全2作の印象が強過ぎた為か、今回はちょっとノリきれませんでした。それでもやはり恒川さんの描く異界は魅力的ですね。
実はちょっと同じ一日に閉じ込められてみたいと思いました。怖いというより嬉々として読書三昧する姿が浮んで(笑)

ブログのリンクは大歓迎です。
私のほうでもこちらのブログをリンクさせて頂いていいですか?
これからもどうぞよろしくお願いします!

雪芽:2007/12/26(水) 00:22 | URL | [編集]

エビノートさん
ゾクっときましたね~。
「神家没落」は特に人の心の怖さを感じました。
そこに行ってみたいというのは同感です。

しんちゃん:2007/12/26(水) 11:46 | URL | [編集]

ななさん
やり取りしてると、なんとなく好みが見えてきますよね。
「秋の牢獄」はちょっと楽しそうな世界でした。

しんちゃん:2007/12/26(水) 11:48 | URL | [編集]

雪芽さん
デビュー作の「夜市」がキョーレツでしたもんね。
あれを超えるのは、恒川さんにとって大変かも。

今後ともよろしく~!

しんちゃん:2007/12/26(水) 11:52 | URL | [編集]

「幻は夜に成長する」
たぶん、ホラーとして一番お好みと予想してた通りでした。
私はケン・グリムウッドの「リプレイ」が好きなので
「秋の牢獄」でした。

藍色:2007/12/27(木) 04:02 | URL | [編集]

藍色さん
むう、藍色さんにも読まれたか。
でもこの好みって少数派でしょうね。
「秋の牢獄」「神家没落」が人気を二分するだろうな。

しんちゃん:2007/12/27(木) 21:21 | URL | [編集]

しんちゃんの好きな「幻に夜は成長する」は、ちょっと苦手でした。女の子の人生も可哀相だし、拉致みたいに連れ去られちゃって、残された家族は??って、そんなことを考えてしまいました。
私は「神家没落」が好みでした。万が一、自分もふっと迷い込んで屋敷から出られなくなっちゃったら・・・なんて考えるとゾクゾクします。でも、恒川さんの物語って、主人公が迷い込んでる間、周囲からは神隠し的にいなくなってるんですよね。ゾクゾクします。

じゃじゃまま:2007/12/27(木) 21:32 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
そう、「幻に夜は成長する」は不人気なんですよね~。
一番ホラー色が強くて、パワーがあるんだけど。
他の二作も面白かったですが、雰囲気だけのような気がして。

しんちゃん:2007/12/27(木) 22:11 | URL | [編集]

次でいきなり異世界から離れたらびっくりですよ。エーッと声をあげてしまうかもしれません。

たまねぎ:2007/12/31(月) 14:45 | URL | [編集]

たまねぎさん
もう飽きたとか言って、文芸でくるかも。
それはないか(笑)

しんちゃん:2007/12/31(月) 20:58 | URL | [編集]

ホラー苦手ながら、唯一読める作家さんが恒川さんです。でも今回はかなりいっぱいいっぱいでしたけど…
世界つくるのが上手ですよね。デビューされて間もないのにすごいなと思います。

まみみ:2008/01/04(金) 15:39 | URL | [編集]

まみみさん
ホラー度は上がってましたね。
こういうのなら大歓迎です。
この人は短編向きだと益々思いました。36

しんちゃん:2008/01/04(金) 19:34 | URL | [編集]

みなさん好きな作品わかれてますね。
私は「神家没落」が一番怖くて好きでした。
恒川さんの作品が異世界から離れたら・・。
私もすごくびっくりしそうです。

june:2008/03/16(日) 22:13 | URL | [編集]

juneさん
みなさん好みがバラバラですよね。
これらどれもが恒川テイストなのに。
そこがちょいと面白いなと思いました。

しんちゃん:2008/03/17(月) 19:21 | URL | [編集]

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