2008
![]() | フルタイムライフ (2005/04/14) 柴崎 友香 商品詳細を見る |
美術系の大学のデザイン科に入った。だけど、自分にはこういう仕事はできないと思うようになった。だから当然、厳しい就職活動で勝ち抜けるなんてことはなくて、このままだとアルバイト生活かなと思っていた。そんなところに、担当の先生に見せられた求人票の会社が、仕事内容は社内報の編集・デザインと書いてあって、場所も心斎橋だったので、受けてみた。喜多川春子22歳。思いがけず包装機器会社の事務職についた。
軽妙な大阪弁が踊る踊る踊る。はたらく生活をはじめて体験する女の子のゆるやかな毎日、恋を描いた長編小説。新入社員の10ヶ月の物語。
「おもしろいで。会社。おっちゃんばっかりで、ほんまにコピーしたりお茶入れたりするねん。なんか、まだ、そういう役をやってみてるっていう感じ」「セクハラとかあんの」「話では気持ち悪いこと言うてくるおっちゃんのことも聞くけど、わたしの周りは温厚な人ばっかり揃てるんか、まだない。でも、いかにもおっちゃんの社会やなとは思う。うーん、けど、思ったより楽しいで。知らんことばっかりやから」「仕事、慣れた?」「まあまあ。今日は、三時間ひたすらシュレッターしてた」
上に書いたしゃべりだけで、なんかすべてが伝わりそうやな。そやからこの本の感想はパスしよっかな〜。やっぱりあかんかな。なんて大阪弁で書いてまう影響力がこの本にはあるねん。もうちょっとこのまま書こうかと思ったが大阪弁はここまで。
本書はこれまでと同じで、ふつうの日常を淡々と描いただけで、なにも大きなことが起こらない。お局の小言もないし、いがみあう派閥もないし、スケベな上司もいない。そんな派手なイベントはまったくないのだが、巧みな文章にぐいぐいと読ませるパワーがある。
それとこれまでは風景が浮かぶような描写が多かったけど、この本はほとんどが会話中心になっていて、ずーっと春子が3コ先輩の桜井さんや友達の樹里たちと、だらだら話しているだけ。それもべたべたの大阪弁で。よその地域の方はどうかわからないが、この大阪弁の文章が大阪人のじぶんにはすーっと入ってくる。これは大阪人だけの特権だと思う。ええやろ。と自慢してみるのも大阪人っぽいかな。
普通のことにわくわくできて、恋がしたいと思えて、仕事に慣れていく姿が微笑ましくて、こんな会社で働けるっていいなと思えて、きらきら輝くユーモアセンスに笑えて、お仕事小説としても読めて、とにかくすごく波長があって、めちゃめちゃ好きだー、となった作品やった。これまで読んだ柴崎友香の中で一番好きな作品でした。
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