2008
![]() | 誰もわたしを愛さない (創元推理文庫 M ひ 3-8) (2007/09/11) 樋口 有介 商品詳細を見る |
桜の花びらが散りさわぐ春、月間EYESの担当編集者石田から、新担当の美女・小高直海を紹介され、渋谷のホテルで殺害された女子高生についてのルポを依頼された柚木草平は、行きずりの犯行と思われる殺人事件に気乗りがしないものの、原稿料を千円アップという誘惑にあっさり負けて、依頼を受けることにした。被害者の同級生である女子高生の今風に圧倒されつつ調査を進める柚木は、事件が怨恨によって引き起こされた事実に気づく。メガネ美女の新担当、美人エッセイスト、そしておなじみ吉島冴子や娘の加奈子、いつものごとくさまざまな女性に翻弄されながら、事件を追う。柚木シリーズ第六弾。
まず先に書いておくが、想像した犯人は予想通りだった。だけど、そんなこたあどうでも良いと、言い切ってしまえるのが本シリーズなのだ。男性読者が求めているのは、柚木とさまざまな女性とのやり取りであって、ミステリに多くを望んでいない。柚木が背中に冷や汗をかきながら、歯の浮くような会話をしてくれればそれで良い。
その点本書では、前作品群よりも女性とのやり取りがてんこ盛りだった。冒頭から娘の加奈子が登場して、やっぱ加奈子ちゃん最高となり、新たなメガネ美女の小高直海が新キャラとして加わるのだが、柚木の女性に関する噂を聞いたことによって、警戒しつつやり取りする姿も面白い。個人的には、前担当の石田の嫁にまつわるトークも好きだったけど。他にも、なかなか出ないぞと思っていた冴子さんや、価値観の違う女子高校生や、美人エッセイストが登場と、これが面白くないわけがない。
これまで触れることがなかった人物もこの際あげておこう。バー・クロコダイルのおかまマスターの武藤や、定年間近で昇格の点数が欲しい老刑事の山川。彼らサブキャラも、本シリーズの面白さの重要なファクターになっている。これら会話の妙が、また読みたいという欲望のもとになるのだ。
男とはスケベな人種なのだが、本書のある一文が言いえて妙だったので引用しておきます。
ミニスカートの足を眺めて、俺はしみじみ人生を忘れたくなる。背が高くても低くても、その差はせいぜい十センチ程度。細くても太くても黒くても白くてもみんな前進とバックの機能はそなえている。うっかり欲望をそそられる足があり、見ただけで後悔する足があり、体調が心配になる足がある。男が女の足に特別な感心をもつようになったのは、いつのことなのか。チンパンジーのオスがメスの太ももに欲情したという話は聞かないから、どうせ人間に分化して以降のことだろう。
女性の方はお怒りになるだろうが、男の本質を見事についていると思えた。本書で語られているのが、美人さんの定義や胸の大きさでもお尻のかたちでもなく、足というところがポイント高い。これ以上、足フェチについての発言は控えるが、なぜか足に目線がいってしまうのは自分と同じだった。
そういう描写にそうそうと頷き、柚木の女性との寒い会話にくすくす笑い、樋口ワールドを存分に楽しむことができました。これで未読の柚木シリーズはあと一冊。近いうちに読みたいと思ったところで、今日はここまで、おしまい。
柚木シリーズ
「彼女はたぶん魔法を使う」
「初恋よ、さよならのキスをしよう」
「探偵は今夜も憂鬱」
「刺青白書」
「夢の終わりとそのつづき」
「誰もわたしを愛さない」
「不良少女」
「捨て猫という名前の猫」
TBさせてもらいました。「今日何読んだ?どうだった??」
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。




comments