2008
![]() | ハミザベス (集英社文庫) (2005/07/20) 栗田 有起 商品詳細を見る |
「ハミザベス」「豆姉妹」の二編を収録。
「ハミザベス」
はたちの誕生日を前にして、父が死に、不動産とハムスターを一匹もらうことになった。父とは一歳のときに別れていて、母が死んだのだと言っていたので、とっくに死んだのだと思っていた。相続したのはマンションの一室。まちるは、せっかくなので、贈られたマンションへ引っ越すことにした。元恋人であり幼なじみの彰や、父の同居人だった花野あかつきさんとの不思議な友情。ときどき更年期障害の母。観た映画に出てきた登場人物の名前がエリザベスだから、ハムスターの名前をハミザベスと名付けた。地上33階で静かにハムスターと重ねる日常を描いた作品。
「豆姉妹」
姉と私の顔はよく似ている。そして丸い。姉と私は七つ年が離れている。現在私は十六で、体の成長は止まったらしい。姉と並ぶと、そして裸になると、どちらがどちらだかわからなくなった。私たちは体を寄せ合い、くっつき合って暮らしている。まるで、ひとつのさやにおさまる豆のようだ。私たちは、豆ふたつぶの姉妹だった。それがある日、姉は看護師をやめてSM嬢になり、妹は何も考えないままアフロ頭にし、血の繋がらない弟が二人暮らしの部屋に転がりこんできた。日常に変化が起こる?いや、まったく変わらない。ほのぼのした日常を描いた作品。
登場人物たちの会話がユニークで、ポンポンとリズムよく、ほとんどそれらの会話だけで進むストーリーが新しい「ハミザベス」と、そっくりの姉妹の自立とイレギュラーの弟の思春期が瑞々しく、そしてこちらもリズム感抜群の「豆姉妹」の二作品。
どちらも現実から少しずれている。狸の玉々のような玉を持っていたという父や、卵を産むというあかつき。突然おかしな行動を取る姉妹。だけどこれが淡々としていて、どっこも悪くないじゃん、何かおかしなことでもありましたか、というような居直りをまったく感じさせずに、さらりと読ませてしまう。ありえないんだけど、これが面白い。それに人物たちも前へ出ない。主張をいっさいしない。干渉もしない。控えめの美学とでもいうのかしら。そういった部分も、軽いユーモアと混じって読んでいて気持ちが良かった。
ちょいと一風変わった日常の物語だが、こんなのもあり、というか、かなり好きな作風だった。
これからも栗田有起に注目して行きたい。そう思えた一冊でした。
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