2008
![]() | ダックスフントのワープ (文春文庫) (2000/11) 藤原 伊織 商品詳細を見る |
「ダックスフントのワープ」「ネズミ焼きの贈り物」「ノエル」「ユーレイ」の四編を収録。
「ダックスフントのワープ」
自閉的な少女・下路マリの家庭教師をする大学の心理学科に通う僕。彼女の心の病を治すため、《邪悪の意思の地獄の砂漠》にワープしたダックスフントの物語を話し始める。マリは徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていくのだが、口を聞かなかった新しいママが壊れはじめた。
寓話が少女を正しい道に導いていくのだが、この語られる寓話に心が挽かれた。そしてマリ、僕、女教師と、人物たちがすごくドライで、ラストの衝撃度も乾いているのだが、不思議な余韻が残った。
「ネズミ焼きの贈り物」
チャイナドレスの濃い化粧の女の子が、哲学書を万引きして補導員に捕まっていた。その彼女の顔に記憶のあった僕は、千代と声をかけながら男を階段から蹴落として、その場から二人で逃げた。そして千代の兄であり僕の友達だった男の死に様と、ネズミを焼くという奇行を繰り返していたことを聞かされる。
これは…何が言いたいのかよくわからなかった。年をとって普通は成長するのだが、それ以外にも変化はあるということかしら。ちょいと解釈が難しい。
「ノエル」
高校一年生の翔子は、フトしたことがきっかけで、弟ノエルの出生の秘密を知ってしまった。それと同時に、姉弟でかわいがっていたフランス人形が、ノエルの亡き姉の形見だとも知ってしまう。翔子は何も知らない弟と共に、その人形を海へ捨てに行くことにした。
弟に流れる血の汚れというか、信じていたものの裏切りによってわいた怒り。それを弟に告げられないが、その代償としてかわいがっていた人形を憎むようになる。知って何かを行動するのと、知らぬまま行動しなければならないのは、どっちがつらいのだろうか。
「ユーレイ」
叔父の骨董店の店番をする僕の前に、ある日、女性のユーレイが訪ねてきた。この店に届くはずのあるものを待ちたい。だからこれから通わせてもらいたいと。こうして僕とユーレイは親しくなった。そして彼女がなぜユーレイになったのか、そして彼女の目的を知るのだが。
報われることのない切ない恋ですかね。ユーレイになると欲望は後退するとあったが、こんなにもあっさりしたラストだとは思わなかった。
ハードボイルドで有名な藤原伊織氏だが、処女作がこのような文学作品だとは知らなかった。だけど、派手さがない枯れた主人公だけはそのまま同じ。そこにじっと留まること。自分から何かをしようとしない。しかし何かに影響を及ぼしてしまう存在。これが藤原氏の特徴なのだろうか。まだ未読の作品が多くあるので、今後も読んでいきたいと思う。
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