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    2008

03.03

「蒼煌」黒川博行

蒼煌蒼煌
(2004/11)
黒川 博行

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芸術院会員の座をねらう日本画家の室生晃人は、中堅画家の大村祥三を引き連れ、亡き師匠の未亡人であるおかあはんをお供に、京都の老舗画商夏栖堂の殿村を選挙参謀に付け、選挙の投票権を持つ現会員らに対し、露骨な実弾を混ぜた接待攻勢に出る。一方ライバルの稲山健児は、品格があって人望もあるのを武器に選挙戦に身を投じる。会員の座を射止めるのは果たしてどちらか。絵に魅入られ、美の世界に足を踏み入れながら、金と名誉にまみれ、派閥抗争の巣と化した伏魔殿の日本画壇。その暗部を描いた作品。

これまで警察の暗部を書き、北朝鮮問題も取り上げて来た黒川氏だが、かつて美術教師であった過去を持つ。その黒川氏が日本画壇の権力抗争を書くのだから、これが面白くないわけがない。もうドロドロで欲の塊で、共感できる人物が数少ないのだが、これが読ませる読ませる。作品に吸い込まれるように、ページをめくる手が止められないのだ。

七十一歳の室生晃人の容貌は皺ネズミ。挙措、口調など品格に乏しく、絵は非の打ちどころがないのだが、人物に愛嬌がない。それにケチで、上に諂い下を侮るから、人に好かれず、大物のパトロンがいない。そして都合の悪いことは人まかせ。苦労人であるのは確かだがとにかく人望がない。そんな男が手段を選ばず上を目指す。投票権を持つ現会員の個展では高額の絵画を購入し、手土産の中には現金を忍ばせる。ライバルがその会員と会食しようものなら、予約を取り消せと大村に命令する。

その使い走りの大村も、付き合いのある女性に陰口をこぼしながらも、室生が会員になることで甘い汁の見返りを頼んで奔走する。この大村が次々に女性に手をつけて遊んでいるつもりなのだが、実際は振り回されているお馬鹿さんで、この憎めない間抜けさが、ぎすぎすした世界観を緩和するのだ。

そして参謀を引き受けた殿村は、これまで培った人脈、情報、経験などを駆使して、自分の金をいっさい使わずに室生を操り、なんとか芸術院会員の票を集めようと策士ぶりを発揮する。本書の表の主人公は室生だが、裏の主人公はこの殿村かもしれない。この八十を超えたおじいがすごくパワフルで、三国志でいえば諸葛孔明にあたる働きをする。

そんな欲深い悪者にも数多の人間ドラマがあって、駆け引きといった謀略で読者の興味を引き付け、さらに政治家やそこに喰らいつく画商を加え、そこに集る人のさまざまな魂胆、思惑をからめ、黒い作品世界を巧みに構築していく。

そんな魑魅魍魎がうじゃうじゃ漂う人物の中で、稲山の孫娘である画家の卵の梨江が、自分の描きたい絵に真摯に向き合っている。純粋に絵を描くことを楽しみ、コンクールに応募して一喜一憂している。これが生臭くなった人物たちの本来の原点であり、そこに一服の清涼感を与えているのは乙なものである。

さて、結末はいかに、と言いたいところだが、これが中々一筋縄で済まない。さらにさらに意外な展開が待っているのだ。そこが黒川博行らしくて、やってくれるねえ、とおもわずつぶやいてしまう。重厚な作品を読みきったぞ、という、おおいに満足感が得られる作品であった。

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黒川博行
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日本画業界の裏面を鋭く描いた作品:蒼煌


蒼煌作者: 黒川 博行出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/11メディア: 単行本 お金や品物をばら撒いて自分に投票してくれるように依頼し、票読みを行い、当選を目指す。 と言っても、本書は政治がメインテーマではない。日本画家が芸術院会員を目指して芸術院選挙を

2008/04/27(日) 20:30 | 本読みの記録

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