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    2008

03.09

「こうふく みどりの」西加奈子

こうふく みどりのこうふく みどりの
(2008/02/28)
西 加奈子

商品詳細を見る

おばあちゃん、夫(おじいちゃん)はしゅっぽんして失踪中。早起きで、家中の誰よりも体力がある。ちょっと先のことを予知する力を持つ。お母さん、妻子ある男性を愛し、緑を出産。よく寝る。銀行の封筒で手紙を出す。いつもうだうだとタバコを吸い続ける。藍ちゃん、いとこ。出戻りで子持ち。好きになったら、年齢問わず。いつも干しぶどうを食べ、ぶどうの甘い匂いがする。料理が得意。桃ちゃん。4歳なのに、まだおっぱいを吸いにくる。声を発しない。意思表示もまったくしない。カミさんとホトケさん、メス猫。ポックリさん、メス犬。

うちの家には女のお客さんが多い。そのほとんどが、おばあちゃん目当てなんやけど、おばあちゃんがおらんくても、その人らは家に入って、ぐずぐず動かんようになる。お母さんが布団で煙草吸いながら寝てんのとか、桃ちゃんがおしっこ漏らすのんとか、そんなんは気にならへんみたいや。それよりも、時々入れるお母さんのだらしない合いの手とか、ひっきりなしに藍ちゃんが持ってくる異様に美味しい料理とか、カミさんホトケさんの作る仲のいい影とか、ポックリさんが与えてくれるのらくらした密度が勝っていて、皆心から、自分の家みたいに、居心地良さそうにしてる。(本文を引用)

1991年。そんな大阪の下町の女系家庭で育ったのが主人公の辰巳緑、中学二年生。女未満。初恋まであと少し。家族のことや、学校のこと、友達の明日香のこと、気になるコジマケンのことなどが、ネイティブな大阪弁で綴られていく。ズバリ面白かったです。まず始めに、緑の目に飛び込んでくる巷間に溢れた文字の数々。「セールスお断り」「小便禁止」などの注意書きであり、宣伝であり、選挙ポスターであり、標語などである。これら言葉で構築した、独特なリズムを持つ作品世界。この言葉の扱い方や処理の仕方に、きらりと輝く西加奈子さんのセンス良さに気づく。これは新しい試みで、面白いことを考え付いたなと感心してしまう。

そして主人公の緑の心理描写が瑞々しくて、それと同時に、彼女の本音には生っぽさがある。女のだらしなさが溢れたのん気な辰巳一家の日常にまったりとしながらも、友達の恋バナにうんざりとし、自分の女のしっとに気づきどきりとし、ケン(犬)というおかしな名前の男子が気になりキュンとなる。さらに、おばあちゃんの死に怯え、何もしないお母さんを疑問に感じ、亡きシゲおじさんのことを思い、藍ちゃんの分別ない行動に怒り、藍ちゃんしか必要としない桃ちゃんを漠然と見守る緑。そんな浮雲のように流される日々の中で、一瞬にして起こるさまざまな出来事。それらに、緑が何を感じ、どう思うのか。その時々の緑の姿にとても共感してしまうのだ。

そんな緑の物語に加え、平行して描かれたもうひとつの物語あり、その謎の女性たちのひとり語りがやがて交錯してくる。最初は何のことかよくわからないのだが、読み進めていくと徐々に何かが見えてくる。ある女性は刑務所に入っている旦那との話を語り、ある女性は近所のお兄さんへの恋心を語り、ある女性は妊娠したことを手紙に綴る。これら三人の女性とも、女の業を背負っている。それらがすべて語り終えられたとき、辰巳一家のそれぞれに抱える秘密や過去の闇が明らかになる。

はっきり言う。上手い。緑の目線では見えなかった物事を、サスペンスのような手法で、違う側面から肉付けしていく。それらを読むことで、切なさが増し、ちょっぴり幸せな気持ちになり、また元の生活に戻る安心感を味わうことになる。アントニオ猪木の引退の言葉「道」にインスピレーションを受けたという「女の道」を、存分に楽しむことができた。そして、二卵性双生児の片割れ、「こうふく あかの」の出版が待ち遠しいのである。

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西加奈子
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comments

面白そう♪
「こうふく あかの」と一緒にチェックします☆
あとは、文庫の「あおい」を買おう。

まる:2008/04/04(金) 23:51 | URL | [編集]

まるさん
おいら的には「みどり」の方が断然好きでした。
二作ともアントニオ猪木を知ってれば、もっと楽しめると思います。
「あおい」は記憶薄です。ちょっと文学色が強かったかな。

しんちゃん:2008/04/05(土) 12:57 | URL | [編集]

こんばんは。
これよかったですね。
みどりちゃんがとっても好きでした。
みどりちゃんのおうち、気を張らなくてもいい感じがええなあと。居心地良さそう。

アントニオ猪木、あんまり知らなかったのでニュアンス?がよくわかんなかったです。

ちきちき:2008/04/18(金) 21:06 | URL | [編集]

ちきちきさん、こんにちは。
これは西加奈子らしい作品でしたね。
こういうのんびりした家族って、読んでいて安心できます。
おいらも猪木はギリギリ。タイガー世代なので、さやまー!にはウケた。

しんちゃん:2008/04/19(土) 12:04 | URL | [編集]

「セールスお断り」「小便禁止」が西さんらしかったです。
そして所々に挟まれる女の独白。
最初は訳がわからないんだけど
最後まで読むと、あれがなければ…で
うまかったですね。
「あか」が待ち遠しいです。

なな:2008/05/06(火) 15:47 | URL | [編集]

ななさん
こういったユーモアというか思いつきというか、らしかったです。
謎の独白がまた、最後になると上手いこと繋がるんだ。
さすがって感じでしたね。
「あか」も最後はさすがってなものでしたよ。

しんちゃん:2008/05/07(水) 10:29 | URL | [編集]

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