2008
![]() | 医学のたまご (ミステリーYA!) (ミステリーYA!) (2008/01/17) 海堂 尊 商品詳細を見る |
僕は曽根崎薫、14歳。歴史はオタクの域に達してるけど、英語は苦手。愛読書はコミック『ドンドコ』。ちょっと要領のいい、ごくフツーの中学生だ。そんな僕が、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、東城大学の医学部で研究をすることに。でも、中学にも通わなくちゃいけないなんて、そりゃないよ……。医学生としての生活は、冷や汗と緊張の連続だ。なのに、しょっぱなからなにやらすごい発見をしてしまった(らしい)。教授は大興奮。研究室は大騒ぎ。しかし、それがすべての始まりだった……。ひょうひょうとした中学生医学生の奮闘ぶりを描く、コミカルで爽やかな医学ミステリー!《本のカバーより》
桜宮中学に通うカオルは、潜在能力試験で全国1位の成績を取り、東城大学医学部総合解剖学教室での研究に参加することになった。実はその試験問題を作成したのはゲーム理論学者のパパで、問題を作るためにその実験台として協力させられていたからだ。二人のやり取りは、現在パパがアメリカに住んでいるので、メールでの会話で。つまりカオルは試験の中身を事前に隅々まで知っていた、というわけだ。
歴史以外はからっきし苦手なカオルは、ガリ勉の医学オタクの三田村、英語が得意な幼なじみの美智子に助けてもらいながら大学に通うが、元来がお調子者なので、「何事も勝ちすぎるのはよくない。ほどほどが一番」というパパの教えを忘れ、つい調子に乗って知ったかぶりを発揮し、深みにはまっていく。
そんなカオルは研究室で、すぐに浮かれる藤田教授の下、カオルの指導教官を受け持つモグラさんこと桃倉さん、先輩のスーパー高校生医学生の佐々木さんらと、レティノ(目玉の中で勝手に増える憎いガン)について研究する。そんなある日、桃倉さんについて実験をしていると、カオルは大発見らしいことをしてしまう。藤田教授は追試(確認)をしていないのに、その発見を論文にし、功を焦ってなりふり構わず発表してしまった。
その後、その実験がエラーであったことがわかり、身勝手な大人の代表選手の藤田教授は、すべてカオルの独断だと世間に取り繕い、わが身の保身に走ろうとする。そのときカオルは、海の向こうにいるカオルのパパはどうするのか、というお話。
ジャンルでいえばYAだが、これがすごく面白かった。補足情報としては、左開きの本で横書き。つまりは英語の教科書のような作りになっている。それにしてもリンクが多かった。おいらが気づいただけでも、田口教授、高階学長、佐々木さん、如月翔子看護師長、酔っ払いのバッカスと正論のシトロン星人、貝殻の残骸、とめちゃめちゃあった。その中でも佐々木さんの位置づけは格別なものがあった。それに田口が教授に昇進し、翔子が看護師長になっている。そんな未来の設定なので、藤原元看護師長はすでに鬼籍に入っているのかも、なんてね。
そして、さまざまなパパの教えも面白かった。数々あったので、すべてを書き連ねたりはしないが、中にはにやりと笑ってしまうものもある。それにいい格言もある。そんな中で、アクティヴ・フェースやパッシヴ・フェースが出てきたのには、吹き出してしまった。しかもこちらの説明の方が理解しやすい。アクティヴはやられたらやり返せ。この場合相手が本気で反撃してくるから、総力戦になる。パッシヴの極意は明鏡止水。すべての事象をあるがままに受け止めて、可能な限り波風を立てない方法。闘わないことを最上として、ダメージは少ない。ただしこれも相手次第で、相手がものすごく悪質だった場合、無傷ですまない可能性がある。とのこと。
海堂さんは作品の中に詰め込みすぎのきらいがあるのだが、本書はその点、YAらしくすっきりしていた。これぐらいのネタの量で丁度いいと思う。でもミステリは相変わらず下手かな。医学ミステリーと銘打ってはいるが、全然ミステリになっていない。せいぜい佐々木さんの正体ぐらいがおおっとなった程度。だけどエンタメとしては二重丸をあげたい。
赤色や黒色の本を読んでいたら、もっと楽しめたのかもしれない。でも図書館の順番が回ってきたからこれはどうしようもない。それでも大満足な読書ができたから、好し好し。
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