2008年03月23日 (日) | 編集 |
![]() | フラミンゴの家 (2008/01) 伊藤 たかみ 商品詳細を見る |
大阪にほど近いJ市駅の北側は町の顔。一方、駅の南側に位置し、シャッター通りと言われれ、町の下半身と呼ばれるさかえ通り商店街。そこでパチンコ屋とスナックを経営する実家を手伝い、すっかり水商売が板についた片瀬正人。6年前に離婚した妻がガンで入院し、幼い頃に別れたきりの娘・晶を預かることになったのだが…。子どもだけでなく親も大人になる。人の本当の強さとは何かを問う、悲しさの中にも可笑しさがある家族小説。
子供の世話だけはちゃんとするべきだと言う正人に対し、仕事から手が離せないと言う翔子。夫婦はすれ違いの日々が続いて、ついに別れることになった。彼女とはいっさい連絡を取らず、娘の晶と会うこともなかった。それが翔子の入院がきっかけで、娘の晶と一緒に住むことになった正人だが、我が娘とどう向き合えばよいのかわからずに、恐々と接する。それに地元人に戻った正人だが、娘は都会で育ってきた。翔子の病気のことも漏らせない。
一方の娘側、晶はかつてパパっ子だった記憶がまったくなく、自分のことを捨てたと正人のことを思っていて、パパとは呼ばずに片瀬さんと呼んで距離を取る。本人は隠そうとしているが、どこから見ても田舎ヤンキーの匂いがするし、愛車は改造シーマーだし、女の影もちらついている。だけど、母にもしものことがあれば、祖父母のもとか、母の恋人の小早川さんか、ないとは思うが正人に引き取られるかもしれないので、一応人物を見極めようとする。
ちょっと難しい年代の女の子を取り巻く大人たちに魅力があった。キャバレーを出そうとする正人の母、商才のある弟の龍二、幼なじみでパブ経営の高井戸、高井戸の妹であり正人の恋人のあや子、片瀬家の居候兼ボディーガードのたあ坊。中でもおかんのパワーと、あや子のさりげない献身さが印象的だった。
どんどん病状が悪化する翔子のことや、これからのことを考えていかなければならない不安。父娘は押しつぶされそうな現実に襲われながらも、家族経営の商売のこと、さかえ通り商店街夏祭りのことなどの問題も抱えていく。さまざまな困難はあるが、周りにいる怪しげな人々とのひと夏の生活を通して、父娘の関係は、ぶつかりながらも絆を強めていく。
晶がお母さんのことを想う場面は、ぐっと込み上げてくるものはあるが、全体的にユーモアがあって、晶を猫かわいがりせずに、自分で考えさせようとしているのが良かったと思う。それに、片瀬さんと呼んでいたのが、自然にパパと呼んでいることに気づいた時、こちらまで幸せでいっぱいになることができた。大人とは、子供が大きくなっただけで特別な存在ではない。父娘が一緒に成長していく姿に感動した、一冊だった。
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