「吉原暗黒譚」誉田哲也
2008年03月26日 (水) | 編集 |
吉原暗黒譚―狐面慕情 (学研M文庫)吉原暗黒譚―狐面慕情 (学研M文庫)
(2004/04)
誉田 哲也

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不夜城、新吉原。廓の中央を貫く大通り、仲ノ町に連なる引手茶屋。その上下のひさしに果てなく並ぶ提灯の赤は、空の色まで塗り替える。何もかもが外界とは違う街。江戸唯一の公認遊里。男の肉欲と女の欺瞞が渦を巻く、ここは暗黒桃源郷。

吉原大門脇の面番所に詰める今村圭吾は、三十八歳の貧乏同心。食われてたまるかという思いがある今村は、この町に食われるくらいなら、いっそ食う側に回ってやろうと思い、吉原で頻発している貸し花魁殺しを金で解決してやると、女衒の元締め、晴海屋の丑三に話を持ちかけた。お役目とは別に、元花魁のくノ一・彩音、元隠密同心で幼なじみの仙吉とともに、犯人の狐面たちを追い詰めていく。

一方、狐面の盗賊に両親を惨殺された過去をもつ娘おようは、上品さと輝くような美貌を持ち、長屋でひっそりと大工の幸助と愛をはぐくんでいた。しかし、三ヶ月ほど前から、おようの様子がときおりおかしくなり出した。それは彼女の悲惨な過去の出来事に関係があるのだろうか。

キャラの立った裏家業モノの今村サイド、ホラーテイストで切なさのあるおようのサイド。この対極した二つの両輪が平行して展開してゆき、やがて交わってゆく。

悪党になりきれない小悪党の今村は、生まれは忍、育ちは女郎、三人の男を密かに殺して、今は売れっ子の女髪結いの彩音と、しっぽり睦みながら、狐面たちを追う。そこに同心なら誰もが震えあがる剣豪の仙吉が加わってからは、どうもペースを仙吉に握られて面白くない。彩音にも励まされ、その焦る今村の姿が面白く、なんかこいつが憎めないのだ。

一方、馬鹿のつくような善人の幸助は、おようさんにぞっこんラブで、かつて父親から虐待されるも、健気に生きるおようを守ってやりたいと思っていた。そこにおようが狐憑きのような状態にたびたびなり、心配した幸助は、大工仕事を掘り出して、一日中おようを影からそっと見守る。なんてイジらしく切ない愛なんだろう。

誉田氏の作品は好きでよく読んでいるのだが、今回初めてというか、唯一の時代物を読んだ。わるくないと思った。人物の個性もちゃんとあるし、わかりやすい娯楽性もある。犯人探しのドタバタや、今村と彩音の艶っぽい場面もユーモアがあるし、悪党をやっつける痛快さもある。それでいて、切なさもあり、ちょっぴりホラー風味があるものの、一本の柱に沿ったストーリーがしっかりしている。最後のオチはまあ、先が読めてしまう展開なのだが、これはありかな。王道だし。

刑事物のイメージが強い誉田氏だが、これはこれで面白く読めた。あまり世間に知られていない作品だが、誉田ファンなら読んで損はないだろう。

コメント
この記事へのコメント
へー、へー。
そうなんだ!!
これもチェックだわ。でも時代物、ちょっと気後れするかも。
2008/03/27(Thu) 19:57 | URL  | まる #-[ 編集]
まるさん
あまり時代物は意識せずに読めると思います。
ですが、読まなければ損というほどではなかったです。
誉田ファンならという程度の、可もなく不可もなく作品でした。
2008/03/27(Thu) 23:12 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
2004年!?
そんなのがあったんだー☆
探してみよっ♪(* ̄∇ ̄*)

(ただいま、「乳と卵」読み読み中。。。1ヶ月以上、読書ブログ放置してました〜泣)
2008/03/28(Fri) 00:33 | URL  | つたまる #mQop/nM.[ 編集]
つたまるさん
「ダークサイド・エンジェル紅鈴」という本もありますよ。
こちらのノベルスも長らく積んでまーす。
2008/03/28(Fri) 12:42 | URL  | しんちゃん #-[ 編集]
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