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    2008

03.28

「傷春譜」楡井亜木子

傷春譜傷春譜
(1994/08)
楡井 亜木子

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物心がついた頃、正確には母親が死んだ五歳の時から、大人たちが磨理枝について述べる感想はずっと、ひとつだけだった。かわいそうに、磨理枝ちゃんは。私は、かわいそうなのではない。ただ、母親がいないだけなのだ。十一歳の時に父親が再婚した。周りの大人たちは、また口々に言う。かわいそうに。大変ね。私はかわいそうでも大変でもない。ただ、新しい女が母親になるだけなのだ。父親は新しい女を選び、その女も父親を選んだ。これからは、二人が暮らす中に私がいる。継母との仲は、悪くない。周りの大人たちは嘆くけれど、私は本当に、自分のことをかわいそうだとは思っていない。ただ、どうしようもないと思っていただけだ。

継母と暮らすようになって五年。都立高校に通いだした園田磨理枝は、クラスメイトの斎藤夕凪と仲良くなった。父さんも、若い男と暮らしてる母さんも、幸せなクラスメイトも、すべて憎い。だから、何もかもどうでもいい、という夕凪と、何もかもどうしようもない、という磨理枝。そんなとてもよく似ている二人、まったく違ってもいる二人の、傷つきやすい青春を描いた作品。若さゆえの痛さがあって、不器用だが、それが大胆さにもなる少女たちの恋。あるいは親子関係。表題作である「傷春譜」では磨理枝という少女を描き、「あたたかい鎖」では夕凪という少女を描いている。

磨理枝は小学生の頃から、父親が再婚するまで、一人で家のことをすべてやってきた。それゆえに、年齢よりも老成した感覚を持つ少女に成長し、継母との生活も上手くいっているが、無意識のうちに気遣いをして過ごしてきた。そんな彼女が、夕凪からある劇団のチケットをもらったことから、三十四歳の劇団員に一目惚れし、京都に帰った男を追いかけてまで、会いにいく。大人なら理性が働くことで歯止めをかけてしまう。また子供ならそんな行動力はない。大人でもなく子供でもない、どちらにも属さない不安定な年頃。そんな彼女だからこそ、無鉄砲さを発揮することが出来るし、間違いも起こす。タイトルの「傷春譜(しょうしゅんふ)」とは、まだ人生の春しか知らない少女が傷を負うことだと、自分なりに解釈してみた。このタイトルにも楡井さんのセンスが光っていると思った。


もう一人の主人公の夕凪は、母親を愛していると思ったことがないし、彼女から愛情を感じたこともなかった。だけど、彼女は母親のくせに若い男と一緒になることを選び、家を出て行った。そんな夕凪は、子供であることを嫌悪し、大人であることを武器にする。男を自分のものにしたければ、その男の時間をお金で買うし、何事も理詰めで物事を考える。そんな夕凪だから、母親を奪っていった男と会い、大人の幼稚な自分勝手を追及するが、血のざわめきのような震えを感じてしまう。そんな心の痛さを打ち消そうとして、男に頼ろうとするが、その男は定職を持たず、何人もの女を相手に遊んでいるだけのバカ男で、正体のわからない痛みをさらに、夕凪に与えるだけでしかなかった。精一杯背伸びをして、物事に理由を求めるがゆえに苦しむ。その苦悩する姿、やり場のない苛つく姿が、「あたたかい鎖」というタイトルとは結びつかないが、それは夕凪がまだ、あたたかさに気付いていないからかもしれない。

未熟な少女たちの心の叫びが響き、圧倒するような凄みを感じた、一冊だった。

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