--

--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

スポンサー広告
トラックバック(-)  コメント(-) 

    2008

03.29

「重力ピエロ」伊坂幸太郎

重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ (新潮文庫)
(2006/06)
伊坂 幸太郎

商品詳細を見る

兄は泉水。二つ下の弟は春。春と私(泉水)とは、半分しか血が繋がっていない。母は同じだが、私が一歳の頃、母は、突然部屋に押し入ってきた強姦魔に襲われた。その時に妊娠したのが、春だ。それゆえに春は、性的なるものに、嫌悪を抱いているが、その性的なるものが存在しなければ、春はこの世に生まれてこなかった。その母もすでに逝き、父親は癌で入院中。泉水は遺伝子情報を扱う企業に勤め、春はグラフィティアートを消す、つまりスプレーによる落書き消し専門の業者をしている。

二人の住む町で最近話題になっている連続放火事件だが、自分の会社が放火されたことよりも、別のことに私は驚いていた。昨晩、マンションの留守番電話に、春からの伝言が入っていたのだ。兄貴の会社が放火に遭うかもしれない。気をつけたほうがいいと。春は放火の起きるルールを発見していた。連続放火の現場近くには、グラフィティアートが必ずあるということ。そして描かれた英語の文字列を繋げると、謎の文章か暗号になることを。放火事件とグラフィティアートの謎も、兄貴なら解ける、その言葉に、入院中の父も加わり、兄は真相に近づいていく。

ミステリだと思っていたが、どうやら違ったみたい。形だけを見れば、叙述ミステリなのだが、純文学か、家族小説か、アンチ社会小説か、ジャンルで表現するのは難しい作品。そんな中でも、家族の絆が一番テーマになっていたと思う。大人になってもやんちゃな兄弟と、優しく見守るお茶目な父の現代のストーリー。それと、まだ母が生きていた頃を懐かしんで回想した温かなエピソードのサイドストーリー。弟は最強の兄弟だと言い、父は最強の家族だと言う。こう言い切れる彼らが、とても眩しかったし、素敵だと思えた。

伊坂の社会論みたいなものは個人的に好きだ。暴論も数多くあるのだが、言いたいことはよくわかる。二つほど特に印象に残ったので、ここに書いておく。「悪巧みを図る者はいくらでも抜け道を探す。彼らは面倒くさいことを嫌がらない。割を食うのは無害で無知な一般人だけだ」 本当にその通りだと思う。それともう一つ。「覚悟の意味も知らない政治家が胸を張り、どうでも良いゴシップばかりを報道するテレビが正義を盾にする」 政治家は言いえて妙だと思ったし、今の横並びしたテレビの一方的な攻撃にはうんざりしている者にとっては、よく言ってくれた、と共感しまくった。たぶん、ほとんどの方はスルーした言葉だろうが。

ただ、個人的に感じたことだけど、本書に限って言えば、過去の偉人の発言、DNA、クロマニョン人などの薀蓄は、助長すぎたかと思った。興味のないことを長々と読まされるのは結構しんどい。ここが欠点と言えば欠点かな。しかし、家族の物語としては、素晴らしかった思う。いい家族だ。いい親父だ。


作品間のリンク
「ラッシュライフ」:黒澤、伊藤、高橋
「アヒルと鴨」:春、田村蕎麦主人
「フィッシュ」:泉水、黒澤

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

伊坂幸太郎
トラックバック(6)  コメント(8) 

Next |  Back

comments

家族の繋がりにジーンときてしまいましたね。
伊坂さんの描く兄弟が好きです。
自分が女ばっかりの姉妹なんで、男の兄弟に憧れるのかも。

エビノート:2008/03/29(土) 22:08 | URL | [編集]

クールで軽やかな印象なのに、家族の絆がストレートに描かれてるし、実は伊坂社会論(なるほどのネーミングです)もしっかり語られてるんですよね。私は伊坂社会論好きですよ。

今「ゴールデンスランバー」を読んでるんで、この本のことを思い出してこうして語れるのは、私にとってなんだかすごくタイムリーでうれしいです。

june:2008/03/30(日) 00:55 | URL | [編集]

しんちゃん☆おはようございます
「伊坂社会論」って言葉、わたしにも使わせてください。
この思いが、「魔王」や「ゴールデンスランバー」へつながっていくのですね。
訳の分からない世の中で、最後の心のよりどころは家族だと言い切れるこの家族は、本当に素晴らしいです!

Roko:2008/03/30(日) 10:24 | URL | [編集]

エビノートさん
家族の繋がりはくるよね。この親父がすごく素敵でした。
それと冒頭で落ち、ラストで落ちてくる兄弟の関係が良かったです。
うちも妹なので、男の兄弟は憧れます。あー、兄ちゃんが欲しかった。

しんちゃん:2008/03/30(日) 22:31 | URL | [編集]

juneさん
あら、ネーミングを褒められちゃった。いいですよね、社会論。
新刊の「ゴールデンスランバー」でも引き継がれてましたね。
乱暴なところもあるけど、うんうんと頷くことが多々あります。

しんちゃん:2008/03/30(日) 22:37 | URL | [編集]

Rokoさん、こんばんは。
どうぞ、どうぞ。ご自由に使ってくださいませ。
この作品が「魔王」「ゴールデンスランバー」の原点でしたね。
この家族の素晴らしさに感動しました。ほんと、いい家族だ。

しんちゃん:2008/03/30(日) 22:41 | URL | [編集]

色付きの文字
しんちゃん♪こんばんにゃ~。
『重力ピエロ』を読んで、伊坂さんにはまりました。
グラフティアートと放火。。それであんなかっこ良い
物語りを作れる作家さんがいるんだ!!と衝撃をうけました。
『ゴールデンスランバー』図書館に予約しなきゃo(^-^)o

美緒☆:2008/03/31(月) 01:09 | URL | [編集]

美緒☆さん、こんばんは。
ちょっと毛色の違った作品でしたね。
でも人物の魅力は伊坂らしいと思いました。
「ゴールデン」の予約数は凄そうですね。

しんちゃん:2008/03/31(月) 19:20 | URL | [編集]

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可
trackback
この記事のトラックバックURL

「重力ピエロ」 伊坂幸太郎


お薦め度:☆☆☆☆ / 2006年11月15日読了

2008/03/29(土) 20:38 | 仙丈亭日乘

重力ピエロ 〔伊坂幸太郎〕


重力ピエロ ≪内容≫ 連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート。 無意味な言葉の羅列に見える落書きは、一体何を意味するのか? キーワードは、放火と落書きと遺伝子のルール。 とある兄弟の物語。 (BOOKデータベースより)

2008/03/29(土) 22:02 | まったり読書日記

重力ピエロ


重力ピエロ 連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート、遺伝子のルール、ミステリーなのでしょうが、同時に家族の物語でもあり、兄弟の青春小説でもありました。というより純粋なミステリーとしてとらえるとちょっと弱いかも。 この小説は、ミステリーとい...

2008/03/30(日) 00:55 | 本のある生活

◎◎「重力ピエロ」 伊坂幸太郎


いやはや、伊坂幸太郎。才能溢れる人だ。楽しく読める作品だ。本当にこの人って頭いいぞ。頭いいのが文章読んでいてわかるくらいだもの。 ところで、評者の家の近くに、公民館がある。ここは鹿児島市立図書館の分所も兼ねていて、評者もちょくちょく覗いている。借り手...

2008/03/30(日) 07:08 | 「本のことども」by聖月

伊坂幸太郎のことども


  ◎ 『オーデュボンの祈り』 ◎◎ 『ラッシュライフ』 ◎◎ 『重力ピエロ』   ◎ 『陽気なギャングが地球を回す』   ○ 『アヒルと鴨のコインロッカー』   ○ 『チルドレン』 ◎◎ 『グラスホッパー』   ○ 『死神の精度』 ◎◎ 『魔王』 ◎◎ 

2008/03/30(日) 07:09 | 「本のことども」by聖月

重力ピエロ


 「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」 ワトソンとクリックの二人が、遺伝をつかさどるDNAの二重らせん構造を発見したのは、1953年のことである。遺伝は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という僅か4種類の塩基...

2008/03/30(日) 18:33 | 読書と時折の旅 (風と雲の郷本館)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。