2008年03月31日 (月) | 編集 |
![]() | 無痛 (2006/04) 久坂部 羊 商品詳細を見る |
神戸市内の閑静な住宅地で、これ以上ありえないほど凄惨な一家四人残虐殺害事件が起こった。凶器のハンマー他、Sサイズの帽子、LLサイズの靴痕跡など多くの遺留品があるにもかかわらず、捜査本部は具体的な犯人像を絞り込むことができなかった。そして八カ月後、精神障害児童施設に収容されている十四歳の少女が、あの事件の犯人は自分だと告白した、が……。
見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、「痛み」の感覚をまったく持たない男、別れた妻を執拗に追い回すストーカー、殺人容疑のまま施設を脱走した十四歳少女、そして刑事たちに立ちはだかる刑法39条―。人を殺せば殺すほど、罪に問われぬ人がいる。罪なき罰と、罰なき罪。いちばん悪いのは誰だ?《本の帯より》
書店で海堂尊の医療シリーズと並べられて平積みされていた。これはすごく気になってしまうのはわかってもらえるだろう。思わず手にとってレジに直行、ではなく、その足で図書館へ行き、運よく棚にあったのを借りた。おいおい…買えよ。
まずは内容紹介の補足と人物紹介をしておきます。
為頼英介、四十七歳。妻とは死別。東灘区の古アパートで診療所を営む開業医。患者の外見の兆候から病気が診断できるが、治らない病気が見えるなら、見えないほうがいいという。犯人の兆候も読み取れる。
高島菜見子、二十七歳。三歳の息子の裕輔と二人暮らし。精神障害児童施設で臨床心理士をしている。サトミの症状を見て欲しいと、為頼に相談を持ちかける。別れた夫の執拗なストーカー行為に悩まされている。
南サトミ、十四歳。菜見子の患者で、強迫神経症や自閉症の症状もある境界型人格障害の中学二年生。会話は菜見子とのメールでしかしない。教師一家惨殺事件の自白をするが、刑事の訪問を知って施設を脱走。
白神陽児、三十六歳。医師会に属さない関西有数の私立病院長。新しい発想で現在の医療に風穴を開けようとしている。彼もまた症状が見えてしまう医師だが、治る患者を見分けて病院の治療成績を上げようとしている。
イバラこと伊原忠輝、二十三歳。白神が特別に手をかけて治療している患者であり、手術エリアの機材係。嗅覚が鋭いのと、先天性無痛症なので痛みをまったく感じない。助けてくれた白神を崇拝して、実験台にもなっている。
佐田要造、三十四歳。うぬぼれが強くて自分に甘く、小心さと図々しさが入り混じった自分勝手な男。半年で離婚された菜見子を逆恨みして、執拗なストーカー行為を続けている。
早瀬順一郎、三十二歳。灘署に所属する刑事。一家殺害事件の犯人を追う。刑法三十九条を悪用して、刑を逃れる犯罪者が赦せない。刑法三十九条に理不尽な思いを募らせている。その刑法三十九条とは、心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を軽減する。というもの。
冒頭で提示されるおぞましい殺人事件の犯人は誰か、という謎解きは、いつのまにか作品の中心から離れてしまっている。たぶん、為頼と菜見子が絡むストーリーが主流なのだろう。それらと平行して、白神や佐田やイバラたち、コンプレックスを抱える人物のストーリーが展開していく。その彼ら各々のストーリーに盛り上がりが欠けていて、長々と読まされるのは少し飽きがくる。この著者は構成力に難がある。その不味さが、本の分厚さにも繋がっているのだろう。それゆえに、患者の外見の兆候から病気が診断できる、という魅力ある設定が生かされていなかったのが残念だった。
医療のこと、人格障害のこと、刑法三十九条のことなど、たくさんの問題提起はあるが、答えは読者に委ねられている。難しい問題ではあるが、提起するならば、同調するしないは別として、一応の答えを出して欲しかった。
終盤に来て、ジェットコースター並みの加速度であらゆることが繋がっていく。忘れられた冒頭の事件や、ストーカーや、精神の異常やら、これまでバラバラだったストーリーが結びついていくのだ。かなりご都合主義が見えるが、そこは面白く読めた。ただ、そこまで持ってくるまでの、読ませる力が足りないのかなと思った。やはり、この人に必要なのは、構成力でしょ。ミステリとしても破綻しているし。
この記事へのコメント
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2008/04/01(Tue) 06:12 | | #[ 編集]
こんにちは。
医学ものでも海堂さんとは全然違う作風ですよね。
終わりのほうは、ひぇ〜っ!って思いながら読んだ記憶があります。
インパクトがありすぎたおかげで(?)、久坂部さんはこの本しか読んでいないのですが。(笑)
医学ものでも海堂さんとは全然違う作風ですよね。
終わりのほうは、ひぇ〜っ!って思いながら読んだ記憶があります。
インパクトがありすぎたおかげで(?)、久坂部さんはこの本しか読んでいないのですが。(笑)
mintさん、こんばんは。
まったく別物でしたね。一緒でも困るけど。
読みやすいのですが、盛り上がる部分がない。
それでく長ーーいので途中でだれてしまいました。
もういいかな^^;
まったく別物でしたね。一緒でも困るけど。
読みやすいのですが、盛り上がる部分がない。
それでく長ーーいので途中でだれてしまいました。
もういいかな^^;
冒頭で、アーケード歩いてる時に、主人公が危険な兆候を見抜くところ、こんな人がそばにいてくれたら安心だな〜って思ってました。(笑)
一家惨殺は、貫井徳郎氏の「愚行録」と比べちゃいます。一家惨殺ってのは嫌なもんですね。
一家惨殺は、貫井徳郎氏の「愚行録」と比べちゃいます。一家惨殺ってのは嫌なもんですね。
じゃじゃままさん
冒頭のあの場面はカッコよかったですよね。
期待値があがったのですが、その後は生かされておらず。
肩透かしを食らっちゃいました。
冒頭のあの場面はカッコよかったですよね。
期待値があがったのですが、その後は生かされておらず。
肩透かしを食らっちゃいました。
見るだけで病気がわかるなんて、すごく魅力的な設定だと思いましたが、問題提起が多く、読み応えがありすぎてまとまってない感じですね。
花さん
これは明らかに詰め込みすぎですよね。
もっとキャラの特性を生かして欲しかったです。
これは明らかに詰め込みすぎですよね。
もっとキャラの特性を生かして欲しかったです。
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2008/04/02(Wed) 17:19:57 | じゃじゃままブックレビュー
無痛
久坂部羊 幻冬舎 2006年4月
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2008/07/07(Mon) 22:11:59 | 本読みの記録
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