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    2008

04.02

「ブルースノウ・ワルツ」豊島ミホ

ブルースノウ・ワルツブルースノウ・ワルツ
(2004/05/13)
豊島 ミホ

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「怪しすぎるよ。こんなところに弟がいるなんて嘘じゃないの?」 父と少女は、教会の地下にある、苔むした石畳の廊下を歩んでいく。その長い廊下の突き当たり、鉄のドアの向こうに、弟がいた。弟は野で生きてきた子で、半年前に、田舎の山奥で発見され、都に連れてこられた野生児だった。

主人公の楓はちょっとしたお嬢様で、学校へは行かず、専門に教育係がついている。父親は名前を至といい、研究者の類らしく、よく楓を図書館や学会に連れ出した。母親である麻亜子の仕事は、近所のご婦人たちとお茶をすることである。家事は二人のメイドの仕事だし、楓のしつけは主に教育係のキュウさんの仕事だった。麻亜子とキュウさんによって家に閉じ込められ、時々至に伴われて外出する。それが楓の生活の九割だった。残りの一割は、婚約者の藤くんとお茶をすることであった。婚約者といったって、楓はまだ十三歳であり、その上相手は十一歳でしかない。楓は結局、不自由な暮らしにも、日々の退屈にも慣れていた。弟ができるまで、全てのことは単調で、たぶん順調だった。しかし…。

これまでの作風とは違い、豊島風ラノベといった作品。読み始めはおおっと驚いた世界観だが、最近は桜庭一樹を初めとするラノベ作家を読んでいるので、知らぬに間に免疫力がついていたようだ。というわけで、不思議な世界観もまったく問題なし。ラノベに慣れていれば、たぶん大丈夫だと思う。

野生児の弟は、人間社会で生きていくための知識、言葉を発するということを、父の研究という目的で覚えさせられようとする。遅々と目に見える進展はないが、やがて少しずつ人間らしさを見せるようになっていく。そんな姿に楓は、いつしか本当の弟だと思うようになり、覚束ないながらもお互いに感情が伝わるようになっていく。楓はそんな弟と接することで、大人になるということを考え、目前にいる大人、母を自分の将来に置き換えて、母のような退屈な人になることに怯える。

自分の楽しみがある大人、明るくて楽しい未来がある大人なら良い。だけど、楓の未来には、母のようなつまらない上辺だけの付き合いと、夫になる人物の人形として生きることだけ。そんな大人なら、子供のままでいつまでもいたい、という思いが、やがて爆発してしまう。世界観は特異だけど、少女の葛藤や、悩みや、決意は、現代に通じるものがあると思った。誰でもつまらない大人にはなりたくない。だけど、いつの間にか、つまらない大人になっている。そんな理想と現実との違いに、過ぎ去った過去を思い出した。

同時収録の「グラジオラス」は、とにかく切なかった。簡単な内容紹介だけしておこう。

まに子は今晩も外へ出かけていく。まに子はぐんぐんあぜ道を踏み入っていく。ただ一心に田んぼの真ん中を目指して進んでいく。田んぼの境界線をたどり、真ん中にある頭を赤く塗った杭のところにたどり着くと、まに子は空を見上げ、きりお、と呼びかける。毎年五月の日曜日に田植えをしていたきりお。そのきりおを、毎年部屋のガラス越しにこっそに見ていたまに子。偶然出会ったときは、ちらりと横目に見るのがせいぜいだったきりお。幼なじみで片思いだったきりおが死んだ。私もいつか、きりおを忘れる?

想い人の喪失と、新たな恋の葛藤と、思い出の人にしてしまう心の痛み。少女の心の揺れが、すごく切ないのである。

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豊島ミホ
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