2008
![]() | ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス) (2008/02) 紺野 キリフキ 商品詳細を見る |
町のはずれに図書館がある。名前はない。看板にはただ図書館と書かれている。そこが筑津区だから?ツクツク図書館″と呼ぶ者もいる。本を読むこと。それがツクツク図書館員の仕事だった。この図書館のつくりはふつうと違う。広いうえに入り組んでいる。とにかくさまざまな部屋がある。ドアを開ければ開けるだけ、新しい部屋が現れる。そしてそれぞれの部屋がそれぞれに本を抱えている。たとえば「おもらしの短編小説の部屋」「夜の押入れの部屋」などと。でもどんなに本があっても、おもしろい本だけは一冊もない。つまらない本しかない、だめな図書館なのだ。
だめな図書館なら職員もへんてこぞろい。弱気な館長、つまらない本を運んでくる運び屋、外国語の本だけを読む語学屋、読んだ本を正しい部屋に戻してくれる超遠視の戻し屋ちゃん。その図書館は一人の着膨れた女を雇った。女は働かないで、わがまま放題。その女によって、静かな図書館がちょっとにぎやかになっていく。ちょっとシュールで笑えるエンターテインメント小説。
とにかく静かで不思議な物語。そしてシュール。性格の悪い着膨れた女には同居人がいる。?ニャア″と鳴かずに?ふぎ″と鳴く猫。このギィという名前の猫は、本を読む。人間が寝静まった夜にである。ちょこん、と行儀よくお座りした後、ページに目を落とす。猫は夜目がきくので部屋は暗いが問題ない。一文字も逃さずに丹念に文字を追う。やがてそのページを読み終わり、いったん顔をあげる。猫は前足をぺろぺろとなめる。そして本に向かって、ぺたん、と下ろす。それから足をそっと持ち上げる。紙も一緒になって上がってくる。ある高さまで来たら、勢いよく横にふる。するとページはぺらりとめくれ、新たなページが登場するのである。一回でめくれたときは、とてもうれしいらしい。そして?今日はここまで読みました″とページの隅に足跡をちょこんとつけて、猫専用のしおりにする。これら一連の描写は、猫好きにはたまらないだろう。
この猫にはある夢があって、女のはちゃめちゃぶりや、不思議な図書館のあれこれなどを読ませながらも、結局はこの猫のための物語なのかも、と思わせるシュールなラストにおもわずニヤリ笑い。これっていったい何ナノ、という疑問を持つことはタブーで、最初から最後までへんてこで、まったりしていて、ゆるく脱力していて、そして、とてもかわいらしい作品だった。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。




comments