2008
![]() | 犬はどこだ (創元推理文庫 M よ 1-4) (2008/02) 米澤 穂信 商品詳細を見る |
体調不良により銀行を中途退社した紺屋長一郎は、地元に帰って何か自営業を始めようとした。最初にお好み焼き屋を思い浮かべたが、いろいろ支障があって叶わなかった。そこで探偵事務所を開いた。寂れた商店街の、四階建ての古い雑居ビル。一階にコンビニが入っているおかげで見てくれはそう悪くないが、壁面には微かに、ヒビさえ入っている。その二階が、長一郎の借りたスペースだった。この事務所?紺屋S&R″が想定している事業内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。
開業したばかりのその事務所に、長一郎の友人から紹介を受けて、一人目の依頼者がやって来た。東京のコンピュータ会社をいつの間にか退職して、その後の行方がわからなくなってしまった孫娘を捜して欲しい。長一郎はその失踪人捜索の依頼を受諾した。その翌日、高校剣道部の後輩であるハンペーこと半田平吉が、ハードボイルド探偵になりたいと?紺屋S&R″を訪ねてきた。その最中に、またもや友人の紹介で依頼者がやって来た。古文書の由来を調査して欲しいと。新たな依頼を受け、それと同時に、所員を一人、増やすことになった。
失踪人捜索の調査は私こと紺屋長一郎、古文書の由来調査は俺ことハンペー。二つの事件を二人の探偵が調査していくと、なぜか微妙にクロスしてゆく。これが予想以上におもしろかった。でもまどろっこしさもあった。二人は毎日顔を合わせているのだが、肝心な部分を報告しあわない。ハンペーは古文書調査の合間に、失踪人である佐久良桐子の名前が出てくるのにまったく気づかない。これがじれったいのだ。逆に長一郎も、自分が調べていく中での疑問をハンペーに一言漏らせば、繋がっていることがわかったのに。でも、そこがこの作品の面白さだったりするのだけど。
二人の調査自体は地味なものだが、そこに民族学がからんできたり、チャット仲間であるGENを名乗る人物に相談したり、喫茶店をしている実はやんちゃな妹をこき使ったり、正体不明の人物が現れたりと、狭い田舎を舞台にしながらも外との繋がりを広げることで、こじんまりとした閉塞感を感じさせずに読ませるのは、さすがに上手いと思った。
そして、佐久良桐子という人物の全貌が明らかになるラストでは、それまであったイメージをひょいっと瞬く間に変えてしまう。これぞミステリの醍醐味だろう。ときにユーモアがあり、謎に近づいていくわくわく感があり、ミステリとしての驚きもあり、サスペンスのようなざわざわとした雰囲気も楽しめる。これは面白かった。田舎に今風を持ち込んだのが、この作品のキーポイントだったように思えた。これまで読んだ中で、一番のお気に入り作品かも。
TBさせてもらいました。「今日何読んだ?どうだった??」
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。




comments