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    2008

04.24

「ボクシング・デイ」樫崎茜

ボクシング・デイボクシング・デイ
(2007/12/13)
樫崎 茜

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小学生だったあの頃、夏目栞は「ち」と「き」を区別していうことが出来なかった。舌をどこにつければ「ち」になって、どうすれば「き」になるのかわからなかったからだ。そのため、決まった曜日の決まった時間になると、四年二組の教室を抜け出して、少し離れたところにある特別教室へ通っていたのだ。その特別教室で行われていた授業は、「ことばの教室」と呼ばれていた。

「ちくわ」「巾着」「きつね」「キツツキ」……。周囲が話している言葉はちゃんと聞き取れるが、口をどう動かせば発音できるのかわからない。「ことばの教室」では、舌の動かし方や、発音の練習を繰り返していた。そして、それにつき添ってくれていたのが佐山先生という名の、定年を目前に控えたおじいちゃん先生だった。

佐山先生は生徒といっしょになって楽しむことができる、数少ない教師だった。きっと、それが人柄ににじみ出ていたのだろう、緑丘小学校に通っている誰もが佐山先生のことを知っていた。そして、誰もが先生のことを慕っていた。教室を抜けて「ことばの教室」に通っているからという理由で栞がいじめに遭わなかったのは、もしかしたら、そんな佐山先生の威力が強かったのかもしれない。

伐採の決まったセコイアとの日々のふれあい。友達が校庭で見つけた隕石。車椅子と交換するために集められたたくさんのプルタブ。みんなの気持ちがひとつになった署名運動。タイトルになっている「ボクシング・デイ」とは、一日遅れでクリスマスプレゼントを開ける日のこと。すべての人にプレゼントをもらう機会があって、プレゼントを開ける権利がある。千晶くん敦志くん恵美ちゃんゆきちゃん、そして、佐山先生と過ごす毎日が、プレゼント開ける連続だったと、栞が回想する物語。

今日は昨日のくりかえし。平凡な毎日を過ごすことがなにより。このような言葉が作中にあったが、ここには穏やかで、ゆたかな思いやりに満ちた、あたたかい空間がある。児童書にありがちないじめはなく、両親の無理な押しつけもなく、学級崩壊もない。ただあるのは、特定の発音ができないということ。

でもそれは卑下するようなことではなく、たいしたことではないと説いている。かけっこが得意な子とそうじゃない子がいるように、しゃべるのが速い子もいれば、遅い子もいる。手先が器用、不器用があるみたいに、口の中にだってそれが同じことがいえるはず。舌足らずなしゃべり方を嫌だと思うなら、しゃべり方の練習をすればいい。

単純でいいことをいっているように思えるが、実際にはそう上手くはいかないと思う。子供特有な無邪気なからかいが深い傷になるし、そのことがきっかけで、逃れられない無限ループに嵌まっていきもする。本書のような絵空事は奇跡としかいいようがない。でも、だからこそ、こういうきれいな物語があってもいいのではないか。そう思えた一冊だった。

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