「弥勒の掌」我孫子武丸
2008年05月13日 (火) | 編集 |
弥勒の掌 (文春文庫 あ 46-1)弥勒の掌 (文春文庫 あ 46-1)
(2008/03/07)
我孫子 武丸

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冴えない高校教師の辻恭一が、ある日、家に帰るとそこに妻のひとみの姿がなかった。妻名義の預金通帳と共に。自分の犯した浮気が原因で、夫婦関係は冷戦状態が続いていた。妻の家出。これが自分の犯した愚かな行為に対しての正当な罰なのか。

その後数日、恭一は普段と変わりなく過ごした。離婚届が送られてくれば、黙って判子を押すつもりでいたし、慰謝料の要求も覚悟していた。最初はただ情けなく、あきらめしか感じられなかった。それが心の中にやり場のない苛立ちと怒りが湧き上がってきた。そこで恭一は妻の荷物や服をゴミ置き場に捨てた。

妻が家出して一週間が過ぎたその日、彼の前に二人の刑事が訪ねてきた。妻に捜索願が出されているという。妻が行方不明になっても自分で捜索願も出さない旦那がいる。突然大量に服を捨て始めた。元々夫婦仲は極めて悪い。殺したんじゃないかと疑われても、仕方がない。もし、どこかで妻の死体が発見されるようなことがあれば、真っ先に疑われるのは自分だ。そのような疑惑を消すために、恭一は消えた妻を捜すことにした。

一方で、刑事の蛯原篤史は急な呼び出しを受けて、霊安室に立っていた。顔にかけられた布が除けられると、蛯原は一目でそれを確信した。愛する妻の亡骸がそこにあった。しかもラブホテルで殺されているのを発見されたという。そこへ追い討ちをかけるように、ヤクザとの癒着の疑いをもたれ、本庁で取調べを受ける。身内だから捜査にタッチできない。しかも別件で、本庁に睨まれている。だが蛯原は自分の手で仇を取ることを、自分に誓う。

やがて二人の男は、妻たちが関わっていたという《救いの御手》なる新興宗教団体を知る。五十六億七千万人の人類を救うべく地上に降臨したと称する謎の女《弥勒》。彼女を教祖にいただくこの新興宗教は、ありふれたカルトかと思われた。この《救いの御手》を介して、偶然にも出会った二人の男の運命は大きくぶれて、しだいに、秘められた教団の本体へと引き寄せられてゆく。

失踪人捜し、犯人探し、というミステリのふりをしたハードボイルド調のサスペンス作品かな。新興宗教という怪しさを小道具として散りばめ、さらに、平凡な日常の中に潜む狂気なども取り入れて、上手く融合されていた作品だと思う。それに、こういったラストを迎える作品は、これまでに読んだことがなかったし、トリックうんぬんよりも、作品の最終到達点は個人的にはありだった。でもこれってネタバレなしでは、これ以上書けない。ただ、身勝手な男が主人公なので、女性が本書を読むと嫌悪を感じるかも。そこら辺が気になったので、女性にはお薦めしにくい。でも、おもしろかった。

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