「メルヘンクラブ」さとうさくら
2008年05月27日 (火) | 編集 |
メルヘンクラブメルヘンクラブ
(2008/04/09)
さとう さくら

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マナベはうんざりしていた。タケヲのいないこれからの世界に。やり切れなかったけれど、どうにもできなかった。嘘でも何でも、もうどうにでもよくなった。主人公は真鍋頼子二十五歳。いつまでも自暴自棄に陥って、ひきこもるわけにもいかず、マナベは仕方なく、スキルや経験の嘘をついて派遣会社に登録し、急募の大学事務に応募すると即決で、翌日から仕事だった。派遣のマナベを含め、部署全体が退屈で暇だった。誰もがあくびをこらえてお茶を飲み、喫煙室に行き、少ない仕事を定時に引き延ばしていた。でも、ここまで退屈の方が、働く気のないマナベには好都合だった。

ある日、マナベは学生と間違われて学生に声をかけられた。夢、見てますか? 眠って見る夢です。メルヘンクラブ。入りませんか? 夢なら好きな人と出会い放題。なりたいものになり放題。なんとなくつられて、マナベはメルヘンクラブに入会した。部員は大学生の市村、高橋、清水、由紀、香奈とニセ大学生のマナベの計六人。活動場所は図書館内の陰気な書庫。マナベは、思い出と空想とさらに、夢でタケヲを補充することにした。夢なら永遠に、タケヲはマナベに微笑んでくれる。マナベは、タケヲと会いたい一心で夢を見る練習を始めた。

かわいらしいタイトルに騙されるな。主人公であるマナベの胸中はタケヲ、タケヲ、タケヲーーーーッ、と最初から最後まで別れを告げられたタケヲのことしかない。そのタケヲとの出会いから別れまでを延々と回想し、メルヘンクラブで実際に夢を見られるようになっても、タケヲの夢ばかりを見る。夢と現実の落差に虚しくなりつつも、またタケヲの夢を見る。どこまでも後ろ向きでいるマナベの姿を読まされるのは、すごくしんどい。

そんなマナベは、いつも人に合わせ、何も主張しない。返事はいいですよと毎回答えるが、その意味するところは、どうでもいいですよ。自分というものがまったくなくて実がない。個性がない。抜け殻のようで、ただタケヲにだけ固執している。他の部員たちもコンプレックスの塊で、夢を見ることで現実逃避をしているだけ。

ここにあるのは鬱だけ。陰気のオンパレードで、とても息苦しい。個人的なことだけれど、自分の殻に閉じこもって、近づくなオーラーを出すタイプの人間ではない。どちらかと言えば、いつものん気にダメさを振りまいているような自分には、まったく共感できる部分がなかった。過去もまったく振り返らない。自分と同タイプの今が良ければそれでいい。そう思っているマイペースな方には、本書は合わないだろう。

ラストは、取って付けたような鬱からの脱皮モードになる。予想通りの展開でこれは嫌いじゃないが、行くのなら鬱のままドン底まで突き落として欲しかった。これって捻くれているのかな。日本ラブストーリー大賞シリーズと帯にあったが、未練たらしい妄執としか思えなかった。硬い文章ということもあって、この作品のノリは自分の肌には合わなかった。

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