「ショートソング」枡野浩一
2008年05月28日 (水) | 編集 |
ショートソング (集英社文庫)ショートソング (集英社文庫)
(2006/11)
枡野 浩一

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ハーフの美男子なのに内気で、いまだチェリーボーイの大学生、克夫。憧れの先輩、舞子にデートに誘われたが、連れていかれたのはなんと短歌の会!?しかも舞子のそばには、メガネの似合うプレイボーイ、天才歌人の伊賀がいた。そして、彼らの騒々しい日々が始まった―。カフェの街、吉祥寺を舞台に、克夫と伊賀、2つの視点で描かれる青春ストーリー。人気歌人による初の長編小説。文庫オリジナル。《背表紙より》

内気で自分に自身がない国友克夫。モテ男でサドっ気がある天才歌人の伊賀寛介。この二人の男が、須之内舞子を通して出会い、互いに影響し合っていく。その二人は、お互いに勘違いをするのだが、そのすれ違いぶりは読者にしかわからない。そういった手法は中々上手いと思った。

克夫は舞子先輩ラブで、伊賀さんという恋人がいるのがわかっていても、呼び出されるとほいほい出かけて玩具にされている。ちょっと性格が真面目すぎて、克夫は面白味が少ないのかもしれない。しかし、短歌の素人である克夫の才能に伊賀は注目し、嫉妬し、親切をしながらも、からかったりイジワルをする。その克夫のことをかわいいと思ってしまう自分に、ホモの可能性があるのではないかとビビッたり、というユーモアは結構好きだった。

読み始めは、伊賀のだらしない下半身に辟易しながらも、読んで行くと彼の印象がどんどん変わっていく。その伊賀の彼女であり克夫の憧れの舞子先輩は、どんな人物なのか先に進むにつれよくわからなくなっていく。二人の男に好かれるのだから魅力があるのだろうが、伊賀の性の捌け口であり、ただ一方的に奉仕する女であったりと、どうも道具的にしか描かれていなかったように思った。そんな彼女は、はたして伊賀のことが好きだったのだろうか、それとも伊賀の才能にただ惚れていただけなのか。深読みすると、伊賀に群がる女たちは、彼のどの部分に惹かれて寄ってくるのか。そこに伊賀の本質があったように思った。

そんな二人の成長の傍らには、いつも短歌がある。克夫が詠んだ歌。伊賀の歌。舞子やそれ以外の登場人物の歌。それらがストーリーと上手く絡み合って、作品のかわいらしさを演出している。さすがに著者は歌人だけあって、そのときの物語の状況に合った歌がピタっと嵌まっている。この作品は下系の描写が多いので、短歌もそっち系が多いのは失笑してしまうが。

それと最後にもう一つだけ。なにやら部屋に閉じこもっていた克夫の妹。彼女の謎だった行動が明るみ出るラストには、おもわず吹き出してしまった。これはあえて語らず。気軽に読めて、日頃縁のない短歌にも触れることができて、クスクス笑える作品だった。作家である枡野浩一の作品をまた、読みたいと思った。

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