2008
![]() | のぼうの城 (2007/11/28) 和田 竜 商品詳細を見る |
戦国期、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかで最後まで落ちなかった支城があった。武州・忍城。周囲を湖で取り囲まれた「浮き城」の異名を持つ難攻不落の城である。秀吉方約2万の大軍を指揮した石田三成の水攻めにも屈せず、僅かの兵で抗戦した城代・成田長親は、領民たちに木偶の棒から取った「のぼう様」などと呼ばれても泰然としている御仁。城代として何ひとつふさわしい力を持たぬ、文字通りの木偶の棒であったが、外見からはおおよそ窺い知れない坂東武者としての誇りを持ち、方円の器に従う水のごとき底の知れないスケールの大きさで、人心を掌握していた。武・智・仁で統率する従来の武将とは異なる、新しい英傑像を提示したエンターテインメント小説。《出版社より》
これは面白かった。史料に残された史実とフィクションが上手く融合されている。そのことによって、歴史好きなら知っている有名なエピソードが多い序盤は少し退屈だった。逆を言えば、歴史に疎いかたにはとても親切な作品だと思う。まあ、主な人物紹介や時代背景は作品に欠かせないから、歴史が好きだと言うかたは中盤までガマンしてもらいたい。
主人公は成田長親という無名の戦国武将。馬にも乗れず、刀術、槍術、体術、あらゆる運動ができない。武勇もなければ知力もない。百姓仕事を手伝うことを大いに好むが、恐ろしく不器用なために感謝されるどころか迷惑がられている。図抜けて背が高いが、ただ大きいだけ。その大きな男がのそのそ歩く。その姿がまさに、でくのぼうのごとくで、それに申し訳程度に様を付けただけ。家臣はおろか小物、さらには百姓領民にいたる者たちが、面と向かって呼ぶ。のぼう様と。しかしそこには愛情がある。俺たちがついてなければ、のぼう様は何もできない、そう思わせる得体の知れぬ人気があった。
石田三成に率いられた二万の秀吉軍に対し、忍城方は士分五百人と女子供の領民を合わせた総勢約三千七百人。篭城戦が繰り広げられるのは主に三箇所。成田家一の家老であり、長親の幼馴染みでもある正木丹波守利英は、東南の門佐間口で長束大蔵大輔正家と対峙。戦うために生まれてきたという同じく家老の柴崎和泉守は、東の門長野口で大谷刑部少輔吉継と対峙。兵書に親しみ、毘沙門天の生まれ変わりと豪語する若き家老の酒巻靱負は、南の門忍口で石田治部少輔三成と対峙。そして、のぼう様のためにと集まった百姓たち。
彼らの寡兵で大軍を破る合戦場面にわくわくし、三成の水攻めによって孤立してしまう忍城にドキドキし、それによって、でくのぼうと思われていた長親が取る行動に興奮する。天下統一を目指す秀吉の軍勢が、唯一、落とせなかった武州・忍城。その軍事絵巻が思う存分堪能できた一冊だった。読後は痛快の一言に尽きる。今後もこの作家は要チェック。
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