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    2008

05.30

「船上にて」若竹七海

船上にて (講談社文庫)船上にて (講談社文庫)
(2001/06)
若竹 七海

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「時間」「タッチアウト」「優しい水」「手紙嫌い」「黒い水滴」「てるてる坊主」「かさねことのは」「船上にて 」という八編を収録した短編集。

「時間」
川村静馬は、ばったり再会した大学の友人から、気になる話を聞かされた。話とは、彼がかつて失恋したその女、五十嵐洋子についてだった。彼女は五年前に事故にあい、そのとき母親が亡くなった。彼女自身も半身不随で車椅子の生活になって、結局一年ほど前に死んだ。その二ヶ月前に見舞いにいくと、彼女はごく普通だったが、ある時間をきっかけに様子が一時おかしくなったという。調べた結果、彼女は自殺したとしか思えない。その彼の前に、洋子のことをすべて知る北上綾乃が現れた。

「タッチアウト」
自分が病院にいると理解できた。ベッドの枕元にかけられた橋爪雪彦という自分の名前を見た途端、あらゆる記憶がよみがえってきた。殴られたのだ。幾度も幾度も。彼が死ぬほど焦がれていた女、林田ゆかりに。一方のゆかりは怖かった。度重なるストーカー行為。それがどうやって家に入り込んだのか、突然部屋の扉が開き、彼が立っていた。俺は未成年だからたいした罪にならないという言葉とともに襲い掛かられた。そして…。一ヵ月後、ゆかりは結婚する。遠くの街に行く。その日さえ、早く来てくれさえすれば。

「優しい水」
苛立ちの中で目が覚めた。あたしが見ているものは、どう見ても、空よね。それにしても、この角度から見る青空に、なんとなく見覚えがあるような気がする。ああ、そうだ。会社のビルの脇の隙間。そこから見上げる空によく似ている。どうして、ビルの隙間なんかで寝ていたんだろう。あら、身体が痛い。今度はがくがくと震え出した。声だって出ない。そうだ、あいつはいったいどうしてあたしを屋上から突き落としたんだ。そうだ。あたしって天才。ちゃんとメッセージを残しておけばいい。

「手紙嫌い」
志逗子は手紙が嫌いだった。最近の身の回りの情報。そんなものは電話で話してくれればいい。などと、いくらでも言い分がある。そんなある日、友人から憧れの写真家を紹介してもらえることになったが、その相手は手紙マニアだった。そんなとき、行きつけの古本店で、ふと本棚の一角に吸い寄せられた。《実践・特殊手紙文例集》これだ。この本だ。買ってきたその本を開いてみると、脅迫の手紙、投書、予告状、遺書と章が続く。その遺書の用例が、祖父が自殺したときの遺書とまったく同じものだと気づいてしまった。

「黒い水滴」
渚に殺人の疑いがかかった。渚は私の義理の娘である。私が二十八、渚が五歳のとき、私は彼女の父親である斉藤一平と結婚した。斉藤は文字どおりの女殺しだった。渚を産んですぐその母親が亡くなると、すぐにとっかえひっかえし始めた。二番目の妻は八年目、三番目の妻は一年半、四番目の妻は三年で、次々事故で亡くなったのだ。私は五番目の妻である。長生きしたのは私だけだが、なんのことはない、三年あまりで離婚して逃げ出したのだ。その亡くなった元夫の内縁の妻が死んだ。その時刻、私は渚と共にいた

「てるてる坊主」
柴田広美は三次恭平の紹介で、その旅館を訪れた。中庭は枯山水になっていて、左手の一帯は無粋にもコンクリートブロックが高く積まれている。まだ真新しいブロック塀はかつて竹薮で、三次とともに子供の頃から友だちだった輝男がそこで首を吊ったのだ。私は部屋の窓枠に腰を下ろしたとき、なにかが視界をかすめたのに気づいた。なにも、ない。気のせいか、と目を落とすと、再びなにかが動く気配がした。ブロック塀のうえになにかがのぞいている。あれは、白い、闇に浮かびあがるほど白い、人間の顔だった。

「かさねことのは」
わたしは友人の春日のもとへ、帰宅途中の足を向けた。春日はわたしの高校時代の先輩で、現在は精神カウンセラーの仕事をしている。彼はしかめつらしい顔でファイルを開き、何度も読み返しているところだった。春日は人を食ったような笑みを片頬に刻み、ファイルをこちらに差し出す気配をみせた。この手紙をきみに見せよう。手紙に登場するのは五人の人物だ。このうちのある人物が事故で死に、ある人物が殺された。その人物は誰か。そして、彼らの間に何があったか。きみは当てることができるか、と言ってきた。

「船上にて 」
豪華客船のデッキで読書にふけっていると、ハッターという引退した宝石商の老紳士が話しかけてきた。我々はすっかり意気投合し、夕食も一緒にすることになった。その食事の席に、もうひとり、新たな客が加わった。このトマスなる男はたいへんな額の遺産を相続したとかいう大富豪で、出港前に、ナポレオンが三歳の時の頭蓋骨をとある人物から譲り受けた、と嬉しそうに語る。その後、ハッター氏から、かつて濡れ衣でダイヤの原石盗難事件の犯人に仕立て上げられた話を聞いていたところ、トマスがかけこんで、一言、こう叫んで失神した。ナポレオンの頭蓋骨が盗まれた。

初期作品ばかりだそうだが、モロに好みの作品が多かった。最後の三行であっと驚く仕掛け。後味の悪さ。ブラックユーモア。ふつうの方は、へなへなと萎えてしまうようなこれらが妙に気持ちいい。「タッチアウト」のあと少しのタイミングでというぎりぎりラインの絶妙さ。「優しい水」の残したダイイングメッセージの皮肉な行方。「手紙嫌い」のラストで披露されるブラックな過去の真実。「かさねことのは」の読者への挑戦。お気に入りを挙げるとすれば、この四作品が良かった。ブラックテイストが好きな方に、お薦めしたい一冊だ。

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若竹七海
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comments

私もだいぶ前に読んだ!!
でもかなり前だから内容が思い出せないぞ~。
久々に若竹さんのブラック読んでみよっかな。
積本から探さなきゃv-218

まる:2008/05/30(金) 23:12 | URL | [編集]

まるさん
思い出せないのはしょっちゅうです。
ここに書いていても忘れてしまう低落。
若竹さんの本はたんまり積んでいます。
のろのろですが読んでいきたいです。

しんちゃん:2008/05/31(土) 11:44 | URL | [編集]

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