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    2008

06.02

「最後の記憶」綾辻行人

最後の記憶最後の記憶
(2002/09)
綾辻 行人

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幼い日に見た母の笑顔は、いつもとても美しかった。そして彼女は、いつもとても優しかった。誰に対しても、分け隔てなく。僕はそう記憶している。けれど、今。母は昔のように笑うことがほとんどない。美しくもなければ優しくもない。ベッドに横たわって、日がな一日ぼんやりとしている。表情らしい表情が欠落してしまった彼女の顔。何かの折りに、ふとそこに滲み出してくる色は、激しい恐怖。とてつもなく激しい、物狂おしいほどの恐怖。もはやそれだけのようにさえ、僕には思える。

母は五十歳そこそこで、急速に記憶を喪失し、家族の識別もできなくなってしまった。主治医曰く、〈白髪痴呆〉などと呼ばれることも多い、〈箕浦=レマート症候群〉で、現在に近い記憶から、また印象の薄い記憶から、順に消えていくという。それに伴って頭髪が短期間のうちに真っ白になってしまう。突然の白い閃光。バッタの飛ぶ音。血飛沫と悲鳴。追いかけてくる「あいつ」……。母が、狂乱する。

母の断片の記憶。あいつが、来る。突然の真っ白な閃光とともに現れるあいつ。汚れた黒い服をまとったあいつ。顔がない。首がないあいつ。ショウリョウバッタの飛ぶあの音が響き渡る時、世界は血飛沫と断末魔の悲鳴で埋め尽くされてしまう。母が子供の時分に経験したという、その恐ろしい出来事。病状がこの段階まで進んでもいまだ欠け落ちることのない、それが彼女の、恐らくはこれまでの人生で最大の?恐怖の記憶″。

その一方で、僕の周囲で子供が惨殺されたり、子供が行方知れずになる。むかし母さんたちを襲った「あいつ」が、今ここに現実の存在として現れたのではないか、という思いが、僕を追いつめる。波多野森吾は、母の〈白髪痴呆〉は自分にも遺伝しているのでは、と耐えがたい恐怖に精神のバランスを崩しながらも、幼馴染みの藍川唯に促され、励まされて、死を目前にした母を今なお苦しめる記憶の謎、母の最期の記憶になるかもしれない過去を探り始める。

鬱々とした序盤。そして恐怖。藍川唯と再会し、母の過去を捜す旅に出る。そこで突然、幻想の世界に迷い込み、真相を知って驚愕するも、決意を迫られる。ミステリであり、ホラーであり、幻想小説である。綾辻行人ならではの、圧倒的な雰囲気に包まれた作品だと思った。

あるところで作品評価を見ると、あまりよろしくない。しかし、「深泥丘奇談」を読んだ後で本書を読むと、これはこれでありかなと思える。怖いと感じるのではなく、不思議な世界に迷いこんだような雰囲気に酔える作品だ。その異界への導き手である狐面の子供らも、何かありそう、何かありそうと興味をくすぐる技巧が効いていたし、母の恐怖の記憶にリンクしてしまう主人公の恐れ、それにともなうオチも素晴らしかったと思う。賛否がある作品だが、個人的には面白く読めた作品だった。

文庫版の画像がなかったので、単行本の画像で済ました。アマゾン、しっかりしろよ。

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綾辻行人
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