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    2008

06.29

「瑣末なおもいで」埜田杳

些末なおもいで些末なおもいで
(2006/12)
埜田 杳

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眠れない夜の底にいた。ベッドに横になる直前までは確かに眠たいのに、いざ横になれば目が冴える。一向に意識が遠のく気配がない。眠れない。眠りにくい日々が続いたある日、窓を開けてみた。そこは深海のようだった。檜山か。その時不意に、深海で声がした。同じ高校の、同じ部活の矢鳴恭巳だった。やはり眠れずに夜のそ底をうろうろさまよう矢鳴と、まともに言葉を交わした最初の日だった。二人は次第に打ち解けあい、キューピーさんとあだ名される矢鳴の幼なじみの女子生徒も輪に加わった。その矢鳴から、檜山にだけ打ち明けられたことがある。俺さ、あれに罹ってるよ。

″あれ″とは。最初は痒くなる。躰の何処かが、無性に痒くなる。掻いているうちに、羽根かが生えてくる。羽根が生えたら、痒かった部位は無くなる。生えてきた羽根が、部位を持ってどこかへ飛んでいくからだ。罹ったひとは、将来的に全身を無くすことになる。死ぬのかどうかも判らない。何故罹るのかも判らない。ひとには伝染らない。勝手にある日突然あるひとりが罹り、勝手に無くなってしまうのだ。

檜山は矢鳴に近づきたいと思う。だけど、友達とは何かがわからない。そこでキューピーさんに聞いてみると、彼女はこう答える。友達も、親友もいない。そんな区分けが大嫌いだ。好きなひとと、嫌いなひとと、どちらでもいいひとしかいない。そしてクラスメイトはどうでもいいひとたち。彼女はそう思うことで自分を守っていた。

そのキューピーさんのことが好きな矢鳴は、自分の想いやさまざまなことを檜山に語る。矢鳴が話す相手になぜ檜山を選んだのか。たいして親しくなかったから。深くまでは踏み込むことをしないから。もしくは深くまで踏み込む交友をしない臆病なやつだと思ったから。などと檜山は自問自答する。キューピーさんと同じく檜山もまた、自分で周りとの壁を作っているのだ。

そして、自分の知る人物がいなくなる。喪失してしまう。友達といえるのか、親友といえるのかもわからない。やがて矢鳴は学校まで辞めてしまうが、何も変わらない。人ひとり減ったところでどうにも、何も変わりはしない。社会もそんなものだ。その程度のものだ。個人なんて。人ひとりなんて。しかし、矢鳴が消えても、これからも生きていかなければならない。矢鳴の痕跡は薄れ、矢鳴を思い出すことは少なくなるだろう。そんなとき、自分はどう思うのか。あるいはどう向き合うのか。

奇抜な設定で、別れに対する心の揺れを描いた作品だ。抽象的すぎる部分はあるが、いなくなってしまうことがわかっている人物との距離の取り方や、自分との折り合いの付け方や、なにもかもが未熟だ。だけど、これが青春という若さなのかもしれない。思い出にはしたくないけれど、いつのまにか思い出になる。忘れることが大人になることなら、大人になるということは残酷なことだ。しかし、いつまでもあの頃にはしがみついていられない。そんな難しいことを考えてしまった読書になった。

某ネット書店では辛口だったけれど、そんなに悪くはないと思った。

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comments

少しずつ、その人の存在がなくなっていく、という発想から、こういう病気を思いつくのがすごいと思いました。そして、最後にすっかり消滅してしまった時の喪失感をすごくリアルに感じました。近しい人が亡くなった時の喪失感とすごく似ている。で、タイトルが「些末なおもいで」って、これまたなんとも。

くまま:2008/06/29(日) 18:10 | URL | [編集]

くままさん
三浦さんと島本さんという帯の推薦文に惹かれて読みました。
別れを消えるという比喩で表現していましたね。
そこが文学ちっくで青いとは思いましたけれど、個人的にはありでした。
意外と良かったですよね。

しんちゃん:2008/06/30(月) 11:50 | URL | [編集]

某ネット書店では、辛口でしたね。
でも、あやうい青春の思いが感じられ、私は、この小説好きです。

花:2008/07/03(木) 20:23 | URL | [編集]

花さん
一部の過激な意見ばかりで、あれはヒドイよね。
あんなのは無視、無視!
そう捨てたもんじゃないと思いました。ですよね~。

しんちゃん:2008/07/03(木) 21:52 | URL | [編集]

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本「些末なおもいで」


些末なおもいで 埜田杳(のだはるか) 角川書店 2006年11月 眠れない夜の底にいる桧山は、結露に濡れる窓を開けた。そのときふいに声をかけられる。それをきっかけに矢鳴と高校でも話すようになる。桧山、矢鳴にキューピーさんも加わり、園芸部の焼き芋大

2008/07/03(木) 20:18 | <花>の本と映画の感想

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