「かわいいカノン」季東将司
2008年07月08日 (火) | 編集 |
かわいいカノンかわいいカノン
(2008/05/17)
季東 将司

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かわいいね、とはじめて言われたのは7歳のときだった。そう言った肉屋のトシちゃんは、その2日後にずっと付き合ってた彼女と結婚した。あたしはわりとトシちゃんのことが好きだったから、落胆し、憤慨した。男なんて信ずるまい、と赤いランドセルの留め金をかちゃかちゃいわせながら拗ねた。カノンだってかわいいよ。マリちゃんのその一言は、10歳のあたしの自信を一気に回復させた。

従姉妹のマリちゃんはあたしのあこがれの人だった。細くて、でも出るとこは出てて、かわいくて、大きな目が愛くるしかった。そのマリちゃんが素敵なことを教えてくれた。かわいいね、とか、キレイだね、とか言われたらその数をちゃんと覚えておくこと。いち、にい、さん、しい……ひゃく。100番目。100番目にかわいいと言ったその人が、きっと運命の人だから。あたしはその日から「かわいいカウント」を始めた。先行きが不安だったので、肉屋のトシちゃんを記念すべき1番目にしてやった。そして、月日は過ぎる。

カメラマンのヒタチダイゴはいけ好かない。いけ好かないが、初恋のオトコだった。菅野カノン、小学生のとき「カノンのキャメラ」。タイラエイキは背の低い王子様。学年一の人気者から告白された。菅野カノン、中学生のとき「マイ・ダーティー・ハリー」。1つ年下で不器用なバイト仲間のカジくん。複雑な家族への想いを持つカジくんだけど、気が付けば好きになっていた。菅野カノン、高校生のとき「シンデレラ城を、あなたに」。人数合わせで合コンに参加をすると、中学時代の同級生と再会した。キャラの変わった和泉ノブに心をぐらぐら揺られる。菅野カノン、21歳のとき「同級生」。ライバルは5歳児の女の子。そしてついに、100番目をカウント。菅野カノン、26歳のとき「カウントダウン」。

広末涼子絶賛!という帯の文字に期待値を下げてしまったが(失礼)、そんなことは杞憂にすぎなかった。かわいいカノン。捻りはまったくないが、タイトルそのままにカノンがかわいかった。カノンの話し口調や、乙女ちっくな物の考え方や、成長しながらも一本の筋が通った変わらないところや、素敵な出会いからくる当然の別れなど、もうすべてがかわいくて、トロさが愛らしくて、幸せになって欲しいと応援したくなる。

基本的に悪いやつは出てこないが、カノンが恋心を抱く人物を除けても、たくさんの魅力ある人物が登場していた。友達のようなお母さんや、中学の数学教師だったハリーや、肝心なことはすべて任せてくるバイト先の店長や、ダメ男っぽいが憎めないノブの兄など、時にはひと際大きな輝きを放つ人物たち。主人公のカノンよりも目だってしまうサブキャラたちがすごく良かったと思う。

それに、飛びぬけて美人だとか、人よりどこそこが優れているとか、母性のかたまりだとか、そういう女の魅力や色気があるわけではなくて、カノンはいたって普通なところ、むしろさえない系の平凡な女の子だったところが好印象に繋がった。バカはみんなに愛されるとか、好きになって後悔のない人などと、作中でカノンを評していたが、ほんとにその通り。この作品には、かわいいという言葉しか出てこない。とにかくとにかく、かわいいのであった。

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