--

--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

スポンサー広告
トラックバック(-)  コメント(-) 

    2008

07.25

「窓の魚」西加奈子

窓の魚窓の魚
(2008/06)
西 加奈子

商品詳細を見る

誰も、あたしの本当の姿を知らない。あたしの本当の目から、涙がこぼれた。秋のある日、二組のカップルが温泉へ向かう。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶっきらぼうなトウヤマ。一緒にいるのに違う現実を見る四人にまとわりつく、不穏な影。裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。大人になりきれない恋人たちの一夜を美しく残酷に描いた著者の新境地。《出版社より》

好きな作家の作品に「新境地」という宣伝文句がつくと、ドキっとするのは自分だけでしょうか。まず読み始めて、これまでとどこかが違うと漠然と思った。ひとつは登場人物の会話に答えがあった。大阪弁ではなく、標準語を話しているのだ。そして、大きく違う点は、とても静かで、時間の流れが緩やかで、かわいらしさがなくて、ひやりとした空気が漂っていることだ。

二組のカップルという組み合わせの四人の若者は、温泉に行こうとバスに揺られていた。着いたところは、川沿いの寂れた温泉宿。お風呂は旧館に内風呂がふたつと、露天がふたつ。露天は旧館の裏口から、綺麗な日本庭園の中を通って行った先にある。庭園を歩いていると、「ニャア」と猫の鳴き声がした。でも、猫の姿は見えない。内風呂の窓越しに、庭園の池で泳ぐ錦鯉が見える。「ちゃぷん」と鯉が跳ねる音が聞こえる。翌日、その池から、身元の分からない女の人の死体が発見された。

最初は得体の知れない四人の人物たち。ナツ(夏)、トウヤマ(冬)、ハルナ(春)、アキオ(秋)。四季の名前を持った彼ら四人の一人称で、同じ時間、同じ場所で過ごしたことがらが順番に綴られていく。そして、彼らの内面が徐々に明らかにされていく。ナツは「私はきっと狂っている」と感じ、トウヤマは「皆が俺のことを笑っている」と思い、ハルナは「誰もあたしの本当の姿を知らない」と切なさに頬を濡らし、アキオは「生きる意志を求めて」あることを続けている。

ナツの章で見えてくることがベースになって、トウヤマ、ハルナ、アキオの章を読むことで、そこであったこと、若者たちの輪郭が広がっていくのだ。彼らは何かが欠落している。だからこそ、大人になりきれず、孤独にあって、自分自身を持て余している。その欠落した部分を埋めようと、心の繋がらない他人の存在に依存している。

若者四人の物語には、救いもなければ解決もない。この旅館の内風呂から窓越しに見える泳ぐ鯉のように、狭い池の世界から出ることはない。じっとガラス越しに鯉を観察するような作品だ。それぞれに模様はあるがけっして交じわることがない。目的もなく、ただ人間の観賞用として、窮屈な池で泳ぐだけの鯉のように、小さく小さく生きている。彼らの抱えているものが、寂しくて、哀しくて、不思議な余韻をもたらした。こういった新境地もいい。個人的にはアリだった。しかし、以前の作品にも、自分を含めたファンがいるということを、西加奈子さんには忘れないでもらいたい。それに、感想が書きにくいったらありゃしない。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

西加奈子
トラックバック(5)  コメント(4) 

Next |  Back

comments

こんばんは。
西さんはいつもなんだか新しい作品を読ませてくれるというイメージがあります。
それにしても今回は変な話でちょっと戸惑ってしまいました。
結局、あの4人はどうなったんだろう??

ちきちき:2008/08/08(金) 21:25 | URL | [編集]

ちきちきさん、こんばんは。
新境地の作品はかなり重かったですね。
4人もそうだったけれど、声だけ聞こえる猫も何だったんだろう?
とにかく不思議でけったいな作品でした。

しんちゃん:2008/08/09(土) 20:03 | URL | [編集]

こんばんは。
なぜか「西さんといえばしんちゃん」と思う私です。
4人それぞれが自分本位でだけど諦めていて、読んでいてすごく疲れました。
ネコの鳴き声なんだったんだろう?
どうしてあの女の人は同じ旅館にいたんだろう?とナゾばかりでした。

なな:2008/08/18(月) 22:52 | URL | [編集]

ななさん、こんにちは。
西さんは必ず本を買っているからでしょうか。
4人が4人とも後ろ向きのまま終わっちゃいましたね。そして猫は謎だ。
あの女の人はトウヤマを追いかけて来たのでしょうか。文学は深い。

しんちゃん:2008/08/19(火) 11:56 | URL | [編集]

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可
trackback
この記事のトラックバックURL

窓の魚


JUGEMテーマ:読書 誰も、あたしの本当の姿を知らない。あたしの本当の目から、涙がこぼれた。 秋のある日、二組のカップルが温泉へ向かう。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶっきらぼうなトウヤマ。一緒にいるのに違う現実を見る

2008/08/08(金) 21:26 | ぼちぼち

窓の魚/西加奈子


JUGEMテーマ:読書 読書期間:2008/7/29~2008/7/30 [新潮社HPより] 誰も、あたしの本当の姿を知らない。あたしの本当の目から、涙がこぼれた。 秋のある日、二組のカップルが温泉へ向かう。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶ

2008/08/13(水) 00:16 | hibidoku~日々、読書~

「窓の魚」西加奈子


窓の魚 西 加奈子 JUGEMテーマ:読書 秋のある日、二組のカップルが温泉へ向かう。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶっきらぼうなトウヤマ。一緒にいるのに違う現実を見る四人にまとわりつく、不穏な影。裸になっても笑いあってい...

2008/08/18(月) 22:53 | ナナメモ

窓の魚*西加奈子


窓の魚(2008/06)西 加奈子商品詳細を見る 誰かといるのに、ひとりぼっち。 男の子のようなナツ、 つるりとした肌のアキオ。 明るく派手なハル...

2008/09/06(土) 07:41 | +++ こんな一冊 +++

「窓の魚」誰もが心で泣いてる


あー あと、20ページくらいなんだけど ってところで 電車は 勤務地の駅についてしまった。 読みかけの本があと少しってときは 通勤時間がびっくりするくらい早く感じる。 結局、 駅構内のエスカレーターも メールチェックに使う始業前の時間も使って

2008/09/25(木) 22:16 | 末っ子長女にしえみのイラスト日記

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。