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    2008

08.05

「平台がおまちかね」大崎梢

大崎

平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)

井辻智紀が明林書房に入ったのは昨年、大学を卒業してすぐの春からだ。その前に二年ほど同じく明林書房で編集のアルバイトを続けていた。四年生の秋に正社員の話を持ちかけられ、そのまま入社が決まった。それともうひとつ。明林書房からは、配属先が営業であるとあらかじめ告げられていた。これも入社を決めた大きな理由だった。本は好きで、昔から本に携わる仕事をするのは夢だったけれど、どうしても編集部だけは避けたかった。普通の活字中毒とは違い、魂本と出会うと物語世界にどっぷりのめりこんでしまうからで、本の名場面をジオラマとして再現するのが趣味だった。

営業が向いているとも思えない。どちらかといえば地味で不器用で、人前で何かをしゃべるのは大の苦手だ。尻込みなどという言葉はこのさい棚の上に放り投げ、両足に力を入れ、なんとか踏みとどまらなくては。そう思いながら、担当エリアの書店をまわる日々を送っている。そこでよく顔を合わせるのが、佐伯書店の営業マンだ。自分より四つ、五つ年上の真柴は、営業マンとしてたてるべき先輩であるのだが、どうも素直に尊敬しにくい。何かといい加減な男で、頭の中身は八割方女性のことで占められている。しかも「ひつじくん」などとふざけた呼び方をしてくる。そんな「ひつじくん」こと井辻智紀が次々と謎を解いていく。

「平台がおまちかね」
最新の売り上げデーターを目で追っていると、意外な数字に目が留まった。一冊の本だけ、やけに売れている店がある。その本はこの半年に四十八冊も売れていた。ベストセラーなら珍しくないが、でもこの本は五年前に出た本だった。早速その書店を訪ねてみたら、店長はにべもなくこう言った。君には関係ない。悪いが、帰ってくれないか。

「マドンナの憂鬱な棚」
書店員の彼女は仕事熱心で、接客はもとより品揃えにも、常にこまやかな気配りをしている。多忙の合間を縫い、棚作りにも精を出している。彼女を影ながら応援したいと思っている営業マンから、自分がマドンナと呼ばれていることなど、つゆほど気づいていないだろう。智紀も「マドンナの笑顔を守る会」に入会させられた。その彼女から笑顔が消えた。

「贈呈式で会いましょう」
今日は自社が主催する賞の贈呈式、並びに記念パーティーが開催される。贈呈式は作家本人にとって、おそらく人生の中でも大きな晴れ舞台であり、新人賞は門出を祝う席だ。塩原はまさに今日の主役で、彼を祝って会が催される。その主役が受賞作の贈呈式を前にして、長いこと出版界から遠ざかっている老作家に会いたいと突然取り乱した。

「絵本の神さま」
初めて訪れた書店のシャッターが閉じられていた。小さい書店ながら、絵本に力を入れた地元住民に愛される書店だった。ぼんやりと突っ立っていたら、となりの蕎麦屋のご主人が声をかけてくれた。商店街の客足も減り、経営が苦しかったんだろうと。そして、昨夜もシャッターの前で、雑誌を持ってぼんやり突っ立っていた男がいたと。

「ときめきポップスター」
書店主催でポップ販促コンテストが開催された。参加者は出版社の営業たち。みんなが忘れているような本を紹介し、優れたポップで販促効果を上げ、書店の売り上げに貢献する。そのイベントが始まると何故か、佐伯書店の真柴が選んだ本だけが、平台の上で一列ごっそり移動したり、他の本の間に一冊だけ挟まれたりという出来事が起こった。

成風堂シリーズは書店員の目線、新シリーズでは出版社営業マンの目線で、書店や書店員、あるいは本にまつわることを描いている。成風堂シリーズでは、ネタ切れの心配をしてしまうほど行き詰っていたが、本シリーズになって一皮むけていた。やはり想像だけど、一つの舞台で続けるのはしんどかったのに違いない。本作では、毎回違う書店で、たくさんの書店員が登場してくる。そして、出版社の目線ならではの見えてくる事柄が新しい。どう新しいかは、読む人の楽しみであるから、あえて書かないでおく。

それに、キャラの方もこちらの方が立っている。ライバル出版社の真柴であり、他の大手出版社の営業マンたちであったり、ひつじくんの前任だった先輩の吉野など、個性的な濃い面々が、作品に彩りを与えていた。こういった点では、作者の力量が上がってきたと言えるだろう。ただ、ミステリとしては弱いのはあいかわらずだ。しかし、自分を含めた読者というかファンは、この著者にミステリを求めていないかもしれない。(おい)

今後がもっともっと楽しみになった、新シリーズの開幕である。

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大崎梢
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comments

確かに・・・
ミステリーというよりも
ちょっとした謎的な話が多いんですけど、
それはそれでもういいのかな、と。
本屋の裏側、出版社営業の裏側なんかが
垣間見られるというだけでも
いい気分になってきました。
このシリーズと成風堂シリーズのコラボ、
読んでみたい今日この頃です。

す〜さん:2008/08/05(火) 20:54 | URL | [編集]

確かに一つの書店で起こる物語では
ちょっと話題がなくなってたのかな…
これからは全国を駆け回る営業さんにがんばってもらいましょう!

なな:2008/08/06(水) 07:10 | URL | [編集]

す~さん
やっぱり謎よりも裏側ですよね。
それにあんな多恵ちゃんの暗号なんてお手上げ。
ニアミスは接近の予感だと思いましたけど。

しんちゃん:2008/08/06(水) 11:28 | URL | [編集]

ななさん
成風堂があまり大きくない書店だから
行き詰ってしんどそうに思いました。
営業さんの方がいろんな可能性がありそう。
なんて偉そうなことを言ってみる^^;

しんちゃん:2008/08/06(水) 11:34 | URL | [編集]

いやーよかったです。舞台が広がって、お話も本当に広がりました。とてもイキイキしてると思います。
ニアミスはどうなるんでしょうね。次の進展はこっつで起こるのか、それともあっちで起こるのか。意外な楽しみが増えました。

たまねぎ:2008/08/13(水) 23:01 | URL | [編集]

たまねぎさん
やはりこちらの方が断然よかったですよね。
あっちはデビュー作が売れたので、急ぎすぎたのでしょうか。
出版ペースは早いのですが、内容が追いついていないように思いました。
もちろんガチンコは気になります(笑)

しんちゃん:2008/08/14(木) 11:02 | URL | [編集]

こんばんは。
私も書店シリーズよりこっちのが面白いなあって思いました。
謎も無理無理じゃなかったし、舞台裏話もさらに裏側感があって興味深かったです。
コラボもありそうだし、今後も楽しみですね。

ちきちき:2008/09/03(水) 22:00 | URL | [編集]

ちきちきさん、こんにちは。
より幅が広がって読み応えがあってグッドです。
今後はこのシリーズに力を入れて欲しいと思いました。
ですよね。

しんちゃん:2008/09/04(木) 12:09 | URL | [編集]

やっぱりこの人の書く作品は本屋の裏側だったり
出版社の営業の裏側だったり
そういうのが垣間見れるのが嬉しいです。
このシリーズ、今後が楽しみです。

Yuki:2008/09/07(日) 09:32 | URL | [編集]

Yukさん
成風堂じゃないんだという落胆はありました。
でも本に関わる裏側度がアップでしたね。
新シリーズの今後も楽しみです。

しんちゃん:2008/09/07(日) 11:25 | URL | [編集]

こんにちは。新シリーズ、良かったですね~。
謎解きもなんか、ひつじくんの人柄が出ていて良い!なんて、思って読んでいました。今後が楽しみです。

percy:2008/09/18(木) 10:18 | URL | [編集]

percyさん、こんばんは。
新シリーズは、自分も含め評判がいいですよね。
ぼ~っとしてそうだけど実は切れ者、という主人公もグッドでした。
シリーズ第二作も楽しみですね。

しんちゃん:2008/09/18(木) 19:27 | URL | [編集]

本屋が舞台で、本が出てくればもうそれだけでいいですよね。
とかく編集に目が行きがちですけど、営業も私はいいと思いました。
そういえば、ちょっと前に本屋でウロウロしてたら、店員さんと恐らく営業の女性が打ち合わせしてましたね~、この本をあそこに、とかなんかポップみたいなの持ってて、あれがそうだったのか!ってこの本読んで分かりました。

じゃじゃまま:2008/09/23(火) 22:45 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
同じような光景を目撃しました。
スーツの男性が書店員となにやら密談。
そのあとで三人のスーツがまたも密談。
出版社の営業だったのね、って感じです。

しんちゃん:2008/09/24(水) 13:22 | URL | [編集]

こんばんわ。
新シリーズ、評判が良いようでやっと読めました。
出版社の営業部、という視点が斬新で面白かったです。
出版不況と呼ばれていますが、作る人も売る人もいろいろ努力されているんですね。
ひつじくんはもちろん、吉野さんや真柴さんのキャラも良かったですね。
「マドンナ~」に登場する営業マンなんて濃すぎるくらいでしたし(笑)
次回作も楽しみです。

ia.:2008/10/10(金) 00:10 | URL | [編集]

ia.さん、こんにちは。
個性あるキャラも豊富で、新しい視点も良かったと思いました。
まだまだいろんな可能性があると思うので、次回作も楽しみですね。

しんちゃん:2008/10/10(金) 12:37 | URL | [編集]

ひつじくんのジオラマを実際に見てみたいです。
ジオラマ作りの才能を生かした営業とか、今後展開してみたりすると成績アップもできるんじゃないか?とか、次の展開を予想するだけで楽しみなシリーズです。もちろん、成風堂とのコラボも。

エビノート:2008/10/14(火) 20:58 | URL | [編集]

エビノートさん
ジオラマは見てみたいですね。
本の表紙に持ってきても面白いかも。
シリーズ次回作もコラボも期待ですね。

しんちゃん:2008/10/15(水) 11:58 | URL | [編集]

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