2008
![]() | ぼくは落ち着きがない (2008/06/20) 長嶋有 商品詳細を見る |
人って、生きにくいものだ。みんなみんな、本当の気持ちを言っているのかな?青春小説の金字塔、島田雅彦『僕は模造人間』(’86年)山田詠美『ぼくは勉強ができない』(’93年)偉大なる二作に(勝手に)つづく、’00年代の『ぼくは〜』シリーズとも言うべき最新作!「本が好き!」連載中に第一回大江健三郎賞を受賞したことで、ストーリーまでが(過激に)変化。だから(僕だけでなく)登場人物までがドキドキしている(つまり落ち着きがない)、かつてみたことのない(面白)不可思議学園小説の誕生!* ( )内は作者談《出版社より》
望美たちの通う桜ヶ丘高校の図書室のもろもろを取り仕切るのは「図書委員」と「図書部員」だ。図書委員はクラスから一名ずつ選抜される。昼休みや、ときには放課後も拘束される図書委員になるのを皆は嫌がる。仕方なしに選ばれた者は、なにかと口実をつけて図書室の業務をサボってしまう。望美の入学するより何年も前の代に、本好きの女子グループがあった。貸し出し作業をしてくれる者がいないと図書室は運営されない。自分たちの読みたい本も入荷しない。そこで、教師にかけあって、自発的に図書室の管理運営を執り行う「図書部」が発足した。
図書部員には、望美、頼子、健太郎、ナス先輩、部長、登美子、綾…その他多数の部員がいる。部員たちの多くは朝、登校しても教室にまっすぐいかない。まずは二階の図書室に寄り、部室に弁当を置いていく。弁当だけでなく、雑誌や漫画や、携帯電話を置いていくのだ。あるいはゲーム機やデジカメや、私服やネイルセットやドライヤーを。そんな好き勝ってがまかり通る部員たちの部室での日々を描いた、文科系部室小説。
自分が文系男子ではなかったので、文系のクラブってこんな感じなんだ、という興味の持ち方で読んだ。とにかく、まったりしている。部員たちの会話がユルいのである。トンちゃんがさぁ「カツクラ」に載ったんだよとか、けばだったここをむしるのはやめようとか、どうしたら女子アナと結婚できるんだろうとか、私コーヒー、俺ミロ、砂糖もね。牛乳いれてー。ガリガリ君買ってきてー。などと、だらだらしている。
しかし、そこにはいろんな個性があって、彼ら彼女たちは、どんなことで傷つくか分からない年代でもある。だから、理不尽な言いがかりによる無視といった心のすれ違いや、対人関係の未熟さからくるバランスの危うさがあって、第三者から見ればなんともなくても、内実は仲良しこよしの一枚岩というわけではない。おまけに融通の利かないカタブツの先生などが登場して、それが高校生活をリアルなものに感じさせたりするのだ。
きれいで爽やかなものだけが青春ではない。不器用で、無神経で、傷つきやすくて、あらゆることが不安定な年頃だからこそ、何気ないことで心が揺れたり、ぱっと楽しくなったり嬉しくなったりするのだ。思うことや興味や関心がたえずあっちこっちと動いている。そんな中での一瞬の心境が上手く捉えられていて、ここに長嶋流の青春があったと思った。ただ一つ残念だったのは、登場人物たちの学年関係がイマイチ把握できなかったことだ。この部分だけは不親切だと強く思った。「ンモー」。
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