--

--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

スポンサー広告
トラックバック(-)  コメント(-) 

    2008

08.18

「ギフト」日明恩

ギフトギフト
(2008/06/17)
日明 恩

商品詳細を見る

その少年に目が留まった理由は、ただ一つだった。こぼれ落ちる涙をぬぐおうともせずに立ちつくしていたからだ。それもホラー映画の並ぶ棚の前で。しかも今日が初めてではなかった。十日間連続だった。他人に興味を持たない。そう決めて須賀原は日々を過ごしてきた。だがけっきょく好奇心に負けた。少年の視線の先にあったのは、『シックス・センス』に間違いない。タイトルには聞き覚えがあったが、観ていなかった。

白いバンが速度を落とさずに交差点に突っ込もうとしているのを、須賀原の目は捉えていた。少年が横断歩道へ飛び出したので、少年の腕をつかんで力一杯引っぱった。見開かれた少年の目の中で瞳だけが動く。つられて須賀原も視線を移した。いたのは白髪頭の老女だった。老女の側頭部は明らかに砕けていた。こんな状態で、人間が立っていられるのだろうか。ありえない。そう答えをだしたと同時に少年から手が離れる。その瞬間、老女が消えた。

翌日、レンタルビデオ店へ出勤すると須賀原の手はあのDVDへと伸びていた。『シックス・センス』――死者を見ることができる少年の物語。交差点で見た、とつぜん現われて、そして消えた人身事故にあったとしか思えない老女。この二つを結びつけるのは簡単だった。老女は生者ではなく死者。あの少年は、映画と同じく死者を見ることができる。

あの老女は死者なのか? 死者は本当にいるのか? そのことばかり、考えつづけていた。いや、違う。本心ではとっくに気づいていた。本当に知りたいのは、俺の側に死者がいるのかだ。彼がいるのなら、謝りたい。詫びたい。許しを乞う気はない。許して欲しいとも願っていない。ただ、謝りたいのだ。心に傷を負う元刑事と、“死者”が見える少年が、霊にまつわる事件を解決していく。

この作品は連作短編集のようでいて長編作品でもある。二人が話すきっかけになった老女(「とうりゃんせ」)、虐待を受けた犬(「秋の桜」)、びしょ濡れの少女(「氷室の館」)、しゃべつつづける女(「自惚れ鏡」)、そして、逃亡中に撥ねられた少年(「サッド・バケイションズ・エンド」)、と二人がさまざまな死者を成仏させていくことが物語の縦軸なら、横軸は元刑事と少年の成長であり旅立ちである。

死者が見える能力があるゆえに家族が崩壊してしまった少年は、須賀原や成仏していく死者と触れ合うことで、見えてしまうという能力と向き合い、自分なりの答えを出す。自分を責め続ける元刑事は、追跡中に少年を死なせてしまったという過去の呪縛から、事件以来ずっと生きる喜びを封印してきた。その過去の事件に相対することで、拒否していた社会へ復帰することになる。

心に傷を負う元刑事、死者が見える少年、わけあってこの世に留まり続ける死者たち。これだけの負が揃っているので、かなりヘビーな内容になっている。はっきり言ってしんどい。しかし、二人が事件を解決することで、爽やかな余韻を残す作品でもあるのだ。特に印象深かったのは、「秋の桜」と「氷室の館」だった。これは文句なく好きな作品だった。出会いの「とうりゃんせ」と別れの「サッド・バケイションズ・エンド」は、作品の本筋にあたるのでちょっと抑え気味だったかもしれない。

その中で異色だったのが「自惚れ鏡」である。はっきり言えば嫌いな作品だ。これを好きだという方はいないだろう。だけど、ここに登場したような、自分から目を背ける人物は確かにいる。これがリアルすぎて、ムカツキ度も半端じゃなくて、逆に言えば、これが一番印象に残る作品でもあるのだ。

ラストはほろ苦い終わり方だけど嫌いじゃなかった。それよりも、映画『シックス・センス』がネタバレされていたので、もう映画を見る気がなくなってしまった。まだ見ていなかったのに。冒頭に作品名が出たときから嫌な予感はあったが、本当にネタバレをするかな。そこは大いに不満だけど、こういった暗いところに花が咲くような作品は好きだった。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

その他の作家
トラックバック(1)  コメント(0) 

Next |  Back

comments

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可
trackback
この記事のトラックバックURL

日明 恩 著 『ギフト』


ギフト 【単行本】 死者が見える中学生の少年と、 過剰追跡が原因で犯人の少年を 死なせてしまった元刑事が、 霊にまつわる事件を解決して...

2008/11/02(日) 12:23 | 『映画な日々』 cinema-days

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。