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    2008

08.19

「ピロティ」佐伯一麦

ピロティピロティ
(2008/06)
佐伯 一麦

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エゴがぶつかりゃ、人情も通う。マンションが現代の長屋なら、管理人は長屋の大家さんのようなものだ。後任に仕事を引き継ぐ管理人の言葉を通じて、人間の心の深層を、野間文芸賞作家が軽妙なリズムで描く。《出版社より》

けったいな作品である。膝を悪くした現管理人の山根が、後任としてやって来た渡辺に、管理人としての仕事の引継ぎをする。ただ、それだけの内容だ。いや、それだけでしかない。しかし、とにかく変わった作品なのだ。どう変わっているのかというと、最初から最後まで、管理人の語りしかなく、地の文というのが一切ない。情景描写や人物同士の会話がまったくなく、管理人のおっさんが一人で話しているだけなのだ。舞台の一人芝居を想像してもらえれば、本書はまさにそれである。

ひたすら一人で語るマンションの管理人。ほんとうによくしゃべる。彼が目にしたこと、経験からつかみだしたコツ、住人との付き合いかた、出入りするさまざまな業者の人たち、世帯数四十二戸のマンション管理という仕事。地の文がなくても、管理人が語ることで、情景が見えてくる。マンションというコミュニティが一つの物語を形成しているのだ。

自分の仕事柄、マンション管理人の人たちとは話す機会が多い。愛想のいい人がいれば、口のききかたを知らない人もいる。働き者がいれば、頼りない者もいる。ここに出てくる管理人は、人柄がよくて、気配りが行き届く人で、奉仕の人である。こういうしっかりとした人が管理人だと良いが、そうではない人が管理人だと、マンション自体が暗いオーラを発しているような気がする。まったくの勝手な偏見だけど。

管理人の仕事は、共用部分の掃除から始まり、館内の巡回、住人たちのライフラインとなる水道電気などの点検チェック、消耗品の交換、騒音などの住人からの苦情の対応、各種案内の通知などで、けっして住人たちのドアの中を覗くことはない。だけど、ちょっとした会話や、玄関まわりやポストを見ることで、なんとなく住人たちの生活ぶりを察知する。あそこの子供は、あそこは一人暮らしで、あの人は口うるさい、あの人はそそっかしいと。

隣に住んでいてもお互いをよく知らなかったり、エレベーターで一緒になっても挨拶をしないなど、人付き合いが希薄になりがちなマンション住まいだけれど、管理人だけは住人の人柄を知っている。その管理人は、住人に対して一線を引いてけっして干渉することはないが、心の内では声をかけるべきかを問答している。この感覚が非常におもしろかった。

もう一度いう。マンション管理人の朝から夕方までの一日を書いた作品だ。ただそれだけの作品なのに、これが読ませてしまうのだ。本当にけったいな作品であった。

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