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    2008

08.22

「日傘のお兄さん」豊島ミホ

日傘のお兄さん (新潮文庫 と 17-2)日傘のお兄さん (新潮文庫 と 17-2)
(2007/10)
豊島 ミホ

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豊島作品の文庫化といえば、恒例になっているのが大幅なテコ入れ。今回も一編が削られ、二編が改稿だけでなく改題もされている。文庫版は「あわになる」「日傘のお兄さん」「すこやかだから」「ハローラジオスター」を収録した四つの作品集。

「あわになる」
私は二十四歳だった。事故に巻き込まれるという運の悪い死に方だった。私は幽霊となって、この世にとどまっている。自分の葬式を立ち去り、町の中をぐるぐる歩き回った。そうして私は一軒の家の前で足を止めた。ここも葬式なんだろうか。この家は、葬式ではなく結婚式だった。新郎の名前を聞いた途端、よくわからない感情のかたまりが、私の胸を押した。新郎のタマオちゃんは、私の中学時代の同級生で、好きで好きでしょうがない男の子だった。奥さんになった人はさっぱりとした人で、私は玲奈さんにも惹かれた。それから、私はタマオちゃんの家に居座り続けた。

「日傘のお兄さん」
彼は日傘を差していた。お兄さん!と、私はその人のことを呼ぶ。私は保育園に通っていて、家に帰ったあと、すぐに裏の竹やぶに走るのが習慣だった。そこに、お兄さんが待っていたから。ある日お兄さんがいなくなった。私も両親が離婚することになり、母に連れられてこの東京の外れに来た。中学三年生になった夏実の前に、突然、お兄さんが現れた。脚が震えて、涙が出そうで、でもそれよりずっと、胸を満たしている喜びの方が大きかった。「追われてるんだ。かくまってくれないか」夏実は翌日の学校でとんでもない噂がネットに流れていることを知る。?東京多摩地区にロリコン日傘おとこ出没″しかも手配画像に写っているのは、お兄さんの横顔だった。しかし夏実はお兄さんを信じた。こうして、夏実とお兄さんの逃避行が始まった。

「すこやかだから」
涼子は神社の娘だった。父は涼子が小さかった頃、よく涼子の手を引いて神社の石段をのぼった。そしてこの石段から、夕暮れを見せた。夕焼けは神様の手のひらなんだ。父は繰り返し繰り返しそう言い聞かせていた。六年生になった涼子が、石段から夕焼けを見ていると、そこに男の子が現われた。ナイフを持っていると、瞬く間に全校に噂を轟かせた、一学年下の転校生だった。

「ハローラジオスター」
知世は毎日毎晩渋谷で遊びまくり、辛うじて引っかかったのが、北国のド田舎にあるちっこい大学だった。ぐれている知世はこの田舎でだって、遊び尽くしてやるんだ、と決意する。新歓コンパに参加した知世の前に、これだという男が現れた。第一印象は、地味で無愛想で苦手なタイプだ。しかしこの無口な男の声は、この世のものではないほど美しかった。この男を落としてやる。これがノブオとの出会いだった。

さて、感想。「あわになる」は切ないけれどユーモアがあって、そっちに行くのか!という驚きのある作品で、豊島ミホらしいきらりが印象的だった。「日傘のお兄さん」は文句なしに好きだなあ。今の自分がよくわらないという少女が、いい思い出しかないお兄さんと再会して、一緒に逃げる道を選ぶ。この逃避行自体も面白いし、その結末にもぐっとくる。時折だけど、その中三少女がお兄さんに心のなかでツッコミを入れるのだが、その時だけ女性になっている。こういうのにもぐぐっときてしまう。「すこやかだから」は性の兆しが瑞々しかったし、「ハローラジオスター」はいい加減女の成長が微笑ましい。この二作はデビューした賞により近い作風だと思った。一見バラバラのような作品集だけど、どれもが甘酸っぱい。そして、痛さはあるけれど、かわいらしさもある。これが豊島ミホなんだよなあ。

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豊島ミホ
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comments

こんばんは。
単行本の方も読んで好きだったので、テコ入れは嬉しいような、
そのままでもよかったようなっていう複雑な心境でした…。
私も「日傘のお兄さん」はすごく好きな話です!
内容的に好き嫌いがわかれてしまいそうですが、この危ない逃避行は面白いですよね。

アメコ:2008/08/22(金) 23:15 | URL | [編集]

アメコさん、こんにちは。
テコ入れはかなりの改稿みたいですね。
両方読めれば一番いいんだけど…^^;
ロリコンお兄さんは好き嫌いがありそうだけど
ふたりが楽しそうにしていたから自分的にはオッケーでした。
なっちゃんがすごくかわいかったです。 ←危ない^^

しんちゃん:2008/08/23(土) 12:12 | URL | [編集]

こんばんは。
しんちゃんのレビューみて驚きました。
文庫だと「バイバイラジオスター」が「ハロー」になってる!!!
「日傘のお兄さん」はハラハラしたけど
あっち側に転がっていかなくてよかったって思いました。

なな:2008/08/23(土) 21:28 | URL | [編集]

ななさん、こんばんは。
主人公の名前は同じですが、性格が異なるそうです。
別作品に様変わりしているみたいですよ。
お兄さんは寸止めでしたね。個人的には行ってもいいかな~。←黒好き

しんちゃん:2008/08/24(日) 19:50 | URL | [編集]

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「日傘のお兄さん(文庫)」豊島ミホ


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「日傘のお兄さん」豊島ミホ


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