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「花鯛」明川哲也
花鯛
(2008/07)
明川 哲也
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表題作の「花鯛」「オニカサゴ」「寒平目」「甘鯛」の四編を収録した釣り小説。
「花鯛」
離婚した妻のもとで暮らす娘が突然訪ねてきた。そして、年に一、二度しか会えない娘が、釣りに行こうと誘ってくれた。花鯛の桜鍋が食べたいと言って。まったくもって、ひどい釣りになっていた。這い上がってくるものを抑えようと、治彦は喉から下に向けて念力を送り続けた。目尻が熱くなる。この海。このうねり。気の毒なのは娘だった。娘の奈緒は甲板でひしゃげていた。奈緒は今日が船釣りデビューなのだ。釣りの真似事をしていたのは最初の十五分ほど。それからはずっと青空と対峙していた。
「オニカサゴ」
つくづくやっかいな子だ。覚えたひとつのことをずっとべらべらしゃべり続ける。その言葉を抑えられない少年を手で制し、釣り用ベストから今日何度目になるかの携帯を取り出した。いずれもすぐに留守電に切り替わってしまう。また良太は一人でしゃべり始めた。その良太の父が現われぬまま、船が護岸を離れていく。狙うオニサゴには毒針があって危険。その面倒な釣りに、この少年と来てしまった。良太に釣りの醍醐味と、捌く魚料理を教えたのは文彦だ。その良太は、片思いに終わった玲子の息子だった。
「寒平目」
康夫は舳先の様子を伺った。何度も見た。どういうわけでお前がそこにいるんだ。俺はわざわざ船まで替えたんだぞ。頼む、船酔いでもしてキャビンに消えてくれ。康夫に念を送られたその男は、左手で竿を構え、右手で顎ひげをつまんでいた。銀一。俺はどうしても今日はヒラメを揚げなきゃいけないんだ。邪魔をするな。もう昔のように付き合えないんだから。中学時代の同級生だった銀一はトラブルメーカーだった。どういうわけか銀一に接近され、仲間だと思われてとばっちりを受けていた。
「甘鯛」
父親が若くして去り、秀夫が上京するまで母一人子一人でやってきた。その母親も七十歳になり、父と三人で食べたグジをもう一度食べたいと言ったので、早朝の海にやってきた。甘鯛は初めてで要領がわからない。ええって。どうってことないって。秀夫は昨日も同じ言葉をつぶやいていた。なんでこんな女と結婚したんだろう。自分の母親に冷たい態度を取るこの女は誰なんだろう。もちろん、妻のみが悪いのではない。母親の毒舌も、自分のふがいなさも疲れる状況につながっていた。ええって。どうってことないって。
人生につまずいた気弱な男たちが、一発逆転を狙って海にでた。こいつを釣りあげれば、オレの人生変わる! という帯の文句があったが、そんなに大層なお話ではない。読み始めは海に出た四人の男たちにイラッとくるのだが、次第にそれぞれの人間ドラマにのめり込んで、ラストではほろっときてしまう。以前、この作家によるカラスの物語を読んだことがあるが、自分がカラス嫌いなので夢中になることはなかった。ただその時は泣ける要素があるとは思った。今回は人間の物語なので、そういう弊害はなかった。というか、すごく面白かった。世界観に引き込む力が非常に強く、とくにオチが素晴らしかった。すこし捻くれたストーリーをものの見事にオトしている。この作家は、メジャーではないが、すごいのかも。
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2008年08月30日 |
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【花鯛】明川哲也著
私自身は釣りはやらないし、なったことがない。しかし、この本の中の釣りの場面では、手に汗握ってハラハラしながら読んだ。釣り。意外に、短気な人が釣りをするのが好きだとか聞いたことがある。果たしてどうなのかはわからないのだが。まあ、それとして、この中の短編4...
| 2009.03.29 18:49 |
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