--

--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

スポンサー広告
トラックバック(-)  コメント(-) 

    2008

09.03

「ジョナさん」片川優子

ジョナさんジョナさん
(2005/10)
片川 優子

商品詳細を見る

あたし、大学行かないから。トキコは唐突に宣言した。高校二年の夏休み。私ことチャコはほかの高二生と同じく、周りからじりじりと圧迫されて過ごした。私はただただ机に向かった。心にあるのはどうしようもない焦燥感のみ。未来への期待なんてものはもちろんどこにもない。そんな夏がやっと終わって、正直ほっとしていた私を襲った、トキコの受験離脱宣言。はっきり言って私よりも成績のいいトキコの言葉は、予想以上に私にダメージを与えた。

ワン。家族は、日曜日は特に、誰も散歩に行きたがらない。そこで毎回毎回いちばん権力の弱い私に白羽の矢が立つ。いってらっしゃい。お母さんは振り返らずに言った。散歩に出かける私とこの犬を見たくないのだろう。目的地も、そこに行く理由も知っている。家族全員が知っている。そこはゲートボール場だった。おじいちゃんは、ゲートボールが好きだった。毎週日曜日には必ずここに来て、楽しそうに試合をしていた。この犬、大次郎と一緒に。

大次郎はおじいちゃんがある日突然拾ってきた犬だ。名付け親も当然おじいちゃんだった。でも今、家族の誰もこの子のことを大次郎と呼ばない。そう呼んでいた唯一のおじいちゃんは、半年前に死んでしまったのだから。それなのに、この子は今でも毎週日曜になるとここに来たがる。そして、試合が終わるまでずっと見ているのだ。

そこに突然、後から声をかけられた。なんだか異様にかっこいいお兄さんが立っていた。犬の名前を聞かれ、次の瞬間その人と目が合って、正面から正視しても余裕でかっこよくて、私は思わず言っていた。ギバちゃん。かっこいいお兄さんは吹き出した。大爆笑だった。大次郎ことギバちゃんは、ギバちゃんにそっくりなのだ。つまり、柳葉敏郎に。その人はギバちゃんをなでている。私はあっさり恋に落ちてしまった。名前を知らないその人を、ジョナさんと名付けた。

主人公の少女は、もうすぐ受験生という先が見えない不安を抱えている。それに加え、おじいちゃんが亡くなるまでの一年間続いた介護疲れが、欠陥だらけの家族を作ってしまった。学校では親友のトキコと衝突するも、本心をぶつけ合うことはなかった。そこにジョナさんと出会ったことで、見ないように閉じ込めていた感情と向き合うことになり、自分の未来を、大人になることを見つめ直す。若さゆえの青さが痛い。だけど瑞々しい。

これぐらいの年代の頃って、この少女たちのようにしんどい日々を送るか、まったく逆でお気楽に過ごすか、人それぞれだと思う。自分は後者だったので、薄暗闇の中にいる少女たちを興味深く読むことができた。それに老人の介護については、当事者にならない限り大変さは理解できない。自分の場合、祖母がそうだった。だから、亡くなったことに対してほっとするという気持ちは分かるのだ。

ただ、容姿のことしか見えてこないジョナさんのことや、世間の目が厳しい母子家庭のトキコのことや、理解のない大人のことなど、書ききれていない部分があって、改善点がいくつか思い浮かんでしまうのだが、作品としてはふつうに読むことができた。そんな中で、一服の清涼だったのがいつもクールなギバちゃんだ。とにかく無愛想な犬で、鳴き声のワンだけでなく、もう少し動きの音が欲しかったけれど、動物が出てくると何故だか癒されてしまう自分がいた。

デビュー作も読んではいたが、この作品は主人公と同じ高校二年生のときに執筆したものらしい。だから所々に若さが見える。しかしすごいとも思う。そこから出版の間隔が長く開いているようだが、もうすぐ三冊目の新刊が出るみたいだ。作者が二十代になって、どう成長しているのかが楽しみである。

ポチッとお願いします。その一つが励みになります。 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

片川優子
トラックバック(0)  コメント(0) 

Next |  Back

comments

コメントの投稿











 管理者にだけ表示を許可
trackback
この記事のトラックバックURL

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。