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    2008

09.07

「宿屋めぐり」町田康

宿屋めぐり宿屋めぐり
(2008/08/07)
町田 康

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執筆7年。新たな傑作長編小説の誕生!主はいつも言っていた。「滅びにいたる道は広く、光にいたる道は狭い。おまえらはいつも広い道ばかり行こうとするが、それは天辺から誤りだよ」 主の命により大権現へ大刀を奉納すべく旅をする鋤名彦名は、謎のくにゅくにゅの皮に呑まれ、「偽」の世界にはまりこむ。嘘と偽善に憤り真実を求めながら、いつしか自ら嘘にまみれてゆく彦名の壮絶な道中。その苦行の果てに待ち受けるものは。俺は俺の足で歩いていくのだ。俺の2本の足で正しい道を。《出版社より》

謎のくにゅくにゅの皮に呑まれた主人公は、現実の世界に戻れるかわからないまま、とりあえず太刀の奉納に行く過程を重んじて歩き出す。男はいわれのない誤解を受けては僧を殺し、気が狂った女郎のとばっちりで警官を殺してしまい、しゃぶ中が暴れたのを自分のせいにされて全国の博徒の間に廻状が回った。いわゆる凶状持ちになってしまうのだ。

この男には独り言の癖があり、思考がだだ洩れゆえに、出会った珍太や石ヌにたばかられ、恥辱にまみれ、時に義憤に駆られ、やってこますと決意をするが、凶状持ちという世間に言えぬ負い目もあり、結局は諦めてしまう。弱い者には強くなれるが、基本姿勢は逃げである。これは嘘の世界かもしれないという感覚を持っているがゆえに、不真面目な行動に甘んじてしまうのだ。

そして男は騙され続けるうちに、自分の保身から、こんな奴に本当のことをいう必要なないと思うようになり、口から出任せに答えるようになる。偽名を語っては、嘘に嘘の上塗りを繰り返し、悪気はないのだが、それがドツボに嵌まってしまうのである。時に奴僕、時に芸人、望むと望まないに関わらず、生き残るためにしたこと。自分ではそんなつもりではなかったのだが、世間を震撼させた世紀の大悪党みたいなことになってしまうのだ。

犯罪者扱いされ、狂人扱いされ、官憲と博徒に追われ、身に覚えのない濡れ衣を着せられて、生きているだけで負いきれぬ罪状が積み重なっても、それでも太刀奉納という目的に向かって邁進する。それは何故か。とにかく男は主が恐ろしかった。主に逆らうとなにをされるか分からないからだ。だから男の行動原理はただひたすらに、主に怒られないようにすること、だった。

この男にとって、主とはなにか。救ってくれる人だろうか。雇ってくれる人だろうか。言い訳の道具にする人だろうか。それとも試す人だろうか。絶対の神様なのか。自分は主に選ばれてこの世界にやって来たのだろうか。しかし男は主の命令を自分の都合のよいように解釈して、自分が楽なように、自分の快楽に忠実に、自分が発揮できるように行動する。

鶏が先か卵が先かではないが、この呑まれた世界は嘘ばかり。そして本当のことを言う正しい人は、みな殺される。そんな正しい人たちを見殺しにし、その銭を奪い、また宿屋から次の宿屋へとめぐっていく。煩悩を持て余し、世を恨みながらあがく卑小で哀れな男による、壮絶で切実な自分探しの漂泊の旅だ。これは人間の普遍を描いた作品のような気がしてきた。この感想はあながち間違いではないだろう。

町田さんのサイン会に参加しました。

Image234_r1.jpg

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comments

こんにちは。
いや~、大作でした。
主人公が犯罪者になってしまうところもすごいけど、主が残虐なのにびっくり。
偽の世界で起きる不思議なできごとがメインの話かと思っていたら、人生についても語っていて奥の深い話だったんですね。

mint:2008/09/24(水) 11:00 | URL | [編集]

mintさん、こんにちは。
主はえぐかったですね。ああまでするかとビックリです。
それに奥が深すぎて、読み取ることができたかわからないです。
なんにしても重かった。

しんちゃん:2008/09/24(水) 13:28 | URL | [編集]

サイン会ですか。町田さんを目の前にしたら何を喋ってよいのか分からなくなりそうですね。あの眼光で射ぬかれたら、それこそ主を相手にしてる気分になりそうです。

たまねぎ:2008/12/19(金) 21:47 | URL | [編集]

たまねぎさん
いや~、サイン会は緊張しますね。いつまで経っても慣れません。
それにしても謎の多い作品でしたね。自分たちにも主はいるのでしょうか。

しんちゃん:2008/12/20(土) 21:36 | URL | [編集]

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