2008

ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)
下町のフレンチレストラン、ビストロ・パ・マルのスタッフは四人。二人の料理人はシェフの三船さんと志村さん、ソムリエの金子さん、そしてギャルソンの僕。気取らない料理で客の舌と心をつかむ変わり者のシェフは、客たちの持ち込む不可解な謎をあざやかに解く名探偵。
近所の田上家のスキレットはなぜすぐに錆びるのか? しっかりしたフランス風のパンを売りたいとはりきっていた女性パン職人は、なぜ突然いなくなったのか? ブイヤーベース・ファンの新城さんの正体は? ストラスブールのミリアムおばあちゃんが、夢のようにおいしいヴァン・ショーをつくらなくなってしまったわけは?…… 絶品料理の数々と極上のミステリーをどうぞ!《本の折り返しより》
いつもなら個別に内容紹介をするが、これだけしっかりした紹介があれば十分でしょ。
シェフが軽い気持ちで野良猫に餌をやったら、ビストロ・パ・マルの料理に味を占めた猫は、毎日、店の厨房口に座り込み、にゃあにゃあと鳴いて、餌の催促をするようになった。家で四匹も猫を飼っているという猫好きの志村さんがそのことに激怒。猫に餌をやるということは、その猫に責任ができる。よって責任をとりなさい、というわけで、ビストロのレジ横に、「猫をもらってください」の貼り紙が貼られた。この冒頭のエピソードは本当にそうだと思う。猫おばさんって無責任なところがあるから。
さて、感想。「錆びないスキレット」では猫に対する息子の行動はどうかと思い、「憂さばらしのピストゥ」では陰険な悪戯をする店なんて潰れろと呪詛し、「ブーランジュリーのメロンパン」では頑ななパン職人の雪解けにほろっときて、「マドモワゼル・ブイヤーベースにご用心」では動揺するシェフがかわいくて、「氷姫」では主人公の僕が切なくて、「天空の泉」ではシェフってキザだな〜と思い、「ヴァン・ショーをあなたに」では外人との気質の違いが上手く盛り込まれていた。
恥ずかしいけど今更ながら本書で知ったことがある。フレンチの味の基本がバターで、他にもクリームやチーズが使われているということだ。三船シェフは親切に対応してくれていたが、乳製品嫌いの自分はますますフレンチとの縁がなくなった。というか、そもそもラーメン店が常連で、チャーシューを乗せるか値段で迷うという時点で縁がないのかもしれない。しかし謎のヴァン・ショーだけは一度味見がしてみたい。どんな香がするのだろう。
それと前作を読んだときに思ったのが、無理やりミステリじゃなくてもいいかな、ということだ。すると今回はミステリ度がどんと低くなっていた。まったくの個人的な思いでしかないが、これには高評価を与えたい。あともうひとつ比較になるが、あのオーナーシェフだとか、女性シェフだとか、ビストロ以外の人物が少しビターかもしれない。だけど、スタッフ四人が見せる一面はニヤリだった。シリーズ三冊目にも期待したい。
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