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    2008

09.14

「波打ち際の蛍」島本理生

波打ち際の蛍波打ち際の蛍
(2008/07/31)
島本 理生

商品詳細を見る

かつての恋人によるDVで心に傷を負い、未だ覚めやらぬ悪夢に怯え続け、時に大声で泣き出しそうになり、気をゆるめると不気味な黒い影が自分を呑み込みそうになる。川本麻由は、家とカウンセリング専門の相談室を行き来する日々を送っていた。ある日、通院先の待合室で出会った、ひと回りも年上の穏やかな男性、植村蛍に次第に惹かれていく。だけど、過去の記憶に囚われ、前に進むことができない。募る想いと拒絶する身体。その狭間で狂おしく揺れながら、失っていた強さを取り戻していく彼女が求めた恋愛の形とは。

麻由がDVによって男性不信に陥ってしまったのは、自分が悪いから自業自得だと思っている。もっと早く逃げ出すことができた。でもしなかった。そんな関係を続けたのは自分の責任だと。そして今も離れられない苦しい過去の経験に囚われ、恋をしたら、また暴力されるのではないかと恐れている。その気持ちと共に、好きな人に嫌われたらどうしようとか、自分とは違う穏やかな女の子を好きになったほうがいいとか、好きという自分の気持ちに気づくと、次の場面ではやはりダメというように、たえず感情が揺れているのだ。

痛くて暗くなりそうな設定の作品だけど、人を好きになるという上向きの気持ちがあるからか、思ったほど苦しくはなかった。麻由のように極端な過去ではないにしろ、誰だって苦い経験はあるだろうし、封印してしまいたい事柄は抱えている。それは年齢を重ねれば重ねるほど増える場合がふつうであって、結婚というキーワードもからんできて、それゆえに、次の一歩に慎重になって踏み出せないということがある。そういった新しい出会いがあっても、好きイコール恋愛へと、容易に前に歩み出せないもどかしさに共感することができた。

静かだけどひりひりとした空気の中で、急にほわんと温かな空気に切り替わる場面がある。それは麻由の従兄弟であるさとる君であり、蛍の友人である揚げ物好きの紗衣子さんであり、元同僚で仕事に誘ってくれる楠本さんである。さとる君は麻由の過去をすべて知る人物で、あまり詳しく書いてしまうとあれなんだけど、頼れて、リラックスできて、無償の愛の人だけど、麻由が現在から変われるという人物ではない。これが好人物ですごくもったいない。だけど、それは恋愛ではなく、変われるかもしれない人物は蛍だった。

どこまでも優しくて、大人の鷹揚さも兼ね備え、その一方で、別れた彼女と友達になって遊んだりする大馬鹿野郎で、嫉妬に疲れるし、度々ボディタッチをしてくるので、その都度固まって耐えることを強いられる。だけど、好きになってしまい、この人なら違う世界に行けるかもという薄い予感がする麻由。正直にいうと、この蛍のようなタイプの男は好きではない。すぐに麻由の頭に手を置く曲者だからだ。というか、羨ましい。自分が恥ずかしくてできないからだ。(おい)

ますますきれいな文章に磨きがかかり、感覚も研ぎ澄まされているように思えた。重いテーマを重く感じさせないという筆致力も秀逸。すべてが解決するわけではないが、未来に明かりが見出せるラストには、じーんときて、優しく温かな気持ちになることができた。

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島本理生
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comments

こんばんは。
さとる君が一番でしたが、紗衣子さんも楠本さんさんも素敵な雰囲気でしたね。
頭に手、これはいくつになっても嬉しいものです。
しんちゃんも「ポン」とおいてみましょう!

なな:2008/09/14(日) 20:48 | URL | [編集]

さとる君はとても素敵な人でした。
頭に「ぽん」と手にしてみてください。
女はその人がよほど嫌いな人でない限り(笑)
嬉しいと思います。

Yuki:2008/09/15(月) 08:32 | URL | [編集]

ななさん、こんにちは。
紗衣子さんも楠本さんも空気を和らげましたね。
でも一番はさとる君でしょう。
頭に手は…ね(苦笑)

しんちゃん:2008/09/15(月) 11:53 | URL | [編集]

Yukiさん
もう、Yukiさんまで(汗)
硬派がカッコいいと思われた時代の人よ。
やりたくても人間中身は変えられない。

しんちゃん:2008/09/15(月) 11:58 | URL | [編集]

こんにちは♪
本当に島本さん、いい感じで進化してますよね。
目が離せません~

アタマに「ポン」は・・・私はちょっとひいてしまうかも(汗)
私も硬派がカッコいいと思う世代なのかな。

時と場合にもよりますが、麻由には、ちょっときついですよね~

EKKO:2008/09/15(月) 15:13 | URL | [編集]

EKKOさん
島本さん、順調に作風を広げていますよね。
アタマに「ポン」はダメ派ですか。というか何故この話題ばかりなんだ!?
麻由にすれば毎回、固まる苦行でしかなかったですね。

しんちゃん:2008/09/16(火) 12:58 | URL | [編集]

はじめまして。
私も「波打ち際の蛍」を読みました。
文章に透明感があって、良いなと思いました。
DVなど、重い内容もあるのに、文章が綺麗なので安心して読める感じでした。
麻由の「好きなのに、でも怖い」という思いがリアルに描かれていましたね。
そんな麻由を優しく受け止めてくれる蛍、良い男だと思います。
この二人ならこの先うまくやっていけるはず、と思いました☆

はまかぜ:2008/09/24(水) 22:06 | URL | [編集]

はまかぜさん、はじめまして。
その通りですね。安心して読めるようになりました。
デビュー当時は、唐突な性描写があったりと、危なっかしさがありました。
それが感情だけで読ませる筆致を得た今、安定感が出てきました。
この作家さんには、さらにもうひとつ上に行って欲しいですね。
希望の持てるラストにも好感でした。

しんちゃん:2008/09/25(木) 12:16 | URL | [編集]

繊細で優しい物語でした。

頭に「ぽん」は私、嬉しいです。やる人はやたらやりますよね。そんなにいない?のでドッキリします。(なんの話や)

さとる君がえらいええ子で良かったです。恋愛関係にならないところが安心できたんでしょうねえ。もったいない気も。

ちきちき:2008/09/30(火) 21:35 | URL | [編集]

ちきちきさん
頭に「ぽん」、やる人はやたらやります。
女子でもいますよね。やたら背中をバシバシ叩く人。
勘違いするんだよなあ。タッチは(笑)

さとる君はほんともったいない。
蛍に魅力を感じなかったので、益々その思いが^^;

しんちゃん:2008/10/01(水) 11:58 | URL | [編集]

本当透明感のある優しい物語でしたが、やっぱり島本さん、ダメ男路線ですよね。まだ元彼がリアルに登場してこなかったところはよかったですが。
希望あるラストだったのがよかったです。
個人的にはさとる君が最高です。

masako:2008/10/04(土) 20:38 | URL | [編集]

masakoさん、こんにちは。
ダメ男に母子家庭はもう定番みたいですね。
希望あるラストというか、簡単に解決しないところが良かったです。
さとる君、いい男でしたね。

しんちゃん:2008/10/05(日) 16:18 | URL | [編集]

麻由が人を好きになる気持ちまであきらめないでいてくれてよかったです。先は長いかもしれませんが、きっと上手くいく、そう信じたくなるラストでした。願望も入ってるかもしれませんが。

エビノート:2008/10/19(日) 01:37 | URL | [編集]

エビノートさん
先は長そうでしたね。でもこの二人なら大丈夫でしょう。
傍にはさとる君もいることだし。
リハビリの第一番は頭にポンからかな。

しんちゃん:2008/10/19(日) 15:39 | URL | [編集]

しんちゃん~ようやく復活です!
TBもどどどっと一気にお返ししちゃったけど、今更でごめんね。

島本さんのこの作品はとても良かったー。
不器用ながら歩もうとする2人の姿にじんわりしちゃいました。
島本さんの丁寧なたおやかな文章が相まってさらにさらに素晴らしくしていましたわ。
若い2人、母親の気持ちで読んでました(笑)

リサ:2008/11/26(水) 18:19 | URL | [編集]

リサさん
TBがどどどっと来ても、自分は痛くも痒くもないです。
すでに飛ばし済みなので。

母親の気持ちですか。自分はどうだったかなあ。
ただの野次馬だったかもしれません。
こっちの方がお得物件なのに、何故そっちへと。

しんちゃん:2008/11/26(水) 20:09 | URL | [編集]

>すぐに麻由の頭に手を置く曲者だからだ
のところで思わず笑ってしまいました。そしてそこに突っ込む人が多いことにも(^u^)

蛍は元彼女と誕生日に出かけたり、信じられないことをやらかしてますけど、それでもさとる君みたいな人じゃなくて蛍なんですよね・・。
DV男が許せなかっただけに、麻由にはどうにか幸せになってほしいと心から思わずにはいられませんでした。

june:2009/03/28(土) 21:23 | URL | [編集]

juneさん
頭にポンで遊ばれました(笑)
蛍には残念ながら魅力を感じませんでした。
それでも蛍なんですよね。
さとる君、おすすめなのに...。

しんちゃん:2009/03/29(日) 18:36 | URL | [編集]

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