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    2008

09.28

「長い終わりが始まる」山崎ナオコーラ

長い終わりが始まる長い終わりが始まる
(2008/06/26)
山崎 ナオコーラ

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小笠原は二十三歳の大学四年生。おかっぱの髪を茶色に染めていている女の子だ。彼女が所属するマンドリンサークルには、後輩に対して「教育」という言葉を使って、人間的な成長を促そうとするような向きがある。全員が、十八歳以上の大人で「教育」だなんて、ばかだ、と小笠原は思っている。そして、サークルの運営の仕事を上手くこなせない人のことを、「使えない奴」と呼ぶ。小笠原はまさに、「教育」の対象になったり、「使えない奴」といわれたりしてきた。みんなに役立つようなことをひとつもしなかったし、スタンドプレーが多かったから。

サークルで一番弾けるマンドリニストになった、と小笠原は自負している。周りからもそう言われてきたので、いい気になっていた。自信があった。だが、結局のところは、コンサートマスターなどの重要人物になることはできなかった。自分がコンミスだったら、演奏をよりハイセンスなものに仕上げられたはずだ。しかし、みんなはそれを望んでおらず、音楽を極めることよりも、仲良く「友だち作り」をしたあと「思い出作り」をするのが目標なのだ。みんなと意見が合わないのだから、さっさとサークルをやめて、もっと有効に青春を使えば良かった。でも、サークルから必要とされていなくても、小笠原にとってはサークルが必要だった。

田中だけは違うと思う。音楽をやりたいはずだ。人づき合いの仕方が幼稚極まりないので、頭がおかしいのではないか、と小笠原はときどき思ったけれど、小笠原の目には田中のそんなところが好ましく映っていたのだった。だから、尻込みする田中を飲み会や遊びに強く誘ってきた。そして、ことあるごとに、「大好き!」と伝えてきた。小笠原が、好きだ、と言うと、田中は、うん、うん、と流すだけだったが、親友と言えるぐらい、二人は仲が良くなった。

田中と合奏を作りたかった。合奏だけがデートのようで、田中の指揮棒に集中して、求められる音を出すのは快感だった。将来に繋がる就職活動よりも、先のないサークル活動に力を注ぐばからしいこととは、小笠原には決して思えない。恋人ではない男の子と音楽を作ることが、ストイックで刹那的で、高潔な活動で、今しかできない大事なことなのだと思っていた。そういったふつうの日常を描いた青春小説。

「カツラ美容室」ではあれれ?と思ったけれど、これはすごく良かった。性格的にぶきっちょな女の子が、サークル内でうまく人間関係を作ろうとせずに、だけどみんなのやることが気に食わないので、ぶちぶち文句を垂れている。他人にぶつかって他人を傷つけ、自分も傷つくひねくれ者で、はっきり言ってダメな女子なんだけど、彼女の言動行動にハラハラして目が離せない。そんな彼女にも、気づかってくれる後輩が数人いて、そういった後輩が登場するたびにぐっとくるのだ。彼女が想う田中という男は一言でいえばヒキョウな奴なんだけど、なぜか女子からはモテ男だ。男から見ると、モテ要素があるとは思えないけれど、こういう子供っぽいのが母性をくすぐるのだろうか。

そんな恋に、人間の集団に、小笠原の心が揺れに揺れたサークル活動も最後の演奏会が終わった途端、急に気持ちがドライになる。その直前に、自分の言葉が相手を傷つけていたと気づき、相手にも心があるということがわかる。ここで大いに反省するような素直な女子ではないが、少しは世間を見る視野が広がったことだろうと想像する。そして好きで報われなかった恋の相手、田中の人間としての小ささにやっと気づいた彼女は、どこまで行っても始まりはしない恋愛、最初から終わっている恋愛に、自分で自分に終止符を打つのだ。だからこそ、「長い終わりが始まる」という作品タイトルなんだろう。


よく買うなあ。サイン本です。

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長い終わりが始まる (講談社) 山崎ナオコーラ souiunogaii評価 内容紹介 サークルとは、世界のことだ! 大学4年生の小笠原は、マンドリンサークルに入っている。 未来になんて興味がなく、就職活動よりも人間関係よりも、趣味のマンドリンに命をかけている。そして、

2009/03/20(金) 13:27 | そういうのがいいな、わたしは。(読書日記)

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