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    2008

09.29

「夏のくじら」大崎梢

夏のくじら夏のくじら
(2008/08)
大崎 梢

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高知は父の郷里だ。市内の山側に祖父母の家がある。東京近郊に生まれ育った篤史にとって、遠く離れた田舎であり、これまでは手土産をぶら下げて訪れるよその土地だった。けれどこの春、高知大学にめでたく合格してからは、状況ががらりと変わった。もうお客さんではなく、りっぱな住人だ。店舗の壁に貼られたポスターに目がとまった。去年のよさこい祭りのポスターだ。今や全国に散らばったよさこい祭りは高知発祥の参加型祭りで、神仏に一切関係がないという特異なルーツを持つ。

篤史は従兄弟の多郎に誘われ、クラブチームと呼ばれる個性的なチームのひとつに参加した。四年前のことだ。元来口べたで無愛想な自分に、うちとけられる人ができるとは思えず、ましてよその土地の知らない人間関係の中だ。とにかく一生に一度の挑戦。ひと夏の脱線。自分に言い聞かせ、事実、そうなるはずだった。いい思い出なんて何もなかった。忘れてしまいたいことがあるだけだ。ふたたび祭りに関わる日が来るなど、思いもしなかったのだ。

従兄弟の多郎は、よさこい祭りに参加しないかとしつこい。ただの参加ではない。しばらく途切れていた町内会チームが今年、復活するので、そのスタッフとして手伝いに加わらないかというのだ。多郎はずっと気に病んでいたのだ。四年前、篤史をむりに誘ったのに、自分は学校の友だちを優先したことを。篤史はそれがふつうだと思っていた。むしろ人付き合いの苦手な自分をわかってくれて、むりやり輪の中に入れようとしないのがありがたかった。責任を感じるのは自分の番だった。

すっごく面白かった。だけど、みそがつく部分があったので、先に書いておく。篤史のよさこい祭りから逃げる理由は不自然。このネタ振り部分は違和感ありありだった。まあ、そういうおかしな部分はあるが、六年ぶりに復活した鯨井町踊り子隊のスタッフに参加してからは、文句なく楽しむことができた。あっ、そうそう。約束を交わした女性の正体も、早い段階で気づいてしまった。

この作品は、祭りの魅力に尽きると思う。よさこいはいやでも人に関わる。知恵を出し合い、力を出し合い、ときに譲って、ときに争う。そうやって同じ時間をみっちり共有し、本番では苦楽を共にした仲間との一体感を味わう。何もないところから準備が進められ、こつこつと作り上げていく。そしていざ迎える八月十日と十一日の本番。これはもう、だらだら書いても何も伝わらないので、とにかく読んでくれって感じ。

チームリーダーの月島、サブリーダーの三雲、無愛想で取っつきの悪い看板のカジ、クイーンを目指す綾乃、三雲に好意をよせる志織、そして、従兄弟の多郎。彼ら仲間に魅力があって、高知人の大らかさが気持ち良くて、祭りを通してひとつになって、そして無心になって弾けて…。とにかく気持ちいい。本をぱたんと閉じて、ことんと置いた途端、「よさこい祭り」をネット検索していた。よさこい、サイコー。

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大崎梢
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comments

こんにちは。
よさこいの魅力がたっぷりと語られた本でしたね。私も本を閉じた後、ネットでよさこい祭りを検索してしまいました。
私の住む街の今年のよさこい祭りは大雨の中やってました。その時には「こんな寒い雨の中ご苦労な事です」と思ってたんだけど、今なら納得です。
約束を交わした女性の正体。わかっちゃったんですね。すごい!

なな:2008/09/29(月) 15:37 | URL | [編集]

 「約束を交わした女性の正体」、どうして分かっちゃったんでしょう? 伏線みたいなものはありましたっけ? ミステリーじゃないという先入観で読んでたので、まったく気付きませんでした。

 みんなやりますよね。>、「よさこい祭り」をネットで検索。(^^;
 でもって、こんなにあるのか~!?とびっくりでした。

higeru:2008/09/30(火) 00:33 | URL | [編集]

ななさん、こんにちは。
よさこいを見たことがなかったので、検索、検索。
謎だった地方車ってデコトラやんか(笑)
ななさんは近くで見れていいな~、と指をくわえる。^^

正体はわかりたくないんだけど…。

しんちゃん:2008/09/30(火) 12:30 | URL | [編集]

higeruさん
野生的な勘?なんでしょうか。あっ、この人なんかありそうって。
高知で何故あの地名が出るんだ、と引っかかっていたら…。
そんなところで普通は引っかからないですよね^^;

検索、記事も多いが画像も多い(嬉)

しんちゃん:2008/09/30(火) 12:40 | URL | [編集]

しんちゃん、すごい!私最後まで正体想像もつきませんでした。
でも、大崎氏らしい思わせぶりっていうかまわりくどさはありましたよね。
よさこい参加渋る理由も、高知へ来た理由も少し弱い気もしますが。
それに、男性を書きなれてないのか、ちょっとキャラの固さ(文章かな?)が気になりました。

じゃじゃまま:2008/10/11(土) 21:44 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
不自然な部分や、ミステリがどうこうよりも、よさこい祭りの熱気。
この祭りの場面すべてがすごく良かったです。
個人的な意見だけど、この本は大好きでした。

しんちゃん:2008/10/12(日) 11:51 | URL | [編集]

こんにちは。
楽しい話でした。
よさこい祭りって高知が本家だったんですね。
この本を読むまで知らなかった~。
スタッフや踊り子たちの祭りへの熱意もわかる気がします。
祭り当日のところは描写がリアルでその場にいるような気になりました。
祭りの雰囲気っていいですねぇ。

mint:2008/10/14(火) 11:40 | URL | [編集]

mintさん、こんにちは。
よさこい祭りの存在すら知りませんでした。
この本を読まなかったら知らないままだったかも。
一から作りあげていく一体感みたいなものが良かったですね。
お祭り男じゃないけれど、そんな祭り気分に浸れました。

しんちゃん:2008/10/14(火) 12:18 | URL | [編集]

読んでいる間、うろ覚えのよさこいのメロディーと踊り子さんの姿が頭の中に浮かんでました。すごく楽しかったです~。できれば実際に見てみたいなぁ。

エビノート:2008/10/20(月) 19:52 | URL | [編集]

エビノートさん
なんとなくだけど、よさこい祭りを知っているのですね。
まったく知識がなかったので、それだけでも羨ましいです。
ほんと、実際に見たいなぁ。

しんちゃん:2008/10/21(火) 12:16 | URL | [編集]

大崎さんの小説を読むのがこれがはじめてでしたが、ミステリーよりこのような青春小説が向いている気がしました。

この本と全く関係ない質問ですが、しんちゃんは商店街の祭りのようなものには参加したことがないのでしょうか?

リベ:2008/11/11(火) 22:12 | URL | [編集]

りべさん
へー、これがお初でしたか。すでに書店シリーズを読んでいると思っていました。
確かにミステリに難があるので、この人はそうかもしれません。(偉そう)

祭りとは、とんと縁がありません。商店街は近くにありませんので、だから神社の縁日ぐらいかな~。大阪で有名な天神祭りも一回しか行ったことがないし。

しんちゃん:2008/11/12(水) 11:42 | URL | [編集]

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