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    2008

10.05

「天使のナイフ」薬丸岳

天使のナイフ天使のナイフ
(2005/08)
薬丸 岳

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桧山に来客があったのは、埼玉県警の三枝利幸と若い長岡刑事だった。久しぶりに会った三枝は桧山に四年という歳月に改めて感慨を持たせた。自分はこの男に礼のひとつも言っただろうか。そんな当たり前のことに思いを向けることもできないほど、あの頃の桧山は、怒りと憎しみで猛り狂っていた。生後5ヵ月の娘の目の前で妻の祥子は殺された。ほんの少しだけでもこの絶望を緩和してくれる特効薬を欲っしていた。その特効薬は犯人の逮捕以外にはなかった。祥子を殺した犯人に、それ相応の報いを受けさせるということだけが、祥子や自分にとって、せめてもの慰めになるのだと思っていた。

犯人は捕まった。だが、逮捕はされなかった。捕まったのは中学一年の三人の男子生徒。刑法四十一条には十四歳に満たない者の行為は、罰しない、とある。十三歳の中学生に刑事責任能力がなく、補導による保護でしかない。彼らはその年齢から、罪に問われることはなかった――。三枝は一息入れて、おもむろに言った。少年Bが殺された。桧山はその言葉の意味を反芻して、ようやく彼らの来意を理解した。騙されていた。目の前の人懐っこそうな表情に。四歳になる愛美のことを心配する素振りに。彼らはただ、桧山のアリバイを確認に来ただけなのだ。桧山は、戦うことよりも、娘の愛美との平穏な日常を取り戻すことを選択していた。

愛美と楽しい日々を過ごしたい。だけどその前に、どうしても確かめなければならないことができた。あの事件からもうすぐ四年だから、彼らは十七、八歳になっている。彼らは更生できたのか、できなかったのか。彼らのことが知りたいと思った。彼らは施設の中でどんな生活を送り、どんなことを考えてきたのだろうか。社会に戻ってきた彼らは、祥子を殺した罪をどんな風に感じているのだろうか。すでに過去の躓きとして忘却され、何事もなかったような日々を送っているのだろうか。裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、第51回江戸川乱歩賞受賞作。

とても重厚な作品ですごく面白かった。犯罪被害者と少年法という、問題点を論じられることが多いテーマを、被害者側だけでなく加害者の視点にもきちんと立って描き、贖罪について、更生について問うている。この少年法が抱えている問題は、思うことがあっても簡単に語り尽くせないものがある。加害者の人権と被害者の人権は対等なものとして扱われることなく、被害者の知る権利、感情というものを軽視しすぎていると自分は思う。だけど、偉い先生たちがいくら議論しても、問題解決というか妥協点すら見出せていないのが現状だ。

その少年法に守られ罪を問われなかった少年が殺される、というのが物語の始まりだ。その事件をきっかけに、次々と浮かび上がってくる秘められた過去の数々。社会派小説でありながら本格ミステリとして二重、三重の仕掛けが施され、ラストでは驚きのサプライズまで用意。見事なエンタテイメントに仕上げているのだ。この構成力はすごいとしか言いようがない。先に二作目三作目を読んでいて、この作家の力はすでに認めていた。そこに面白いと聞いていた本デビュー作品を読んだのだけど、ここまで水準が高い作品だとは思っていなかった。自分の想像を遥かに超えていた。何度も言うが、これはすごい。

あらためて、今後も読み続けて行きたい作家だと、強く思った。

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薬丸岳
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comments

こんばんは。
しんちゃんは2作目、3作目を読んでいるんですね。
>この作家の力はすでに認めていた
なんて書いてあると、やっぱり気になります。
私も読まなくちゃ。

なな:2008/10/05(日) 22:01 | URL | [編集]

こんばんわ。
二転三転する構成が、丁寧に作り込まれた感じで面白かったですね。
少年犯罪への、単なる断罪になっていないところも良かったです。
この作品がデビュー作なんて驚きますね。

ia.:2008/10/06(月) 00:36 | URL | [編集]

ななさん、こんばんは。
お気に入りの作家になりこれでコンプです。
といってもたった3冊だけど。
早く新刊がでないかなあ。次回作が待ち遠しいです。
ななさんも読もう読もう。

しんちゃん:2008/10/06(月) 19:31 | URL | [編集]

ia.さん、こんばんは。
構成力が半端じゃなく、すべてが新人離れしていましたね。
重いテーマに振り回されることのない、お見事な作品だと思いました。

しんちゃん:2008/10/06(月) 19:37 | URL | [編集]

薬丸岳さん、多作な方ではないかもしれませんが、1作1作良いものを書いてくれてますよね~。このデビュー作といい、2作目といい。
最新作はまだ読んでいないのですが、楽しみです♪

エビノート:2008/10/06(月) 20:06 | URL | [編集]

私はこの作品しか読んでないのですが、評価の高い作家さんですよね。
広告で見かけたりして気にはなってたんですけど、2作目、3作目無性に読みたくなってきました!

じゃじゃまま:2008/10/06(月) 21:45 | URL | [編集]

エビノートさん
テーマがしっかりとしているので、遅筆なのは仕方ないと思っています。
これからも読ませる作品を書いて欲しいですね。
「虚夢」も面白かったですよ。

しんちゃん:2008/10/07(火) 10:58 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
地味だけど乱歩賞作家では久々に当たりかも。
重いテーマのわりに読みやすいし。
他ニ作も面白いので、ぜひぜひ。

しんちゃん:2008/10/07(火) 11:01 | URL | [編集]

私もこの作品しか読んでませんでした。
2作目、3作目も出てたんですね。
私も読んでみよう・・。

june:2008/10/07(火) 22:10 | URL | [編集]

 お気に入り作家の中では唯一新人といっていい薬丸君、作品を出すピッチをもう少し上げてくれると嬉しいのですが。最近短編も読みましたが、次あたりは短編集も良いかも。

higeru:2008/10/08(水) 00:45 | URL | [編集]

juneさん
地味だけどデビュー作以外も面白かったですよ。
ぜひぜひ。地味??

しんちゃん:2008/10/08(水) 15:59 | URL | [編集]

higeruさん
お気に入り、いいよね~、薬丸さん。
ピッチが遅いのは本業があるからでしょうか。
おお、短篇集もいいですな。

しんちゃん:2008/10/08(水) 16:02 | URL | [編集]

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