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    2008

10.06

「三月の招待状」角田光代

三月の招待状三月の招待状
(2008/09/04)
角田光代

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充留のもとに、一通の招待状が届くところから物語は始まる。差出人は澤ノ井夫婦である。澤ノ井正道と坂下裕美子。大学の同級生で、そのころから交際していたから、十五年以上いしょにいることになる。とはいえ、別れてはヨリを戻し、別れてはヨリを戻して、三年前、あきらめたように結婚したのだ。そして離婚パーティー。カードにはわざわざ離婚式と書いてある。会費は要りませんとあった。離婚パーティーを機に、大学時代の仲間がリレーしていく。

雑誌や新聞にコラムを書くのが充留の仕事だった。ノンフィクションライターになりたかったのだが、軽めの毒舌コラム、しかも芸能関係ばかり書いている充留に、シリアスなノンフィクションの依頼などあるはずもない。最近では、充留はすっかり重春の情報に頼っている。充留より八つ年下の重春は、芸能関係に呆れるほど詳しい。重春は無職というわけではなく、ウェブのデザインなどをやっているらしいが、ほとんど家にいる。昼食を作ってくれるから充留にはありがたいが、ときおり、無性にいらつくことがある。しかし充留にとって不思議なのは、いらつく、という気分と、好きである、という気持ちが、まったく矛盾しないで自分の内にあることだ。

この2LDKには、裕美子が住み続けることになっている。家具のほとんどは裕美子が持っていたか新たに買ったものだから、正道が出ていってもほとんど何も変わることがない。出ていって、と言ったのは裕美子だし、ここに住み続けると決めたのも裕美子だった。離婚届をもらってきて先に記入したのも裕美子であり、どうせなら、ぱあっとパーティーをしようと提案したのも裕美子だった。自分といっしょにいながら、正道が好きな女を作るのは今にはじまったことではなかった。十五年にわたって、おなじことがくりかえされた。ずっと同じ場所にいた。十五年なんて本当はたっていなくて、おんなじ時間で足踏みしていたのではないか、裕美子はそんな気がした。

麻美は明らかに調子が狂ってしまった。なんで私だったんだろう。離婚したての裕美子でもなく、学生時代に仲のよかった充留でもなく、どうして私だったんだろう。宇田男が声をかけてきたのは私だった。離婚パーティーの三次会がカラオケ屋だった。とにかく気がついたら、踊り場で宇田男と抱き合っていた。唇を吸いあうように粘ついたキスをして、宇田男がブラウスの内側に手を突っ込むのを許していた。やってしまいたいと麻美は思ったのだが、それを実行に移すには、酔いが足りなさすぎた。それで、今度ね、と言ったのだ。連絡すると宇田男は言った。たぶんもう連絡はこない。携帯電話を置こうとしたとき、メール受信を知らせる音楽が鳴り渡った。夫の智からだった。

台所で作業する遥香の後ろ姿を眺め、正道は、裕美子に投げつけられた言葉を思い出していた。責任が生じたとたんにケツをまくって逃げ出すような男よ、あなたは。遥香にどんな変化があったのか、正道には理解できない。いっしょに暮らすときのためと郊外にマンションを借りさせ、けれど一年間は誠意を持ってひとりで暮らすべきだと主張し、レストランやバーや、屋外デートをことごとく拒み、ひとり息子の世話をする母親みたいに、嬉々として家事をしに通う恋人の内面で何が起きたのか、考えても考えても正道にはわからない。わかるのは自分の内面の変化だけだ。窮屈な場所に、理不尽に閉じ込められた。正道はそんなふうに感じていた。


三十四歳になった大学時代の仲間たち。彼ら五人の微妙な関係が本書の読みどころになっている。自活する女、専業主婦、元夫婦など、彼らは社会での自分のポジションを持ちながらも、学生時代から一歩も足を踏み出さずに仲良しこよしの関係でいた。そんな彼らは、お互いに引け目や相手の嫌なところを感じていて、その言葉がもちろん本人に向かうことはないが、心中の語りとして、あるいは第三者に対してなら饒舌になる。

趣味わる。ばっかじゃなかろうか。昼メロおばさん、って感じ。なんていうか妄想っぽいっていうか。といった見下したようなセリフがぽんぽん吐き出される。それが次の章で別の語り手に変わると、それまでの共感や反感がぱたりと裏返ったりする。そうしながらも、他人が入ってくることが出来ない奇妙な結束を持つ仲間を作っているのだ。その依存のような変てこな関係にむずむずとくるのだが、これが角田作品らしくもあるのだ。

過去を共有する仲間が悪いわけではない。しかしこれが個人としてならどうなのか。三十四歳になって、学生だったころから抜け出せない大人。居心地の良かったあの頃をずっと引きずっている大人。そんな彼らが、何とか変わろうとして、じたばたもがき、うろうろとさまよい続けるのだ。離婚を選ぶ人、反動で逆方向に進んでしまう人、気持ちにけじめをつける人など、さまざまに揺れるこころがあって、それぞれが見つける新たな出発がある。

上手く言葉が見つからなくて、ぐだぐだになってしまったけれど、この作品は好きだった。

Image088_r1.jpg

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角田光代
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comments

こんばんは。
なんとなく女性が考える色んなところが「わかるなぁ」って思う物語でした。
男性陣、本当に情けないですよね。

なな:2008/10/11(土) 22:29 | URL | [編集]

ななさん、こんにちは。
男性陣は酷かったですね。麻美の夫とか、宇田男とか。
そんな中、正道の気持ちは少しだけわかりました。
遥香はしんどいかも。でもその遥香の目線は面白かったですけど。

しんちゃん:2008/10/12(日) 11:57 | URL | [編集]

しんちゃん 多いね~サイン本!!
良かった昔を引きずってて、つるんで
いるのはあんまり好きじゃないかも。
先が気になって、一気に読みましたが。

naru:2008/10/16(木) 21:05 | URL | [編集]

naruさん
自分が思っていたよりも多かったです^^;
他人が入っていけない仲間内の空気はムズムズでしたね。
こんな人たちが周囲にいたら、ケッとなるでしょう(笑)

しんちゃん:2008/10/17(金) 11:47 | URL | [編集]

こんばんは。
私も結構この作品好きですね~。
何がといわれるとよくわからんのですが。

何かあればすぐ集まる仲間、でもちょっとなんだか楽しそうでうらやましかったです。内情はあんなんだけど…

ちきちき:2008/11/19(水) 21:37 | URL | [編集]

ちきちきさん、こんばんは。
ねちゃねちゃした関係が気持ち悪い。
だけどそこが面白かったりもしました。
たぶん雰囲気が自分と合ったんでしょうね。

しんちゃん:2008/11/20(木) 17:50 | URL | [編集]

学生時代の仲間と集まれるってのはうらやましい。けれど、その仲間も他人から見ると奇妙な関係に映るのね~と、遥香の視点があったことがこの作品をより面白くしている気がします。共感する部分はあまりなかったけれど、面白かったです。

エビノート:2008/11/21(金) 20:05 | URL | [編集]

エビノートさん
仲間ですが、遥香の視点がすべてを語っていましたね。気持ち悪いし、入っていけないと。そこに溶け込む重春は、ある意味ですごかったです。

しんちゃん:2008/11/21(金) 20:47 | URL | [編集]

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