2008
![]() | 空飛び猫 (1993/03) アーシュラ・K. ル・グウィンS.D. シンドラー 商品詳細を見る |
自分の四匹の子猫たちみんなに、どうして翼がはえているのか、お母さんにはさっぱりわけがわからなかった。セルマ、お前の顔は汚いよ。ロジャー、ジェームズをぶつんじゃありません。ハリエット、ごろごろと喉をならすときはね、軽く目をつぶって、前足でこねこねするように揉むのよ。子猫たちはみんな揃って美しく、すくすくと育ていった。
でも口にこそださなかったけれど、お母さんは子猫たちのことが心配でならなかった。というのは近所の環境があまり良くなかったし、食べ物だって手に入れるのがどんどん難しくなっていた。ある日、一匹の大きな犬がちびのハリエットを追いつめて、襲いかかろうとしたとき、ハリエットはふわりと宙に飛び上がり、屋根に降りたった。そのときにお母さんには合点がいった。
お母さんは子猫たちを呼びあつめ、口を開く。ここは子供たちが成長するのにふさわしい場所ではない。お前たちはここから飛んでいくためにその翼を授かったのだ。お前たちにここから出ていってほしいと。子猫たちはみんなしくしく泣いた。でもみんなにはわかっていた。猫の親子にとってはそれが当たり前なのだということが。
セルマとジェームズとロジャーとハリエットは、喉をならしながら大好きなお母さんに別れの挨拶をした。そして一匹また一匹と順番に、子猫たちはその翼を広げ、空に飛び立っていく。路地を越え、屋根を越え、遥か彼方へと。たどり着いたのはある森。自分たちが街の路地裏にくらべたらずっと安全なところに来たのだということは、子猫たちにもわかっていた。でも、世界じゅうどこにいったってやはり危険はあるのだということも、子猫たちにはわかっていた。
この絵本についての感想は邪魔でしょうから、ここでおしまい。「帰ってきた空飛び猫」「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」「空を駆けるジェーン―空飛び猫物語」と続く。
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