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    2008

10.16

「おそろし」宮部みゆき

おそろし 三島屋変調百物語事始おそろし 三島屋変調百物語事始
(2008/07/30)
宮部 みゆき

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袋物屋の三島屋には、奉公にあがったばかりの娘が一人いた。おちかというこの娘は、歳は十七。主人伊兵衛の長兄の娘、つまり姪である。伊兵衛の生家は川崎でもその名を知られた大きな旅籠であった。とはいえ伊兵衛は三男坊で、家と商いの跡目は長男だから、早々に御府内へと出てきたのだ。伊兵衛の長兄は、自身の才覚でお店を持ったこの弟に、一目も二目も置いていた。

おちかは、この長兄から三島屋が預かった娘であった。奉公というよりは行儀見習いである。ただしこれには、一抹の事情が絡みついていた。当初、おちかを行儀見習いではなく、養女として遇することを、伊兵衛夫婦は考えていた。彼らもまた、おちかの心の底までは知らずとも、彼女が実家へ戻れないことを承知していた。ならば江戸でのんびりと、それこそお嬢様暮らしを味あわせ、物見遊山も一緒に楽しみ、然るべく花嫁修業もさせた上で、良いところへ縁付かせようと思っていた。

しかし、おちかはそれを断った。何より、彼女は外へ出ることが嫌だった。有体に言えば恐ろしかった。人交じりすることも怖かった。だからといって、ただ三島屋の内にこもってお雛様さながらに日を過ごしていては、もっといけないことになる。おちかは働きたかった。夢中で身体を動かしたかった。そうしている間だけ、心の内に寄せては返す底深い悲しみや苦い後悔、実家であのような出来事が起こったことを忘れることができる。おちかには人というものがすべて恐ろしく思えてならなかったのだ。以来、おちかの日々は女中仕事に忙しく過ぎてゆく。

そんなある日、伊兵衛はおちかを呼ぶと、よんどころない次第だから、これから訪ねてくるという客のお相手をし、よくよく事情をお話して、私に代わってお詫びしておいてはくれないか。頼んだよ、とおちかが抗弁する暇を与えずに言い置くと、間もなく夫婦で飛び立つように出かけてしまった。おそるおそる客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていく。以来、三島屋を訪ねる人々に対応し、彼らが語る不思議な話を聞くことがおちかの仕事となり、その話がおちかの心を少しずつ溶かし始めて……。宮部流百物語。

さすがに女王だけあって、物語の世界に引き込む力がすごい。「曼珠沙華」「凶宅」「邪恋」「魔境」「家鳴り」といった五編の連作短編集と思わせながら、実は長編作品になっている。「曼珠沙華」ではおちかの過去になにがあったのか興味をもたせ、「凶宅」では後を残した終わり方をし、「邪恋」でおちかの過去が明らかになり、「魔境」でおちかの心がゆさぶられ、「家鳴り」でこれまでを踏まえた最後を締めくくる。まさに熟練の冴えを見せて、読者のハートをガシっと掴んで話さず、最終話へとページを捲り続けるのだ。それと共に、不思議な話の二本立てになっている。次はどんな趣向でくるのだろうか。そんな期待を持ちつつ、本をそっと閉じて、ため息を吐いた。おもしろかった。そして、大満足だった。


宮部さんのサイン。これは珍しいかも。

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宮部みゆき
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comments

わぁぁ~宮部さんのサイン本初めて見ました。
おなじみの自画像のハンコが押されているんですね!
各話で描かれる不思議な話、その底にある人の思いを感じさせられて惹きこまれてしまいました。
おちかのこれからとともに、どんな百物語が綴られてゆくのか楽しみですね!

エビノート:2008/10/18(土) 21:42 | URL | [編集]

エビノートさん
買ったあとでサイン本を見つけ、泣きながら二冊目を買いました。
本のお値段、二冊分のサインです^^;
各話の不思議なお話にも惹きこまれ、おちかのことも興味深かったです。
残り九十五話も楽しみですね。

しんちゃん:2008/10/19(日) 15:29 | URL | [編集]

おはようございます。
心の闇の描き方が宮部さんらしい作品でしたね。
特に最後の話はドキドキしながら読みました。
百物語、先が長そうですが楽しみです。

本二冊分のサインかぁ…。
でも、宮部さんのサインなら買っちゃうかもね。
う~む、サイン本リストの第二弾もありそうですね(笑)。

mint:2008/10/20(月) 09:16 | URL | [編集]

mintさん、こんにちは。
先が長いし、揃えるとなるとえらいことになりそうですね。
最後のプチ冒険はわくわくドキドキでした。

サイン本は増えるでしょうね。すでに置き場に困っていますが…。

しんちゃん:2008/10/20(月) 13:04 | URL | [編集]

しんちゃん こんばんは。
おぉぉぉ。宮部さんのサイン本って
初めて見たかも!!
ええですね~。貴重そう!!
一気に読ませて、うまかったですよね~。
後半私がのれなかったのは、関係ない人が
次々死んでいったからかも。
とは言え、続編も楽しみです。

naru:2008/10/22(水) 19:15 | URL | [編集]

naruさん、こんにちは。
自分も見つけたときは、おぉぉぉ、となりました。
持ってるけど買うしかないと。

そんなに次々死にましたっけ? 記憶にないぞ。すいません^^;
残り、九十五話も楽しみですね。

しんちゃん:2008/10/23(木) 16:59 | URL | [編集]

これは面白かったですよね~。
宮部さんの時代物は、前半楽しく後半しんみりが多かったけど、これは全編通して変わりませんでしたね。
一気にがしっと捕まれました!やっぱり残り95話読ませてくれるんでしょうか。だとしたらすっごい嬉しいですけど。
良助が出てこないのも、収まりが悪いですよね。
しかしながら宮部さんは人間の奥の奥、見つけるのがうまいですよね。

サイン本ですか~。私なら多分見つけたら先に買った方返品しちゃいそうです。(ケチ?)

じゃじゃまま:2008/12/24(水) 17:21 | URL | [編集]

じゃじゃままさん
返品!!その考えは今までなかったです。
気前よく図書館に寄贈しました。

残り95話とは先が長すぎ~。
それに最後でファンタジーにしたのをどうするのか。
次がどんな展開を見せるのか楽しみですね。

しんちゃん:2008/12/26(金) 13:41 | URL | [編集]

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