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    2008

10.17

「幽談」京極夏彦

幽談 (幽BOOKS)幽談 (幽BOOKS)
(2008/07/16)
京極夏彦

商品詳細を見る

「手首を拾う」「ともだち」「下の人」「成人」「逃げよう」「十万年」「知らないこと」「こわいもの」という「幽」を八編収録した作品。

「手首を拾う」
男は汽船に乗り、閑古鳥が鳴く旅館へ向かった。そこは、七年前に妻と訪れた旅館だった。思い出と少しも変わらない道中、建物、従業員、そして庭。注文通り、以前と同じ部屋に通された男は、庭を眺めながら回想する。三年前に別れた妻は、ここに来た時、すでに壊れていた。その日、この庭で手首を拾ったこと、細い、白い、綺麗な、人間の手首。生きている手首。その手首を拾って、男は妻への興味を一切失った。そして、男は、元の場所に埋めた。男はその手首の場所へ…。

「ともだち」
男はあまり色のない街を歩いている。今日は自由だ。取りなれない有給休暇を取って、あまり見覚えのない街を訪れている。目的はない。当てもない。計画もない。見覚えもない。意味もない。色もない。三十年以上前、三年半ばかりの短い期間であったのだが、ここは男が暮らしていた街だった。帰りついた着いたここは、見覚えのない見知らぬ場所だ。その電柱の横に森田君が立っていた。森田君はともだちだ。森田君と再会したのは、実に三年前のことである。先週の初め、その森田君は死んでいた。

「下の人」
下の人が泣いてうるさい。ここは父の持ち物だったマンションだ。しくしくしく、声なんか、掠れたような、何かこするみたいな、そんなか細いのしか聞こえないから。だから、余計気になる。うるさい。最初に確認したのは、二ヶ月くらい前のことだった。かさ。そんな音がした。何か居る。ここ暫くそんな気がしていた。ベッドの下から気配がする。ベッドの下を覗いて見ると、何かあった。やっぱり居たんだ。つまり女が見たのは、顔だった。でっかい歪んだ顔。その日から女性と顔の共同生活が始まった。

「成人」
人形のどうぐと題された小学生が書いたひな祭りの作文と、奇妙な箱と題された高校生が綴った文集の一編、そして不惑を目の前にした出版社勤務の編集者が大学時代に体験した奇妙な一夜。さらにライターが拾ってきた某役場に勤めている人のある目撃談。それら関係がないと思われた話が重なった時、異形のものが姿を現す。その異形のものに魅入ってしまった編集者の行く末とは。

「逃げよう」
変なものに追いかけられて逃げた。校門の横の泥溝から沸いたんだと思う。翠色だった。わりと大きくて、意外に速い。がむ、がむ、がむという声かで啼く。変なものだし、厭なものは厭だ。その時はでも、周りに沢山こどもが居たから大丈夫だろうと思った。見てはいけない。見てはいけない。まずいよ。一人になっちゃったよ。あれは、誰でもない、僕について来た。来るな。来るな。来るな。でも、ついて来る。走った。おばあちゃんの家に逃げ込んだ。汚くて、臭くて、嫌いだったおばあちゃん。男の脳裏に残る、あるはずのない記憶。

「十万年」
人はみな違っているのだから、世の中がどう見えているのかも人それぞれなのだろう。男は、自分が観ているこの世界が、はたして正常なものなのかどうなのかと、自分で自分を疑う。自分の見えているものが必ずしも他人に見えているのかどうか、また他人に見えているものが自分にもみえているのか。歪んでいるかもしれない。そう考えて男は余計に怖くなる。幼い頃、文字を全て鏡文字で書いた。自分の世界だけが反対で、裏返しだと思っていた。中学生の時、私は視えるの、という女生徒がいた。彼女には、きっと何かが見えていたのだろう。男は、思う。他人の眼で世界を観たい。

「知らないこと」
隣の親父、今日も変だったぜと兄が言った。隣家の主は、外見だけは至って普通の紳士なのだが、一般に異常と呼ばれる行動を執る。道端でわーわー泣いていたり、地べたを這い擦り回っていたり、夜中ににゃあにゃあ啼いていたり、門柱の上に気をつけの姿勢で立っていたり、自分の家の塀にひらがなの?も″という字を何文字も何文字も書いたり、庭を汚物で埋めてさらに排便までしていたりと、奇人ぶりは続いた。その隣の親父の行動をチェックしては妹に報告するニートの兄。妹は隣家の親父のことを気にしない。その認識が崩れて。

「こわいもの」
怖いものとは何だろう。座敷の真ん中に男は座っている。壁は壁、柱は柱、畳は畳だ。そういう物体で仕切られ、隔離された空間こそが、部屋だ。つまりこの場所は、座敷という概念でしかない。じゃあ柱や畳が交差する点は、隅の角の、あの闇の点は、何なのだろう。その線と線が交わって作る点にも、質量はない。在るのだけれど、ないのだ。ないけれど、見える。もしかしたら、あの点は、何処かに繋がっているのかもしれない。隈路への入り口は、何処にでもあるのだ。でも、それは怖いのとは、少し違う。嫌いなものは、別に怖いものじゃない。死は、怖いものなのだろうか。男は真実の恐怖について、自問する。


妖怪でも怪談でもなく、幽談である。あやしいものや不思議なことに対峙する主人公。あやしに魅せられて現実を離れようとするもの、見えているのにあっさりと現実に戻るもの、異常な生活に諦めてしまうもの、魔に魅入られて抜け出せなくなったものなど、本当に隣にあるのかも知れないと思わせる不思議な世界。お気に入りは、詩的な「手首を拾う」と、ユーモラスな「下の人」と、面白い構成の「成人」と、奇人ぶりから目が離せない「知らないこと」だった。重複するような内容があったのは頂けないが、ざわざわ感が心地良い作品だった。

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comments

さらりと読んじゃったけど、良く考えると怖いという話ありましたね。特に「下の人」はベッドの下は絶対覗き込めなくなっちゃいました(>_<)

エビノート:2008/11/21(金) 20:12 | URL | [編集]

エビノートさん
顔との同棲生活はムリ!これは考えると怖すぎです。でも主人公があんなだからか、それほど恐怖は感じずに、むしろ面白く読めてしまいました。

しんちゃん:2008/11/21(金) 20:51 | URL | [編集]

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