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    2008

10.30

「蟋蟀」栗田有起

蟋蟀蟋蟀
(2008/09)
栗田 有起

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「サラブレット」「あほろーとる」「鮫島夫人」「猫語教室」「蛇口」「アリクイ」「さるのこしかけ」「いのしし年」「蟋蟀」「ユニコーン」を収録。生き物をテーマにした十の短篇集。

「サラブレット」
青木茶巾と名乗り、手相を観る占いの部屋を開いた。じっさいには手相はよくわからない。けれども手相観はよく当たる。なぜならば、だれかの手に触れると、その人の現在、過去、未来が見えるからだ。うちは女系家族で、女はみんな生まれつき、この特技を持っていた。一年は、無事に過ぎていった。しかし、恋に落ちた彼の手に触れてしまい、彼の未来にわたしがいないことを知ってしまった。それがきっかけで、占い師という職業について、考えさせられる日々がつづいた。そんなある日、全盲のかわりに、とても耳がいい女性が部屋にやってきた。

なんかわからんけど、一緒に叫びたくなった。馬絵さん! 行け行け行け!

「あほろーとる」
彼女と知り合ったのは、大学の研究室だった。助教授になったばかりだったが、取材やテレビ出演などの仕事が急に増えた。そこに秘書としてやってきたのが彼女だった。愛らしく、有能で、それでいて、水中で生活したいという彼女。そう、彼女に恋をしはじめていたのだ。夕食に誘い、酔った勢いという力を得て、彼女を次の店へ誘った。そのバーは高層ビルの最上階にあった。酔った彼女は、そこで連続側転を始めた。翌週、その失態を心苦しく思った彼女は休養を申しでた。説得の条件として、彼女は動物を飼いたいと言い出した。研究室に持ち込まれたのは、アホロートルという両生類だった。

うーん、理解しづらい。誰か、解釈の仕方を教えて。

「鮫島夫人」
別れた夫とボートに乗った。親父が入院したので、一緒に行って元気づけて欲しいという。まだ離婚したことを告げていないということだ。彼とは二十五歳のときに結婚し、三年後に離婚した。知り合ったのは、大学の教室だ。私たちはふたりだけの親交を深めていくことになった。本当の恋の話は、彼としかしたことがない。彼は男性の肉体を持った女性だった。彼にとって私はある意味で運命の人間だったのだろう。胸の奥底にしまっておいた秘密の小箱を、私のまえでならたやすく開けられるようだった。ようし、この人を守ろう。なんとかして守ろう。いつのまにか私はそう決意していた。

ふたりの関係がすごくいい。この作品は好きだな~。

「猫語教室」
夫の栄転が決まった。地方の営業所の副所長に任命されるという。私にできるのは、日常生活のさまざまなわずらわしさから、彼を解放することしかない。彼の人生にとって私が必要とされる存在になるためには、それしかありえない。新居の部屋はマンション一階にあった。猫が現れた。おしっこの強烈な臭気がする。夫は猫を嫌っている。憎んでいるといっていい。それから二週間、死にもの狂いの闘いがつづいた。結果は惨敗だった。そこに目に付いたのは、妻たちのサークル活動案内。様々な言語がある中、猫語と記されているのを見つけた。にゃにゃにゃにゃにゃー。部屋のほうぼうからそんな声が上がる。

くっくっくっ、アホらしさがツボにはまった。

「蛇口」
パパは一年に数回の頻度で浮気をしている。彼が恋のとりこになると、すぐにわかる。彼は若くてかわいい女の子が大好きだった。株の取引で儲けている彼は、金にあかせて、そういう女の子をたやすくゲットしているらしかった。ママもかつてはそのひとりだった。十五歳のとき、彼女はパパに見初められた。十六歳の誕生日に籍を入れ、学校を辞めた彼女は、十七で赤ん坊を産んだ。パパのお相手に、私はまったく興味がない。今度の女性の年齢は、十八。私のちょうど一歳年下だ。私は彼女のことを知っていた。彼女の名前はチカ。チカは、とっても仲のよかった、私の後輩だ。

絶倫ロリコン親父はどうかと思うが、こういうシュールな作品は好き。

「アリクイ」
幼なじみの杏子が出産のため、実家に帰ってきた。杏子が妊娠したと知ったそのときから、母の興奮ははじまった。熱狂は日増しに大きくなり、最高度数を示す針はすでに振り切れているようである。杏子の家はうちの真向かいにある。どちらの家庭も、ほぼ同時期に引っ越してきたのと、僕と彼女の歳がおなじだというので、すぐに母親どうしが交流をはじめた。たがいの家族も、ふたりが並んでいるとまるで本物のきょうだいだと口を揃えた。仕事帰りに、僕は彼女の部屋へ行った。次の日も、その次の日も。その夜、宇宙とひとつになるダンスを母が踊っていた。早くあの子に教えてあげたい、と。くるっくるっくるっ。

杏子のお相手が微妙。子供のパパが彼だったら、母のするどさもあって面白くなったのに。

「さるのこしかけ」
広和さんと出会って、関係が一年近くつづいたある日のこと、彼がめずらしく、自分の部屋に来ないかと誘った。そのころには、彼と結婚して、家庭を作りたいと願うようになっていた。そこに現れたひとりの女性。結婚式を来月に控えた婚約者だった。こと恋愛において、勃発したトラブルはこれまでも数え切れない。どうして自分の周辺で厄介事ばかり起こるのか。できるだけ顔と腰を低くして生きようと決めた。それなのに、また、トラブルに見舞われてしまった。死んだほうがいいと思う。事故に遭うのが無難だろう。雷に打たれることを望んで山に入ると、見知らぬ生きものと出会う。

なぜか山伏姿で、しかもハイキングを楽しんでいる、という短絡的思考が面白い。

「いのしし年」
朱美が目をさましたとき、目の前に人の顔があって彼女は仰天した。その顔があまりに醜くて衝撃を受けたのだった。笑っているかに見えたその顔はにわかにくしゃくしゃになり、やがて両の目から涙がこぼれはじめた。朱美は思わず吹き出しそうになった。なんておかしな顔なんだろう。しかし吹き出すまえに重大な事実に気づき、すぐさま暗澹たる気持ちになった。彼は朱美の兄だ。兄と朱美は、顔つきが一卵性双生児のようにそっくりのきょうだいだった。朱美は数日前に大量の睡眠薬を服用した。彼女に迷いはなかった。ふたたびまどろみから目を覚ました朱美の前に、美しい顔をした若い女がいた。

兄がいい奴だ。妹思いで泣けそうだ。それに引きかえ、妹は痛々しい。ブスに負けるな。

「蟋蟀」
たぶん妊娠していると思うの。そういって女はうつむいた。とっさにおれは、やられた、と思った。しまった、はめられた、と。おれが誠実な男ではないというのは、最初から知っているはずだ。自分は一生結婚するつもりはないと関係がはじまる前にはっきり告げている。今日子は、それでもいい、といった。それから半月ばかりが過ぎた。杏子からの連絡はなく、こちらからすることもなかった。ふいに思いついて、タマコに電話をかける。祖母のタマコは今年で八十五になる。おれは女に執着したことは一度もない。ただひとり、タマコを除いては。彼女の腰に二匹の蟋蟀がいる。入れ墨の男と女の彼ら。

タマコがいい味を出しているし、この男も決して悪人ではない。それにしても女は強い。

「ユニコーン」
私のなかには馬がいる。そのことに気づいたのは十三歳のときだった。とっくみあいのけんかを妹としたのがきっかけだった。目の前に突然現れた一頭の馬。妹のなかには象がいた。たいていの人のなかには、何かがいた。観察を続けてわかったのは、どうやら女のなかにいるのは、例外なく本人よりも大きな身体を持つ動物だということだった。男のなかにいるのは、動物とは限らなかった。クワガタやセミ、ガンダムという人もいた。美大を出て、デザイン事務所に就職した。三十歳になり、チームのリーダーになった。久しぶりに恋人と会うその日、いつもの藍色の馬ではなく、ユニコーンが現れた。

お仕事小説として面白かった。自分の中で、男よりも仕事が大事と気づいた瞬間が素敵。

次の展開がよめないところに面白さがある。そんな短編集だった。お気に入りは、「サラブレット」「鮫島夫人」「猫語教室」「蛇口」「さるのこしかけ」「いのしし年」「蟋蟀」「ユニコーン」と、ほとんどが好きだった。やっぱ栗田さんはいい。

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栗田有起
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comments

こんばんは。
私は「鮫島夫人」が一番好きです。
こんな結婚ありだと思います!

なな:2008/10/30(木) 22:04 | URL | [編集]

ななさん、こんにちは。
「鮫島夫人」も良かったです。
この女性はずっと鮫島夫人なんでしょうね。

しんちゃん:2008/10/31(金) 11:45 | URL | [編集]

解釈は……よく分かりません。なんで?を言い出したら切りがない。でもその分からなさ加減が良かったです。

たまねぎ:2008/11/01(土) 01:08 | URL | [編集]

たまねぎさん
ウーパールーパーになった? これのどこが面白いのかがわからない^^;
それ以外はむちゃくちゃ良かったです。

しんちゃん:2008/11/01(土) 14:58 | URL | [編集]

こんにちは。
確かに「あほろーとる」はわけがわかりませんでした(^_^;)でもそのわからなさも栗田さんかなって。
他の作品はどれも好きです!わたしは「ユニコーン」が一番好きかなぁ。

まみみ:2008/11/02(日) 21:21 | URL | [編集]

まみみさん、こんにちは。
「あほろーとる」はわかんなかったですよね。
置いていかれたのは自分だけかと不安でした。
自分は「猫語教室」が一番好きかなぁ。

しんちゃん:2008/11/03(月) 17:04 | URL | [編集]

「あほろーとる」は私もわかりませんでした。
なのに今でもなぜか側転する彼女のイメージが一番強烈に残ったりしてます。

june:2009/03/28(土) 21:32 | URL | [編集]

juneさん
くふ!(笑) そういう楽しみ方があったのか。
側転ねえ。その一言は目からうろこでした。

しんちゃん:2009/03/29(日) 18:39 | URL | [編集]

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