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    2008

11.07

「あわせ鏡に飛び込んで」井上夢人

あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫 い 72-8)あわせ鏡に飛び込んで (講談社文庫 い 72-8)
(2008/10/15)
井上 夢人

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様々な雑誌等に掲載された作品を集めた文庫オリジナル。巻末には大沢在昌との対談を収録。

別れ話を持ち出したら、わかった、と言って、美代子は手を差し出した。美代子の手を握り返すと、右の掌に貼りつくような妙な感覚が走った。右手は、美代子の左手にしっかりと固定されてしまった。瞬間接着剤。以前、テレビのCMで、走ってきたバイクが一瞬にして柱にタイヤを貼りつけられてしまうのを見た。接着剤は彼女の指にまで塗られていた。あなたと、はなれたくないの。狂気の女を描いた......「あなたをはなさない」

保険金が下りればすべてがうまくいく。しかし、晋一に自殺する勇気はなかった。弓美に泣かれ、途方に暮れていたところに、小山田勇が現れた。自分とそっくりの男を弓美に誘惑させ、媚薬といって青酸カリを飲ませて殺させた。あとは自分が砂糖の入った偽薬を飲むところを第三者に見せて、死体と入れ替わる。これで偽装の完成だ。ふと、その薬包紙に目を戻した。まさか、オレは弓美の足枷? 晋一は疑心になり......「ノックを待ちながら」

FBIは、二十四時間、シェルマンを監視している。外出すれば尾行され、家の中では盗聴されている。一ブロック先の路上にある車は三日間もあそこから動こうとしない。連中の懐から抜け出すのは、不可能に近かった。それが、たった一本の電話で逆転した。注文した木箱を配達してくれるというパークス夫人の言葉を聞いたとたん、彼の頭の中ですべての計画が組みあがった。そして、女と黒人の男の配達人が現れて......「サンセット通りの天使」

男はいなくなった人を訪ねて、その家にやってきた。身体の不自由な老婆が語り出す。ここを借りた人間はみんないなくなるだなんて。人聞きの悪い。なにを疑ってらっしゃるの? 車イスに座ったきりのおばあちゃんに、なにができるとおっしゃるの? 手伝いの人って? ここに住んでるんです。あたしがここに来るずっと前から。呼んだって、出てきやしませんよ。名前って? ヘヤボッコ。愛称ですよ。あの人は、この家を守っているように、あたしを守ってくれる。そのかわり......「空部屋あります」

ここは夜間警備員が詰める警備室。六時間ほど前、このビルに億を越える現金が運び込まれた。チャンスは数時間。現金のそばにいるのは史郎と楠本の二人しかいない。突然、楠本が警棒で襲いかかってきた。恐怖から、楠本を殴り殺してしまった。もちろん、計画では楠本を殺害する予定だったが、もっと後で行う作業だった。しかも楠本には自殺してもらわなくてはならない。彼自身の手で書かれた遺書も用意していた。楠本の頭部のひどい有様では、絶対に自殺などには見えない。その後、史郎は......「千載一遇」

この世界に未練はなかった。名倉哲郎には妻がいる。娘も二人いる。そういった人々の存在は、今の名倉にとって、なんの意味も持っていなかった。遺書めいたものを書いたのも、あとに残る者への儀礼以上の意味はない。小瓶には液体が入っている。人は神経毒という。その通り猛毒物質である。しかし、これは単なる毒薬や幻覚剤ではない。生命体の肉体と精神意識体を切り離す作用を持っているのだ。私は死なない。肉体は死ぬが、私の意識は生き続ける。もはや、私の意識を死に導くものは何も存在しないのだ......「私は死なない」

下取り価格は八万円。二台パソコンがあって、どこが悪い? 二台という利点を生かすことを考えよう。新旧二台のパソコンで何ができるのか、ずっと考えつづけた。まず思いついたのは、パソコンにゲームを対戦させること。しかし、前と寸分変わらないゲームを再現するだけ。これはプログラムだから当然の結果だった。次に思いついたのは、パソコン同士で会話させること。新しいパソコンを手に入れてから、もう一年が経とうとしている。とうとう自分自身で対話プログラムを作りあげた。彼らの名前は......「ジェイとアイとJI」

城戸優一は病院の院長という社会的な地位もあり、都心と郊外をあわせて七百坪の土地を持っている。芸術家のパーティー? 看護婦の中で、いまだに城戸の誘いを拒絶し続けている良子が言うからついてきてやったのだ。こんなパーティーだから、知人など誰もいない。城戸が知っている顔と言えば、このパーティーの主催者である天沢だけだ。画家なのだそうだ。天沢の妻は、城戸の病院で死んだのだ。良子の誘いを無下に断りきれなかったのも、その負い目のようなものがあったからかもしれない......「あわせ鏡に飛び込んで」

もう、会わない。録音された真紀の声は、最後のあたりで泣き声のようになっていた。うそだ…。もちろん真紀とのつきあいは秀暁のほうが長い。伸哉は、秀暁から真紀を紹介されたからだ。結果として、二人の間に伸哉が後から割り込んだという形になった。だけど、秀暁は真紀を友達だと言って紹介しただけだ。真紀も秀暁を友達だといった。どちらが好きなのだと、問い詰め、迫られて、真紀は秀暁を選んだ。伸哉は真紀からの留守電をそのまま、秀暁の留守電へと転送した。その翌日、秀暁が死んだことを聞かされた......「さよならの転送」

全篇、手紙だけという構成の作品。妻は弟を事故で亡くしてから、人が変わったようになってしまった。五年前に妻と結婚し、妻の家に入った。具合がよくない義母には、住み込みで看護婦がついていたが、この看護婦も、なんだかだと言って追い出してしまった。使用人も次々と辞めさせて、今では吉岡という男だけになってしまった。妻が尊敬する先生から意見してもらえないだろうか、という夫からの手紙が届く。その後の手紙のやり取りから、弟の事故は夫が関わっている、家の乗っ取りを夫が画作している、と妻が主張していることがわかるが......「書かれなかった手紙」


インパクトのある作品を挙げるとすれば、「ノックを待ちながら」ぐらいか。これの緊迫した心理描写はずば抜けていた。総じて、大当たりという作品がごろごろしているわけではない。だが、ハズレはなかった。「あなたをはなさない」では、狂女の取った行動がブラックで面白く、「サンセット通りの天使」では、ハードボイルド調でこれのオチにも切れがあり、「空部屋あります」では、しっとりとしたホラーが楽しめ、「千載一遇」では、そうきたかというドンデン返しが気持ち良く、「私は死なない」では、ぞぞぞっとくる恐怖に鳥肌が立ち、「ジェイとアイとJI」では、機械をあやつるカッコよさがあり、「あわせ鏡に飛び込んで」では、オチのオチにほっとし、「さよならの転送」では、人間の身勝手さに痛さを感じ、「書かれなかった手紙」では、ミステリにおおっときた。

古い作品ばかりだけど、あまり古色を感じることはなかった。それと、どれもが黒い作品ばかりだけど、自分が黒好きなので何の問題もなかった。岡嶋時代の爽快さを求めると、合わないかもしれない。読むのなら、その点だけ注意して頂きたい。

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井上夢人
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comments

 私は「あなたをはなさない」と「サンセット通りの天使」が面白かったですね。正直、表題作はよく分からんかった。
 なお井上作品では『あくむ』というのが、かれこれ3ヶ月積読中です。

higeru:2008/11/07(金) 22:47 | URL | [編集]

こんばんわ。
めちゃめちゃ面白そう!
しんちゃんのあらすじの続きが気になります~。
井上さん、まったり苦手なんですけど読んでみようかな?

ia.:2008/11/08(土) 00:52 | URL | [編集]

岡嶋二人、
好きでした。
よく読んでました(* ̄∇ ̄*)

読者参加型の『ツァラトゥストラの翼』、
あれ、結局あたし解けなかったなぁ( ̄∇ ̄;)

つたまる:2008/11/08(土) 02:49 | URL | [編集]

higeruさん
その二作ともオチが黒い。ブラックもイケるくちなんでしょうか。
「あくむ」はだいぶ前に読みました。内容は記憶にないけど(笑)
それに文庫なら全部揃ってますぜ。

しんちゃん:2008/11/08(土) 11:21 | URL | [編集]

iaさん、こんにちは。
かなり黒いです。井上さんでこう黒い作品を読んだ記憶はないかも。
それでいてスマートでした。オチがすとんと落ちて、これがグッジョブ。
好き嫌いはありそうだけど、ね。

しんちゃん:2008/11/08(土) 11:27 | URL | [編集]

つたまるさん
岡嶋の文庫は全部持ってま~す。イェイ!
「ツァラトゥストラ」同じくゴールできず。
攻略法が知りたい・・・というか、まとも本として読みたい。

しんちゃん:2008/11/08(土) 11:32 | URL | [編集]

こんばんわ。
文庫版なので図書館になくて、探すのに手間取ってしまいました。
でも買って良かった。どれも面白かったです~!
『ノックを待ちながら』と『書かれなかった手紙』が特に好きでした。

ia.:2009/02/13(金) 00:20 | URL | [編集]

ia. さん
内容が記憶から抜けてる~^^;
そこで自分の記事を読んだら思い出しました。
書きすぎも結構役に立つじゃん。

想像以上に黒かったでしょ。
うちもその二編が印象に残ったと書いていました。(おい)

しんちゃん:2009/02/13(金) 18:07 | URL | [編集]

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【井上夢人】あわせ鏡に飛び込んで


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あわせ鏡に飛び込んで/井上夢人


手を差し出されたので握ってしまったがために、その手は二度と離れない。別れ話の最中に女が差し出した手には、強力な瞬間接着剤が塗られていた。引きはがそうにもはがれず、彼女の言い訳は理解しがたいものばかり。そうこうしているうちに、彼女は…。(あなたをはなさな

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