中学にはいって、二日目の朝だった。「じぶんがもう子どもじゃないって思ったときって、いつだった?」前の席の子が振り向いて、突然そう言った。川田亜矢という子だ。菜穂はびっくりして、「はい?」なんて、まぬけな声を出した。気がつくと、川田亜矢から川田がとれてしまった。亜矢は図書室が好きだった。菜穂は一緒に通ううちに、上原先生のいる図書準備室が好きになった。こうして二人は仲良くなった。モウコドモジャナイッテオモッタトキッテ、イツダッタ? そしてそれは、不思議な呪文みたいに、菜穂のからだをいっぱいにした。
バターとバニラエッセンス。あまい空気が廊下を通って玄関までおしよせている。ママの焼くお菓子の匂いだ。ママのご自慢の焼き菓子。お店で売ってもおかしくないくらい味も見栄えもいいマドレーヌ。ママの愛情を菜穂とパパに食べさせるために、ママはせっせと料理学校に通う。7月14日。パリ祭。13歳の誕生日。きょうから夏休み。ママの突然のパリ留学が発表される。今回のママは、もう決めてるって感じがする。どんなにたのんだって、もう変わらない。絶望的な気持ちの菜穂に、「なに言ってるの、変わるのはあなたよ」と亜矢。菜穂は懸命に自問自答する。
亜矢が語る、小学六年生のときのいじめ。知性と教養と美貌をたくわえるという、学校が別になった幼なじみのまゆ子。そして、12がトゥエルブ、13からはサーティーン、フォーティーン。ティーンエイジャーになった菜穂。冒頭で問いかけられた「もう子どもじゃないって思ったときって、いつだった?」という言葉。子供だけど、でももうまるきりの子供じゃない。悩みながらも、自分のために、自分が変わろうとする菜穂。そんな彼女の姿が健気で愛おしい。40歳にして、自分の夢をかなえようとするママは素敵。それを送り出そうとするパパも素敵。でもこれが実際に我が家だったら、やはり困るよな〜。だけど、えらい。
続編を読むのに再読してみました。いい作品です。
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