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    2008

11.19

「ホリー・ガーデン」江國香織

ホリー・ガーデン (新潮文庫)ホリー・ガーデン (新潮文庫)
(1998/02)
江國 香織

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果歩と静江は、小学校にあがった時からのつきあいで、もう二十数年になる。大学の四年間だけブランクがあるのだが、それにしてもお互いに知りすぎた相手であることに変わりはない。初めて吸った煙草も、初めて飲んだお酒も、初めて寝た男も知っていた。そして果歩が最低の失恋をした時も、いつも静江は隣にいた。

静江は心の中で憤慨する。いい加減で軟弱で、口ばかり上手くて大嘘つきの、あんな男のどこが果歩をひきつけたのか、静江にはさっぱり判らなかった。そして、さらに判らないのは、別れたあとの果歩なのだ。もう五年近く経っている。いいかげん新しい現実に心を開いてもよさそうなものではないか。静江の基準では、どう考えても、津久井のような男に果歩があれだけ拘泥する価値はないと思っている。

果歩は思う。静江がつき合っている芹沢というのはどういう男なのだろうか。妻帯者のくせにずいぶんながいこと、一人で外国に住んでいたらしい。芸術家だと静江は言っていた。芸術家というものを、果歩は信用していない。芹沢に出会って、静江は自由の味わい方を覚えた。つきあう男に感化されるのは自然なことだし、静江と芹沢がどんなデートをしようと、果歩には関係ない。不倫なんて卑怯だわ。だけどあのとき静江はひどい剣幕でそう言った。

中野さとるは果歩にいきなり呼び出され、夕食につきあわされた挙句、十二時をまわったとたんに追い出されるというのはよくあることだった。中野も、それを我儘ではないとは思わなかったが、果歩の我儘は一種の流儀なのだと納得していた。だから女子社員が陰でささやきあっている言葉、惚れた弱みとか忠犬さと公とかは全然的外れだと思っていた。自分が果歩の我儘をうけとめてやれる男だと自信を持っていたし、自分にばかり向けられるという点において、すでに報いられていた。

タイプは違うが、腐れ縁なのか、ずっとつきあいが続いている二人の女性。他人が手をだせないほど濃密なくせに、ひどく不安で緊張した空気や緊迫感を漂わせている。でも特別な友達であることはお互いに同じだ。これが、読者が男だからか、いまいちよく判らない。それにこの人たちはまともじゃない。好きでもない男とつぎつぎ寝る果歩と、四十五の男と遠距離不倫の関係にある静江。そして果歩が他の男と寝ているのを知っても、ひょうひょうとしている中野くんの変人ぶり。痛たた、という人ばかりだけど、何故か憎めない。そんな女性二人男性一人ときどき猫の日常が、淡々と過ぎていく。

大きな出来事が起こるわけではない。だけどこれが読ませるのだ。少し静江のお節介がうるさく感じる部分はあるものの、ポジティブ人間の中野くんが良くて、果歩とその中野くんの行く末が気になって、途中で読むことを止められない。それに透明感のある文章が心地よく、本を閉じたときは清々しさが残った。いい作品だ。でもこれはどちらかと言えば、女性向きの作品だと思った。

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江國香織
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comments

こんにちは。
とても好きな作品です。
江國さんの小説って、リアリティないふわふわした設定だけど、結構読ませるんですよね~
でも私もやっぱり女性向きかな~と思っていたので、男性の方も読まれるんだと、ちょっと意外でした。
中野くんの存在が嬉しかったです。

EKKO:2008/11/22(土) 09:15 | URL | [編集]

EKKOさん、こんばんは。
なんでもない普通の日常だけど、これが読ませました。
やっぱ女性向きですよね。わからない部分がちょこちょことありました。
でも女性はここにぐっとくるのでしょうね。
ありえない中野くんが意外とイケました。

しんちゃん:2008/11/22(土) 20:12 | URL | [編集]

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