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    2008

12.06

「みきわめ検定」椰月美智子

超短編を含む短編集 みきわめ検定超短編を含む短編集 みきわめ検定
(2008/10/21)
椰月 美智子

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「みきわめ検定」「死」「沢渡のお兄さん」「六番ホーム」「夏」「と、言った。」「川」「彼女をとりまく風景」「きのこ」「クーリーズで」「西瓜」を収録した超短篇を含む短編集。

「みきわめ検定」
そろそろ今日あたり、キスのその先をすることになるに違いない。待ち合わせた駅前で、向こうから走ってくる良明の顔を見て、彼のほうがより切実に実行に移したいと思っていることを確認して、でも、自分だって、もう充分に、早いところやってしまいたい、と思っていると正直に認めた。いわゆる合コンで知り合った。今日で四回目のデートが始まる。

「死」
ボーイフレンドの運転する車にのっている最中、事故に遭った。路肩にちょっと駐車していたら、後から来た脇見運転のバンに突っ込まれたのだ。彼女は二人部屋で、彼は六人部屋。彼女は毎日のように彼の部屋に行った。同室だった色の白い女の人は、自殺未遂で病院に入院していたとのことだった。そしてその人が窓からぽんと身を投げたのだった。

「沢渡のお兄さん」
またあの男だ。大きな紺色の巾着袋を肩にかけ、左手で黒い蝙蝠傘を振り回している。早口で終わることなくしゃべっている。ときおりものすごい声で、「このヤロー!」とか「まったくよお!」などと言ったりする。彼女は、あの男を沢渡のお兄さんだとそう決めている。突然の弟の死というショックからネジがゆるんでしまった同級生のお兄さんだと。

「六番ホーム」
十月中旬になっても夏の暑さの余韻が残っている。今日は横須賀での研修に出席しなくてはならない。彼女は最寄りの駅に着いて、男がひとりだけ並んでいる乗車口に並んだ。男は相当の暑がりのようで、ワイシャツはすっかり濡れ、背中にぺったりとくっついてしまっている。その瞬間だった。見ず知らずの男に、突然抱かれたいと思った。

「夏」
マナブは夏休みに入ってから、日中は一度も外に出ていないと思う。登校日はあっという間もなく終わった。帰り道、今日学校で誰とも話さなかったな、と思う。いつもの見慣れた道を歩く。五メートルほど先に電信柱がある。そして、急に歩けなくなってしまった。あの中に絶対爆弾が仕掛けてある、とマナブは確信する。どうしたらいいんだ。爆発する。

「と、言った。」
夏休みのアルバイトで孝太郎が紹介されたのは、年寄りの世話だった。その前年、誘われるがままに介護の資格を取っていた。兼治さんは、右腕が肩のところからない。太平洋戦争の傷痍軍人だ。しずさんは「わかった、と、言った」「ありがとう、と、言った」と話すことが正確だ。孝太郎は、しずさんと兼治さんが好きだと思う。ふたりともかっこいいから。

「川」
るり子は姉の子どもたちにせがまれて、家の裏手にある川に向かっている。七歳のみやこが、彼女の右腕をぐいぐいと引っ張り、八歳のさつきが彼女の左手をしっかりと握り、そのさつきのトレーナーの裾を四歳のみのりが固くつかんでいる。昔、この川に何度か、お父さんとお姉ちゃんと釣りに来た。るり子はふと思い出す。父はいつも正しかった。

「彼女をとりまく風景」
彼女はこの次の瞬間に、隣に座っている恋人に別れを告げられるなんて、これっぽっちも思ってはいなかった。「え、なんで?」と言ってしまった瞬間に、彼女は後悔した。「好きなひとができたんだ」この答えも、彼女には予想できた。「だれ!?」思いがけず、悲痛な声が飛び出して、彼女は自分にあきれた。別れたあとに目に飛び込んでくる風景とは。

「きのこ」
なんとなく今日がいいような気がして、夕飯の残りのみそ汁に入れて飲んでみた。彼女にとっては、これがはじめてだった。「どう?」恋人がきく。見るものがやけにくっきりとしている。胸のざわざわはいっこうに収まらない。すっごく痒い。恋人の目が、水死体の目に見える。その次の瞬間、彼女は大声で笑い出した。おかしくないのに。

「クーリーズで」
桐子が成沢に声をかけられたのは、バイト仲間の三人で飲みにきているときだった。成沢は小中学校のときの同級生だ。成沢が大人になるなんて思いもしなかった。あいつが小学生の頃と言ったら、ろくでもないガキだった。中学生になったとたんに大人しくなった。自分より強い人間を見抜く能力だけはずば抜けていた。その成沢のテーブルに移動した。

「西瓜」
今日は伊豆にドライブだ。彼とは、友人の紹介で知り合った。今このとき、彼女は、彼のことを愛している、と思っている。すっごく好き、だと感じている。年もいい頃合いだし、結婚できたらいいな、とも思っている。彼女は久しぶりに味わう胸の高鳴りに、愛おしすぎて哀しくなる気持ちも含め、充足しきっていた。「スイカ安売り」に寄るまでは。


これまでの椰月作品とかなり違う作風だけど、いいかもしんない。どの作品も、ふとした一瞬の心の動きをとらえた作品になっている。自分好みだったのは、突然熱が冷めてしまう「みきわめ検定」と、自分の小ささに気づく「沢渡のお兄さん」と、悪態を吐きながらも温かい「と、言った。」と、子どもみたいな大人に癒される「彼女をとりまく風景」と、バカだなあと呆れる「きのこ」と、思わずちっちぇと呟いて失笑した「クーリーズで」だった。年末が近くにきて、良い本と巡り逢うことができたと思った。お薦め。

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椰月美智子
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-:2013/02/05(火) 21:44 | | [編集]

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